【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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助手と先生

ユーゴと先生 1

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それから3年…

先生は、俺が求めると、カラダを許してくれた。
でも、愛してるという言葉はまだ…受け取ってくれない。こっちは、身も心も捧げてるっていうのに…

なんか虚しい。

そんな折、事件が起きた。

第1王子が妃とともに消えたのだ。
王位継承権を放棄する…という書類を残して。
第1王子の仕事を引き継いだのはエース。
エースは、嫁を貰ったばかりだったけど、一緒に過ごす時間もなくて、俺も仕事を手伝うようになった。

そして、国王陛下が亡くなった。
第2王子が後を継いで王になった。
王位継承権の順番通りだから、エースにも俺にも文句はなかったが、あいつが王としての仕事もしないで宴会ばかりするわ、急に税金を上げようするわで、余計な仕事が増えた。

王になった兄を支えるため、さらに忙しくなったエースと、そのエースを支える俺は…自分の足元がぐらついてるのに、気づかなかった。

気づいたときにはもう、エースの嫁を実家に返すことくらいしか出来なくて…。でも、それだけでも出来て良かったんだろうと今は思う。

急に、エースが町娘…嫁を貰う前の恋のお相手…と結婚できるようにと、子どもの頃に提案した「身分の差がある場合の婚姻」についての法律がほじくり出され、貴族たちの間で不穏な噂が立った。

「この国の制度に不満をもつ反逆者だ」

俺たちは、第2王子に、謀反の罪を問われた。
誰がやったか分からない悪事の罪まで着せられて投獄され、……苛烈な拷問を加えられ、それでも、罪を認めなかった。

エースと2人、どうせ処刑されるのは分かっていたけれど、最期にどこまで抵抗できるか2人で勝負だ、と言って励まし合ったり、時には笑い合った。

だが、ある日、第2王子が新しい罪人を連れて、
牢屋へ訪ねてきた。
俺たちの首輪についた鎖を引っ張る。

「まだ認めないのか?大罪人のくせに、根性だけはあるじゃないか。おい、また罪が増えたぞ。次落とすのは…そうだな、左の肘が残ってるか…。ああ、前も言ったが、耳は残しておいてやる。こっちの質問が聞こえないんじゃ困るからな」

誰だ…誰が連れて来られた?
両目を潰されてて、見えない。
連行された人々が、声をあげた。

「クロード!ユーゴ!」
「二人とも…なんてこと…っ」
「「王子!!ユーゴ様!!」」
「うわああん」「ひぐっ、ひぐっ」「うぇぇん」
「お前ら…!?」
「……どうして…!?」


両腕両脚、股間のイチモツまで切り落とされて、食うや食わずで垂れ流すものも無くなった俺たちの姿を見て、彼らは叫び、泣いた。
その声から…誰が連れてこられたのか、分かった。

第1王子と、妃。
あの日別れた、新人騎士ひとりと、記録係。
子どもたち…多分、楽園の子だろう。
そして、大柄の男と…

先生。

先生が、苦しそうに…でもよく通る声で言った。

「陛下、私が…全て悪いのです」

「私が、全部計画して実行した。
 この若者たちを騙して…人食いを隠したのも、
 第1王子と妃の出奔も、
 彼らがした悪事も、謀反の計画も」

何を言い出すんだ先生!?

「だからっ…僕だけを、首吊り台に、乗せろ」

先生…!

「彼らを、解放してくれ、彼らの罪は…僕だけが受けるべきだ、頼む」

「……ほう」
第2王子…今は、国王陛下。
「コバヤシ。お前が彼らの罪を…全て被ると」
「そうだ、僕がやらせたんだ、だから」
「なるほど。では…この件は、済んだな」

大柄の男は、何故黙っている?
先生を止めるのは…お前の、役目で。
あの楽園で、先生の隣にいつもいた…お前が。
先生を、守らなくてどうする…?

その日、ようやく首輪を外された俺たちは、彼らに見守られながら…眠った。

あれから、9年と十月。
もうすぐ約束の10年が、近づいていた。
約束は守られないまま死ぬのか…と思ったら切なくて、先生に告白した。

「先生、愛してる」

……先生は、一言、
「ありがと」

と言った。
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