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王子様と皇太子殿下 5
皇太子、お引越しする
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「今日からここが我が家か」
少ない私物と、学園から借りてきた本を十数冊、薬草の種が数種類と小さな鉢が箱にいっぱい。
元部下の職員たちに手伝ってもらいながら荷解きをする。
どこに何を入れようかな…
ここに鉢を並べる棚が欲しいな…
と考えながら自室に本を運ぶ。
今日からついに本格的な実験だ。
どんな庭にしようかな?
そういえば、両隣の家の庭も使っていいって言ってたから、3つのやり方を同時に試せるな。
家庭菜園もやりたいな。
だって買い物行くのも遠いし、そうそう元部下を使うわけにもいかない。
それに…自分の目で色んなものを見たいし、自分自身で色んなことをしたい!
遠出も、学園から貸りてきた馬がいる。
…けど、左手だけで操縦するのは不安だし…野盗が出たら戦えない。
片手がないって、不便だな。
そんなことをつらつら考えていると、馬の足音が聞こえた。
学園に忘れ物でもあったかな…と思いながら玄関の扉を開けると、そこにエース殿とリリがいた。
「どうかなさいましたか、エース殿?」
と聞くと、エース殿は驚くべきことを言った。
「おお、今日から助手としてクロエの研究を手伝うことになっての、宜しく頼む。
儂もかつて学園で畑を作った事があるでの、それなりには役に立つぞ」
王子の仕事の合間で手伝うということなのか?
しかし、ここは王都から遠い…
ということは。
もしや眷属というものにとって距離はそう問題にならないのか?
「わかりました。なるべく第3王子としての職務に支障のない範囲でして頂けるよう配慮致します。
ですが、至らぬ場合には必ず仰って下さいませ」
と言うと、驚くべき言葉が帰ってきた。
「いやいや、王子はもう辞めてきた」
「えっ…」
辞めた?
「今日からは助手が本業じゃ。
…だから、その、エース「殿」ではなく、ただ「エース」と呼んでくれ」
そんなに簡単に、王族は辞めていいものなのか?
マルーンでは…いや、ここはトーリなのだから…そういうもの、なのか…?
突然の事でよく分からない。
だが、この国の気風はとても自由だ。
そして、一人ひとりに合わせた仕事が選べる。
…それこそ、国の中枢で働くことも、能力さえあれば誰だろうと構わないのだ、と聞いた。
「エース殿の能力は、戦だけではないのですね」
「そりゃそうじゃ。戦がないなら「第3王子」は必要無いしの、ならば別で役に立たねばならんじゃろ?」
この国で「第3王子」とは、役職の1つに過ぎない…のか?
マルーンでは「トーリで王よりも発言権のある王族」との認識だったのだが…。
「ところで、その「どの」はやめてくれんか」
「は…努力致します」
「…その固い喋り方もな」
お前は研究者として、助手に指示を出すのだろう?
ならば敬語や堅苦しい言い方は無しにして貰いたい、とエース殿は言った。
「ならば…エース「さん」、今日からよろしくおねがいします」
「うむ」
学園では、教授と助手ですらも比較的対等な立場だから、敬語は最低限しか使わない、と言っていた。
先生とユーゴさんのような師弟関係が理想だと。
ふたりは恋人以前に師弟なのだ…と聞いたし、自分も先生に憧れている身としては是非、助手とは対等でいたいと思うが…
「とにかく、もう王族…いや、実は最初から今の王とは血縁も何も無いんじゃがな?
宜しく頼む」
「では、エース「さん」も、その…威厳のある言い回しを直してください」
「…………これは素じゃ。
だが、相分かった、儂も努力しよう」
どうやらこの「古臭い」言い回しは、彼の個性だったらしい。
変な人だなぁ…。
少ない私物と、学園から借りてきた本を十数冊、薬草の種が数種類と小さな鉢が箱にいっぱい。
元部下の職員たちに手伝ってもらいながら荷解きをする。
どこに何を入れようかな…
ここに鉢を並べる棚が欲しいな…
と考えながら自室に本を運ぶ。
今日からついに本格的な実験だ。
どんな庭にしようかな?
そういえば、両隣の家の庭も使っていいって言ってたから、3つのやり方を同時に試せるな。
家庭菜園もやりたいな。
だって買い物行くのも遠いし、そうそう元部下を使うわけにもいかない。
それに…自分の目で色んなものを見たいし、自分自身で色んなことをしたい!
遠出も、学園から貸りてきた馬がいる。
…けど、左手だけで操縦するのは不安だし…野盗が出たら戦えない。
片手がないって、不便だな。
そんなことをつらつら考えていると、馬の足音が聞こえた。
学園に忘れ物でもあったかな…と思いながら玄関の扉を開けると、そこにエース殿とリリがいた。
「どうかなさいましたか、エース殿?」
と聞くと、エース殿は驚くべきことを言った。
「おお、今日から助手としてクロエの研究を手伝うことになっての、宜しく頼む。
儂もかつて学園で畑を作った事があるでの、それなりには役に立つぞ」
王子の仕事の合間で手伝うということなのか?
しかし、ここは王都から遠い…
ということは。
もしや眷属というものにとって距離はそう問題にならないのか?
「わかりました。なるべく第3王子としての職務に支障のない範囲でして頂けるよう配慮致します。
ですが、至らぬ場合には必ず仰って下さいませ」
と言うと、驚くべき言葉が帰ってきた。
「いやいや、王子はもう辞めてきた」
「えっ…」
辞めた?
「今日からは助手が本業じゃ。
…だから、その、エース「殿」ではなく、ただ「エース」と呼んでくれ」
そんなに簡単に、王族は辞めていいものなのか?
マルーンでは…いや、ここはトーリなのだから…そういうもの、なのか…?
突然の事でよく分からない。
だが、この国の気風はとても自由だ。
そして、一人ひとりに合わせた仕事が選べる。
…それこそ、国の中枢で働くことも、能力さえあれば誰だろうと構わないのだ、と聞いた。
「エース殿の能力は、戦だけではないのですね」
「そりゃそうじゃ。戦がないなら「第3王子」は必要無いしの、ならば別で役に立たねばならんじゃろ?」
この国で「第3王子」とは、役職の1つに過ぎない…のか?
マルーンでは「トーリで王よりも発言権のある王族」との認識だったのだが…。
「ところで、その「どの」はやめてくれんか」
「は…努力致します」
「…その固い喋り方もな」
お前は研究者として、助手に指示を出すのだろう?
ならば敬語や堅苦しい言い方は無しにして貰いたい、とエース殿は言った。
「ならば…エース「さん」、今日からよろしくおねがいします」
「うむ」
学園では、教授と助手ですらも比較的対等な立場だから、敬語は最低限しか使わない、と言っていた。
先生とユーゴさんのような師弟関係が理想だと。
ふたりは恋人以前に師弟なのだ…と聞いたし、自分も先生に憧れている身としては是非、助手とは対等でいたいと思うが…
「とにかく、もう王族…いや、実は最初から今の王とは血縁も何も無いんじゃがな?
宜しく頼む」
「では、エース「さん」も、その…威厳のある言い回しを直してください」
「…………これは素じゃ。
だが、相分かった、儂も努力しよう」
どうやらこの「古臭い」言い回しは、彼の個性だったらしい。
変な人だなぁ…。
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