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助手と先生
先生、終わりと始まりの話
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温泉からの帰り道。
「…先生、俺との最初、とか良く覚えてるね」
ちょっと不貞腐れたようにユーゴが言う。
はは、そりゃ、恥ずかしい過去、だもんね。
「そうだね、最近、思い出すことが多くて。
エースの恋を応援したりとかしてるとね、自分の初恋のこととか、童貞捨てたときとか、ロストバージン…処女を喪失したってことね、そのときとか…初めて恋人が出来たときとか、考えるようになって」
「へえ」
ふふ、その「気になるけど気にしない」みたいな態度、かわいいんだから。
「僕ね、こことは違う世界から飛んできたって話、覚えてる?」
「うん」
「僕はね、どこかよその星空の中を飛ぶ宇宙船…まあ、船だね、その乗組員だったの。仕事は…お医者さん。」
「うん」
「住んでる星が保たなくなる前に、宇宙へ出て新しい星を探そう…っていう計画で、宇宙へ出た。新しい航法が開発されてね、それで行けるとこまで行こうって…食べ物に困らないように船の中で色んなものを栽培したりね、そうやって、大勢の人と一緒に旅をした。
船の中では子孫を絶やさないように、割とお気軽にセックスする雰囲気で…僕はバイセクシュアル、簡単に言うと男も女も恋愛対象ってことね、それもあって結構色んな人に誘われて…セックスした。
初めては全部、そこで捨てた。
勉強と研究ばかりで恋愛下手、彼女も彼氏もいたことがない…40手前のおじさん、それが元の僕」
「へえ」
面白くないって顔、ふふ。
そうだね、今からするのは…終わりの話。
「ただ、そうやって産めよ増やせよ…ってやるんだけどさ、誰も妊娠しないんだ。今考えると、それは予兆なんだけど…、僕たちは、ある病気に感染してた。
それは、性病…まあ、セックスすると感染する病気なんだけど、感染率が高くて、潜伏期間が長くて…それに、症状が…ね。えげつなくて。」
「うん」
「…ある日、何人かで、1人を殺して…食べた」
「えっ」
「その病気に罹るとね、人間が人間を食べたくなって…終いには理性がなくなるんだ。人間が肉に見えてきて…殺して食べてしまおうって、なるんだ。
1人、1人と人が減って。
僕は偶然、殺さなかったし殺されもしなかったよ…だけど、多分僕も、その病気にかかってた。医者だから、頑張って治療法を探したけど…もう、手遅れのとこまできてしまって」
「…うん」
「その中で…1人だけ感染してなかった子がいてね。
船で1番若くて…そのとき、16歳だったのかな、クロエ君に似てる子でね…かわいくて、賢かった」
「うん」
「その子…誰ともセックスしてなかったんだ。
小さな子に手を出すような大人もいなかったから…
なんせ、出発したときは、11歳だよ?
みんなで可愛い可愛いって、大事にしてたしね」
「うん」
「僕は、その子を脱出ポッド…小さな船、に乗せて、コールドスリープ…眠り続けることで長く生きられる、そういう術、みたいな?…をかけて、それを母星に向けて送り出した。…誰か、見つけてくれますようにって…そのおかしな病気の研究と一緒にね」
「うん」
「そんでね、僕は、最期…ブラックホール…空のどこかにある、重力が…いや、無茶苦茶強烈な渦の真ん中にある星、みたいなものに船で突っ込んだ。病気を、広げちゃいけないと思ったから」
「うん」
そして、ここからは始まりの話。
「それで、気がついたら、この星にいたの。そこら中火山が爆発して、地震が起きて、嵐が吹き荒れてる、そんな中で目を覚まして、次の瞬間に、波に飲まれて、海の藻屑になって…で、またどっかで起きて、そしたらちっちゃな生き物…ぎりぎり生き物、と呼べるものがいて。で、今度は火山の噴火に巻き込まれて…、目を覚ますたびに、そうやって死んで生き返って…そうしてある日、痛みで目を覚ますんだ」
「うん」
「僕の体をね、動物たちがむしゃむしゃ食べてた。
おなかが空いてたのかな、わからないけど、まあ、食べられても僕、元に戻るでしょ、ちょくちょく食べに来てたみたいで…でも、目が覚めたその日、その動物たちがね…苦しみだして。グニャグニャって…溶けて、人間になった。それが、人間のはじまり」
「ええっ」
「そうやって、色んな獣が人間になった。それが髪の色や目の色の最初の違い」
「そ…うなんだ」
「獣から人間が出来て、僕はようやく一人じゃ無くなって…こうしてずっと起きてるようになった」
「うん」
「初めてこの星で…セックスしたのは、その人間たちと…かな。発情期って、あるでしょ?セックスさせてもらえない子が出るじゃない、だからその子と。」
「……うん」
「思えば、そっちの経験は豊富でも、恋愛ってしてこなかったなと思って」
「うん」
「だから…ユーゴが、好きだって言ってくれたとき、ほんとはすごく嬉しかったよ」
「うん」
「…だけどさ、恋人いない歴が何十億年だもん。
さすがにないなって、思って。そしたら意外と粘るじゃない?…体だけでも、あげてみようかなって、思って。そしたら自分から媚薬出てるし、ああ、やっぱりそれだけなんだなーって思って」
「うん」
「そしたら…うっかり、眷属にしちゃって」
「うん」
「責任とらなきゃなって…」
「うん」
「まあ、いつの間にか好きに…なってたし、
その…僕の好みの男にさ、成長してさ、
頼りになるし、可愛いし、だから…さ」
「うん」
