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助手と先生
助手の昔話 1
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エースの恋に当てられて、俺も昔のこと…主に先生との出会いから、恋が叶うまで…を思い出すことが多くなった。
俺が先生に初めて会ったのは14歳の時。
王都の北の山間部にある村の一つで、だ。
その村に行ったものは誰も帰ってこない…
その事から「人食い」が出るという噂がたち、俺とエース…当時は、クロードという名前だった…を含む討伐隊がごく少人数で編成された。
山間部の村は、税収が乏しいことから、中央では「貧しく、食う物にも事欠く」…という認識で、遠征は「王家から貧しいものへの施し」も兼ねて行われる事になったため、身軽で腕の立つ「第3王子」に白羽の矢が立ったのだ。
エース、俺、新人の騎士が1人、記録係が1人。
合計4人の「全員死んでも困らない」やつらで、その村へ出発した。
山間部の村は、確かに貧しかった…ように見えた。
見たところ老人ばかりが目立ち、大した作物も育たない…という場所ではあったが…違和感があった。
「飢えている様子がない」のだ。
痩せ細ったものがいない。
争うように物資を求めてこない。
そして…皆の目が死んでいない。
目的の村につくまでいくつかの村を巡ったが、どこもそのような様子で、俺達が「人食い」を討伐に行くのだと言うと、行っては駄目だ、行ったらあんたらも死ぬぞ、と必死で止めてくるが…俺たちの心配をして言っているのではないことが分かった。
誰も、俺達の人数の少なさを気にしない。
俺とエースの若さ…エースと俺は同い年だった…も、
騎士の経験の無さも、記録係が痩せぎすなのも。
「行っちゃだめだ」
「あそこへは近づいてくれるな」
人食いの恨みを買うことを恐れて?
人食いのいる村に…彼らが隠したい秘密がある?
「とにかく行けばわかるじゃろ」
お気楽にエースは言うが、そういう訳にいくか。
村が近づくにつれ、住人たちの態度は反抗的になり、目的地とは逆の方向を教えてきたり、村までの道を塞ぐように木が倒されていたり。
何かに怯えているのか…?
人食いは本当に存在するのではないか…?
恐怖を抱えながらついにその村にたどり着いた俺達は、あまりの光景に驚いた。
青々と繁る野菜、豆、麦…そして、可憐な花をつけた見たことのない植物。丸々肥った豚、乳の張った牛、たくさんの鶏…そして、何より目を引いたのは…貴族の邸宅のような立派な建物だった。
飢えとは無縁のそこは、まるで楽園のようで…
俺達は全員、間抜けな顔でその光景を見ていた。
「とりあえず、あの屋敷に行けば、何かわかるじゃろ。行ってみよう」
と、エースが言ったので、俺達はハッとなって屋敷の入り口へと足を踏み入れ…
「来たぞ!」
「上へ行かせるな!」
農具を握りしめて俺達を迎え撃とうとする何人もの男女と遭遇した。
エースが大きな声で彼らに言った。
「ここを通せ。民に手を上げる気はない」
彼らは口々に言った。
「だめだ!通さない!」「帰れ!」「帰れ!」「帰れ!」「帰れ!」「帰れ!」
エースが言う。
「ここに人食いがおると聞いた。お前たちが何を考えて我らの前に立ち塞がるのは聞かぬ。しかし、通さぬとあれば押し通る!」
エースが剣を抜いた。
村人たちはじり、と下がるが、引く様子はなかった。
エースがさらに大きな声で言う。
「人食いを出せ!出さぬならお前たちを…斬る!」
すると、上の階から扉が開く音がした。
たくさんの子どもの声が聞こえる。
「せんせい!いっちゃだめ!」「せんせい!もどって!」「せんせい!」「せんせい!」
男が1人、走ってくる。
慌てて階段を駆け下り、足をもつれさせて転がり落ち…そんな男に彼らは駆け寄り、男を守るように階段の上り口へ固まる。
「先生、下がってて!」
「ここは私たちに任せて!」
そして、ひときわ大柄の男が前に出る。
「お前らも下がれ。オレがやる」
そいつの殺気に、俺も剣を抜く。
「強そうなやつが出てきたのう…」
エースが大柄の男を睨む…俺は奴に、斬りかかる!
