【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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王子様と皇太子殿下 5

王子、先生にケツをビシビシ叩かれる

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「大変なことが起きてるかもしれない」

先生が儂を呼び出してそう言った。

「何があった?」
「クロエ君の状態が、思ったより深刻だ。思ったより成長速度が遅いんだ。何でかなって気になってたんだけど、まだあの「条件」が、彼にじわじわと回復術をかけ続けてるみたいなんだ、君、気づいただろ、右目が見えはじめてる事、ソラ君と彼が、遊んでたときに。それでね、「条件」外すの1年以内って言ったでしょ、実はね、本当はもう少し余裕があるはずだと思ってたんだ、右手右足がないことが当たり前になるのはそんなにすぐじゃないからさ。せっかく眷属になったのに元に戻らなかったら悲しいじゃない、だから、そう言ったんだけど、それどころじゃないんだ、彼、壊れてしまうかもしれない、もうすぐ。」

先生が一気にまくし立てる。
相変わらずよく分からんが…
聞き捨てならない部分だけは分かった。

「クロエが壊れる?どういうことじゃ」
「心と身体の釣り合いが取れてないって話はしたでしょ、でも、僕の計算では、1年後には身体は少なくとも16歳程度にはなってて、心も16歳程度なら、もしかしたら彼の悲惨すぎる過去も受け止められるかもしれない…って希望もあったんだ、だけど、身体の成長が思ったより伸びてなくて、精神が12~13歳まで退行する前兆が出てる、この前、ソラ君と二人で話してたとき、子どもみたいな話し方してたのを聞いてしまって、盗み聞きしたのは悪いと思ってるけどあの子のことには僕にも責任があるからほっとけなくて」

なんと、先生も盗み聞きしておったとは!
いや、それはともかく。

「つまり、早く「条件解除」して眷属にして身体の傷を癒やし、成長を促進させねばならんということか」
「…ちょっと違う」
「何?」
「早く条件解除はしてほしいけど、眷属にするのは待ってほしい」
「…どういうことじゃ?」
「眷属になったら、そこから「身体は歳を取らない」だろ?
 でも精神はそうじゃない、心は成長もするし……退化もする。
 もしあの小さい身体のまんま眷属になったら、精神もそれに引きずられて幼くなって、そして過去を受け止めきれなくて心が壊れてしまうかもしれない。
 そうなったら…もしかしたら、人の姿を保てなくなるかもしれない。
 ずっと清いままの交際でいいなら、それでもいいのかもしれないけどね」
「う…む…む…」

儂はクロエの為なら…どんな苦行でも耐える。
耐えなければならない、だが、いつまで?
それは、とても…難しい。

先生は続けた。

「…エースは、「元が眷属でも人間でも、特別な相手と眷属同士になって回路が繋がったあと、その相手に対して性的な欲求が強くなる傾向がある」っていうのは…知ってる?」
「…特別な相手?」
「一目惚れの相手、とか」
「…それはつまり…ユーゴなら先生、ロウならソラ……儂、だと、クロエ、とか、か」
「そう、嫉妬深くなったりね。一途に一人を求めるようになるんだ。
 浮気されないようにしようとするんだよね、多分。本能的に」
「本能?」
「そう、子孫を残さないの、本能。
 だからさ、自分が惚れた子と清いままでずっとなんて…エース?聞いてる?」

子孫を残さないの本能…つまり、同性を愛し、共に生きようとすることも、本能なのか…?

「……ならば、本能というだけで、儂は男を、クロエを好きになったのか?…クロエが…男だから?」

ぽつり、と言うと、先生が怒った。

「いい加減にしてよ!!
 そうじゃないのは自分で分かってるでしょ!?」
「それは…そう…そうじゃ。」

自分で言うとってからに、情けないのう、儂は…
先生は、ため息をついてからこう言った。

「兎に角彼が壊れないうちに何とかしたいんだ。
 それが一番、誰にとっても良い結末なのは分かってるんだから」

ふむ…最悪を回避しさえすれば、儂とクロエもらぶらぶで居れるということじゃな。
ならばやるしかあるまい。

「1番可能性のある方法はね。
 あと12「条件解除」して、あの子の成長を待って、それから改めて、彼に眷属になって貰えないか聞くことだよ。
 …エースが彼を眷属にしたいなら、ね」

そうか…なら、クロエは、儂のものになった後暫くは無防備だということでもあるな。
確実に守らなければならん…

ならん、が、が。

「1~2ヶ月…いちにかげつだと!?」

この前は1年だと言うとったじゃないか!
急にそれが、そんなに短くなるんじゃ!?

「先生!?そんな、無茶な、」
「「条件」が取れて、身体の成長速度が上がって、18歳くらいまで発達するのに1~2年。
 そもそも22歳なんだから、成長できるぎりぎり…
 まあ回路の状況をみると、まだ成長できることは分かってるんだけどね?
 それに、あの子とても器用なんだ…
 身体の不自由な状態が「当たり前」になるまであと2~3年もないかもだし、ギリギリのラインだよ」
「いや、いやいや、無理じゃ、そりゃ今のところ順調に行っとるが…!」

いきなりそんな!
焦らず行こうと言ったばかりじゃのに!?

「先生!何とか延ばせんのか!?」
「延ばせるもんならもうやってるよ!」

そりゃそうじゃ。
いやでも無理じゃ…

「とにかく!これは緊急の案件だから。
 すぐ関係者集めて!!作戦会議だよ!」

1~2ヶ月…1~2ヶ月…
1番確実ならやるしかなかろう…!

……けども……
……だけども。

やっぱり、短すぎんか?
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