「だからね、改めて、ちゃんとしようと思って」
「……うん」
「愛してるよ、ユーゴ」
「…先生、俺との最初、とか良く覚えてるね」
ちょっと不貞腐れたようにユーゴが言う。
はは、そりゃ、恥ずかしい過去、だもんね。
「そうだね、最近、思い出すことが多くて。
エースの恋を応援したりとかしてるとね、自分の初恋のこととか、童貞捨てたときとか、ロストバージン…処女を喪失したってことね、そのときとか…初めて恋人が出来たときとか、考えるようになって」
「へえ」
ふふ、その「気になるけど気にしない」みたいな態度、かわいいんだから。
「僕ね、こことは違う世界から飛んできたって話、覚えてる?」
「うん」
「僕はね、どこかよその星空の中を飛ぶ宇宙船…まあ、船だね、その乗組員だったの。仕事は…お医者さん。」
「うん」
「住んでる星が保たなくなる前に、宇宙へ出て新しい星を探そう…っていう計画で、宇宙へ出た。新しい航法が開発されてね、それで行けるとこまで行こうって…食べ物に困らないように船の中で色んなものを栽培したりね、そうやって、大勢の人と一緒に旅をした。
船の中では子孫を絶やさないように、割とお気軽にセックスする雰囲気で…僕はバイセクシュアル、簡単に言うと男も女も恋愛対象ってことね、それもあって結構色んな人に誘われて…セックスした。
初めては全部、そこで捨てた。
勉強と研究ばかりで恋愛下手、彼女も彼氏もいたことがない…40手前のおじさん、それが元の僕」
「へえ」
面白くないって顔、ふふ。
そうだね、今からするのは…終わりの話。
「ただ、そうやって産めよ増やせよ…ってやるんだけどさ、誰も妊娠しないんだ。今考えると、それは予兆なんだけど…、僕たちは、ある病気に感染してた。
それは、性病…まあ、セックスすると感染する病気なんだけど、感染率が高くて、潜伏期間が長くて…それに、症状が…ね。えげつなくて。」
「うん」
「…ある日、何人かで、1人を殺して…食べた」
「えっ」
「その病気に罹るとね、人間が人間を食べたくなって…終いには理性がなくなるんだ。人間が肉に見えてきて…殺して食べてしまおうって、なるんだ。
1人、1人と人が減って。
僕は偶然、殺さなかったし殺されもしなかったよ…だけど、多分僕も、その病気にかかってた。医者だから、頑張って治療法を探したけど…もう、手遅れのとこまできてしまって」
「…うん」
「その中で…1人だけ感染してなかった子がいてね。
船で1番若くて…そのとき、16歳だったのかな、クロエ君に似てる子でね…かわいくて、賢かった」
「うん」
「その子…誰ともセックスしてなかったんだ。
小さな子に手を出すような大人もいなかったから…
なんせ、出発したときは、11歳だよ?
みんなで可愛い可愛いって、大事にしてたしね」
「うん」
「僕は、その子を脱出ポッド…小さな船、に乗せて、コールドスリープ…眠り続けることで長く生きられる、そういう術、みたいな?…をかけて、それを母星に向けて送り出した。…誰か、見つけてくれますようにって…そのおかしな病気の研究と一緒にね」
「うん」
「そんでね、僕は、最期…ブラックホール…空のどこかにある、重力が…いや、無茶苦茶強烈な渦の真ん中にある星、みたいなものに船で突っ込んだ。病気を、広げちゃいけないと思ったから」
「うん」
そして、ここからは始まりの話。
「それで、気がついたら、この星にいたの。そこら中火山が爆発して、地震が起きて、嵐が吹き荒れてる、そんな中で目を覚まして、次の瞬間に、波に飲まれて、海の藻屑になって…で、またどっかで起きて、そしたらちっちゃな生き物…ぎりぎり生き物、と呼べるものがいて。で、今度は火山の噴火に巻き込まれて…、目を覚ますたびに、そうやって死んで生き返って…そうしてある日、痛みで目を覚ますんだ」
「うん」
「僕の体をね、動物たちがむしゃむしゃ食べてた。
おなかが空いてたのかな、わからないけど、まあ、食べられても僕、元に戻るでしょ、ちょくちょく食べに来てたみたいで…でも、目が覚めたその日、その動物たちがね…苦しみだして。グニャグニャって…溶けて、人間になった。それが、人間のはじまり」
「ええっ」
「そうやって、色んな獣が人間になった。それが髪の色や目の色の最初の違い」
「そ…うなんだ」
「獣から人間が出来て、僕はようやく一人じゃ無くなって…こうしてずっと起きてるようになった」
「うん」
「初めてこの星で…セックスしたのは、その人間たちと…かな。発情期って、あるでしょ?セックスさせてもらえない子が出るじゃない、だからその子と。」
「……うん」
「思えば、そっちの経験は豊富でも、恋愛ってしてこなかったなと思って」
「うん」
「だから…ユーゴが、好きだって言ってくれたとき、ほんとはすごく嬉しかったよ」
「うん」
「…だけどさ、恋人いない歴が何十億年だもん。
さすがにないなって、思って。そしたら意外と粘るじゃない?…体だけでも、あげてみようかなって、思って。そしたら自分から媚薬出てるし、ああ、やっぱりそれだけなんだなーって思って」
「うん」
「そしたら…うっかり、眷属にしちゃって」
「うん」
「責任とらなきゃなって…」
「うん」
「まあ、いつの間にか好きに…なってたし、
その…僕の好みの男にさ、成長してさ、
頼りになるし、可愛いし、だから…さ」
「うん」
「だからね、改めて、ちゃんとしようと思って」
「……うん」
「愛してるよ、ユーゴ」
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