「やめて!」
せんせい、と呼ばれた男が、俺の前に飛び出てきた。
俺はその男にぶつかり、勢い余って押し倒した。
「やめて、お願い、僕はどうなってもいいから」
俺の下で男が泣きそうな顔で懇願する。
その顔を見て俺は…
あまりの艶に固まった。
そして、次に出た言葉に俺たちは首をかしげた。
「みんなは、何も悪いことはしていない。僕が、指示してやらせた。貧しい村を装うのも、全部」
「税金、少なくて済むように、僕が」
「だって、税金払っても、この人たちの暮らしは良くならない。だったら、払わなくていいって、そのぶん僕が何とかするって言って、払うべき税金を使った、この土地を使って研究するのに、勝手に、みんなを騙して。
だから…何年かかっても、僕が全部払うから…みんなの事は、許して」
エースがなるほど、と頷く。
「つまり「人食い」の噂は只の目眩ましで、真相はただの脱税隠し…ということか」
俺が先生に初めて会ったのは14歳の時。
王都の北の山間部にある村の一つで、だ。
その村に行ったものは誰も帰ってこない…
その事から「人食い」が出るという噂がたち、俺とエース…当時は、クロードという名前だった…を含む討伐隊がごく少人数で編成された。
山間部の村は、税収が乏しいことから、中央では「貧しく、食う物にも事欠く」…という認識で、遠征は「王家から貧しいものへの施し」も兼ねて行われる事になったため、身軽で腕の立つ「第3王子」に白羽の矢が立ったのだ。
エース、俺、新人の騎士が1人、記録係が1人。
合計4人の「全員死んでも困らない」やつらで、その村へ出発した。
山間部の村は、確かに貧しかった…ように見えた。
見たところ老人ばかりが目立ち、大した作物も育たない…という場所ではあったが…違和感があった。
「飢えている様子がない」のだ。
痩せ細ったものがいない。
争うように物資を求めてこない。
そして…皆の目が死んでいない。
目的の村につくまでいくつかの村を巡ったが、どこもそのような様子で、俺達が「人食い」を討伐に行くのだと言うと、行っては駄目だ、行ったらあんたらも死ぬぞ、と必死で止めてくるが…俺たちの心配をして言っているのではないことが分かった。
誰も、俺達の人数の少なさを気にしない。
俺とエースの若さ…エースと俺は同い年だった…も、
騎士の経験の無さも、記録係が痩せぎすなのも。
「行っちゃだめだ」
「あそこへは近づいてくれるな」
人食いの恨みを買うことを恐れて?
人食いのいる村に…彼らが隠したい秘密がある?
「とにかく行けばわかるじゃろ」
お気楽にエースは言うが、そういう訳にいくか。
村が近づくにつれ、住人たちの態度は反抗的になり、目的地とは逆の方向を教えてきたり、村までの道を塞ぐように木が倒されていたり。
何かに怯えているのか…?
人食いは本当に存在するのではないか…?
恐怖を抱えながらついにその村にたどり着いた俺達は、あまりの光景に驚いた。
青々と繁る野菜、豆、麦…そして、可憐な花をつけた見たことのない植物。丸々肥った豚、乳の張った牛、たくさんの鶏…そして、何より目を引いたのは…貴族の邸宅のような立派な建物だった。
飢えとは無縁のそこは、まるで楽園のようで…
俺達は全員、間抜けな顔でその光景を見ていた。
「とりあえず、あの屋敷に行けば、何かわかるじゃろ。行ってみよう」
と、エースが言ったので、俺達はハッとなって屋敷の入り口へと足を踏み入れ…
「来たぞ!」
「上へ行かせるな!」
農具を握りしめて俺達を迎え撃とうとする何人もの男女と遭遇した。
エースが大きな声で彼らに言った。
「ここを通せ。民に手を上げる気はない」
彼らは口々に言った。
「だめだ!通さない!」「帰れ!」「帰れ!」「帰れ!」「帰れ!」「帰れ!」
エースが言う。
「ここに人食いがおると聞いた。お前たちが何を考えて我らの前に立ち塞がるのは聞かぬ。しかし、通さぬとあれば押し通る!」
エースが剣を抜いた。
村人たちはじり、と下がるが、引く様子はなかった。
エースがさらに大きな声で言う。
「人食いを出せ!出さぬならお前たちを…斬る!」
すると、上の階から扉が開く音がした。
たくさんの子どもの声が聞こえる。
「せんせい!いっちゃだめ!」「せんせい!もどって!」「せんせい!」「せんせい!」
男が1人、走ってくる。
慌てて階段を駆け下り、足をもつれさせて転がり落ち…そんな男に彼らは駆け寄り、男を守るように階段の上り口へ固まる。
「先生、下がってて!」
「ここは私たちに任せて!」
そして、ひときわ大柄の男が前に出る。
「お前らも下がれ。オレがやる」
そいつの殺気に、俺も剣を抜く。
「強そうなやつが出てきたのう…」
エースが大柄の男を睨む…俺は奴に、斬りかかる!
「やめて!」
せんせい、と呼ばれた男が、俺の前に飛び出てきた。
俺はその男にぶつかり、勢い余って押し倒した。
「やめて、お願い、僕はどうなってもいいから」
俺の下で男が泣きそうな顔で懇願する。
その顔を見て俺は…
あまりの艶に固まった。
そして、次に出た言葉に俺たちは首をかしげた。
「みんなは、何も悪いことはしていない。僕が、指示してやらせた。貧しい村を装うのも、全部」
「税金、少なくて済むように、僕が」
「だって、税金払っても、この人たちの暮らしは良くならない。だったら、払わなくていいって、そのぶん僕が何とかするって言って、払うべき税金を使った、この土地を使って研究するのに、勝手に、みんなを騙して。
だから…何年かかっても、僕が全部払うから…みんなの事は、許して」
エースがなるほど、と頷く。
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