【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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王子様と皇太子殿下 5

皇太子の日常

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ここに来てから1ヶ月が過ぎて、蒔いた種からも可愛らしい芽が伸び、そろそろ苗に出来そうだ。
来週あたり、庭の色んな所に植えてみよう。

大きな鉢に植え替えて、部屋の中で育てるのも、いいかもしれない…庭のない家だったら、大きい鉢に色々な種類を寄植えしても楽しそうだし…観賞用の花と一緒に植えるのに適したものを探すのもいいかも…でも薬草の花も可憐でかわいいんだよな…そういうのをもっと広めていくとかどうだろうな…そういえば鉢の種類って育生に関係あるのかな…そもそも家庭で薬草を育てることを促進する方法って何があるんだろう?本を書く?でも字が読めない人たちには?そうだ、絵をたくさん入れた本を…印刷が大変そうだけど…色も入れたいし…もうそれだったら実際に見に来てもらえたら早いのに…そういえば温泉あるんだしついでにここを楽しい場所にしたらみんな来てくれるかな…でも来るお金のない人はどうしよう…それこそお金になるから育てようっていう方向もありなのかな…

「はあ…やりたい事がいっぱいだな」

ひと鉢ひと鉢観察し、日誌をつける。
それが終わったら、庭作りのための計画を立てる。

1つは実のなる木をいくつか植えて、
1つは咲く時期の異なる木を何種類か植えて、
もう1つは薔薇を植えてみた。

ミツバチが来ないかな…と期待して、巣箱も置いた。

両隣…
右が職員たちの家。
左がソラ君とロウさんの家。

ソラ君は何頭か馬を連れてきて、ここで若い馬の調教をしている。
でも今日はロウさんと2人で王都に買い出しに行くと言って荷馬車で出た。
残された若馬たちは黙々と草を食べている。

「かわいいなあ…」

それにしても…ソラ君とロウさんはとても仲がいい。
時々軽く口づけを交わしたりするのが庭から見えて、その度に何だかドキドキする。
恋人…なんて、考えたことも無かったけど、もう皇太子でもないんだし…

「自由にして、良いのかな」

なんて思ったりするけど、じゃあ相手はって考えると…

エースさんしか、思いつかない。

優しくて、僕の事理解してくれて、それに…
肌を合わせても気持ち悪くならない。
ソラ君みたいに昔からずっと一緒だったわけでもないのに。

「これが恋愛感情…なのかな」

例えば診断の時にコバヤシ先生に触られるのも少し怖いのに、エースさんとお風呂に入るのは怖くない。
例えばロウさんに見下ろされるのは怖いけど、エースさんだと平気だ。

「分かんないな…」

今日もエースさんは家の前の広い草原を耕す。
畑で野菜や芋を育てたいという話をしたら、任せろといって畑を作り始めたのだ。
畑を作った経験がある、と言っていただけのことはあって、手際がいいし早い。
今日は、この前植えた種芋から出た芽のまわりの草取りを黙々とやっている。

初日の夜に、これからやりたいことを話した。
エースさんは自分の話を一生懸命聞いてくれて、何でも協力するぞ、と言ってくれた。
エースさんは助手だから、研究についての情報共有は大事なので、夜にたくさん話をするようになった。
一月たった今でも、今日あったこと、気付いたこと、明日やること、今後の予定…何でも話す。

毎日がとても充実している。
だけど、よく、過去を思い出してうなされるんだ。
そういう夜は、エースさんが慰めてくれる。
いい子だね、明日もちゃんと楽しいからねって、頭を撫でてもらうと何だか落ち着く。
一緒のベッドで寝ることもある。
そうするとうなされないで眠れるから。

でも、一緒に寝てるときは、エースさんが…。

寝るときの癖なのか、と最初は、思ったんだけど…。

僕のおなかをさすってきたり匂いを嗅いだり耳の裏を舐めたり耳たぶを齧ったり首筋に口づけたり…、
その、乳首を触ったり…とかしてくる。

時々、僕の名前を呼んで…
愛してるって、言ってくる。

でも、そこまでだから…
そこから先には手を進めて来ないから。

だから寝たふりをして、知らないことにしている。
だって、エースさんの温もりを感じていないと…なんだか、眠れないんだ。

…依存してる、って思う。
最初に自分を助けてくれた人だから、かもしれない。
きっとまた助けてくれるって安心するんだ。

…体を求められるなら、許してもいいのかもしれない。
ソラ君が言ってた。好きな人とのそういうことは、痛いことでも、奥にキモチイイが隠れてるんだって。
ロウさん、時々ソラ君のこと乱暴に抱くことがあるけど、ちゃんと気持ちいいから、って。

でも、僕とソラ君には、大きな違いがあって。
その…僕はまだ、そういうのが出たことがない。
それどころか、性的な興奮が何かも、わからない…

勃起するのかもわからない。

遅いのかな。それとも、そういう機能がないのかな。

何度も、竿や玉を、潰れるほど踏みつけられたことがあるし、ほんとはもう…。

だから、彼がソコに触れないんじゃないかって、僕を傷つけないための優しさなんじゃないか…って。

…きっと今夜も、僕は昔を思い出してうなされてしまうだろう。

だから、今日もエースさんにくっついて眠る。

戦場でも、背中に味方の気配を感じると安心するのと同じように…

過去に、立ち向かっていける気がするから。

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