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王子様と皇太子殿下 2
助手、王子の失恋について考える
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「…どうだった?」
クロエの部屋から出てきたエースに、話しかける。
「……ユーゴはいいのう、先生がおって」
あっ、これは駄目だったやつだな。
「…儂はまた、叶わぬ恋をしとったようじゃ」
「…うん」
エースとは腐れ縁の俺は、昔からこいつが何度となくフラれるのを見てきた。
「…眷属になってから、初めて好きになった子が、どうして敵国の皇子様何じゃろなぁ」
言うことも変わり映えしなくて、
「…お前、昔っからそうだもんな。絶対恋が実らないような相手ばっか好きになるじゃねーか。兄貴の婚約者だとか、他所の国の女王様だとか、…町娘とか、さ」
…嫁にまでフラれたことは、今は触らないでおいてやろう。その、政略結婚だったし…な…。
眷属になる前のこいつは、正真正銘、この国の第3王子だった。
俺の親父が近衛騎士団長で王様と仲が良かったこともあって、同い年の遊び相手として選ばれた俺は、こいつと小さいころから一緒だった。
だから初恋からずっと、こいつの恋を見てたけど…
実った恋は1つもない。
「失恋王子、か」
300年ほど前の事件で眷属になった後、自分の嫁にも「あなたと一緒には生きられない」って言われちまったのが相当こたえたんだろう。
あれから、2度と恋なんぞせん!といってこいつが仕事に打ち込んだ結果、今のトーリ王国があるのだ。
ま、嫁さんの気持ちも分からんでもない。
仕事仕事で家にいない上に突然「君を守るため」だと言われ自分を実家へ戻しいきなり謀反の罪に問われて牢獄にぶち込まれおまけに急によくわからん化物になった旦那より……自分が寂しいときに寄り添ってくれた男のほうがいいよな。
兄嫁に恋したのをきっかけにどちらか一方が望むなら離縁できる法律を作ろうとし、
町娘に恋したのをきっかけに愛さえあれば身分の差など関係なく結婚できる仕組みを作ろうとし、
それが原因で色々ゴタゴタに巻き込まれた挙げ句、
嫁からその法律に基づいて離縁を叩きつけられ、
その仕組みを利用して従者と結婚されるという…
こいつはそういうやつなのだ。
二人で外のベンチでしんみりしていると、どこからか先生がやってきた。
「エース、フラれたんだって?」
「……」
「クロエくんの病室にいったら、あの子が話してくれたからさ。」
先生は続けた。
「…安心しなよ、あの子本当は君のこと嫌いってわけじゃないみたいだからさ。
伴侶なんて急に言うから驚いたんだ…というか、誰かと性的な関係になるのが怖いんだと思う。
彼が今まで経験してきたセックス…性交は、一方的な暴力と同じ…というか、暴力なんて言葉じゃ足りない酷いことだったわけでしょ?
今回のような…あれほどのことが毎度あったとは思わない、けど、あんなことばかりされてきたらさ、「伴侶になる」って言葉の中に隠れた「性的な関係を持つ」っていう部分に過剰な拒否反応が出るのは仕方がないことだって思うよ?
とりあえず、クロエくんの中では、敗戦の将?だっけ?は、勝った方の言うことを何でも聞かなきゃならないっていうのが常識として刷り込まれてるんだから、命令すれば毎日だって近くにいてくれるわけでしょ?
だったら立場でも権力でも何でも利用してとにかく強引にでも物理的な距離を近づけて、アプローチし続ければいいじゃない!
1回駄目だったぐらいで諦めちゃ駄目だよ!「諦めたらそこで試合終了」だよ!成功するまで何度だって愛してるって言えばいいじゃない!」
先生が一気に喋る。
でもエースはいつも言うアレを言わなかった。
そのかわり、先生の目を見て、決意したように頷いた。
それを見て先生は、
「僕らも手伝うからさ…頑張ってみようよ」
と言った。
エースは小さい声で、返した。
「ありがとう、せんせい」
俺は「今度こそこいつの恋が実るようにしてやらないとな」……と、ぼんやり考えた。
クロエの部屋から出てきたエースに、話しかける。
「……ユーゴはいいのう、先生がおって」
あっ、これは駄目だったやつだな。
「…儂はまた、叶わぬ恋をしとったようじゃ」
「…うん」
エースとは腐れ縁の俺は、昔からこいつが何度となくフラれるのを見てきた。
「…眷属になってから、初めて好きになった子が、どうして敵国の皇子様何じゃろなぁ」
言うことも変わり映えしなくて、
「…お前、昔っからそうだもんな。絶対恋が実らないような相手ばっか好きになるじゃねーか。兄貴の婚約者だとか、他所の国の女王様だとか、…町娘とか、さ」
…嫁にまでフラれたことは、今は触らないでおいてやろう。その、政略結婚だったし…な…。
眷属になる前のこいつは、正真正銘、この国の第3王子だった。
俺の親父が近衛騎士団長で王様と仲が良かったこともあって、同い年の遊び相手として選ばれた俺は、こいつと小さいころから一緒だった。
だから初恋からずっと、こいつの恋を見てたけど…
実った恋は1つもない。
「失恋王子、か」
300年ほど前の事件で眷属になった後、自分の嫁にも「あなたと一緒には生きられない」って言われちまったのが相当こたえたんだろう。
あれから、2度と恋なんぞせん!といってこいつが仕事に打ち込んだ結果、今のトーリ王国があるのだ。
ま、嫁さんの気持ちも分からんでもない。
仕事仕事で家にいない上に突然「君を守るため」だと言われ自分を実家へ戻しいきなり謀反の罪に問われて牢獄にぶち込まれおまけに急によくわからん化物になった旦那より……自分が寂しいときに寄り添ってくれた男のほうがいいよな。
兄嫁に恋したのをきっかけにどちらか一方が望むなら離縁できる法律を作ろうとし、
町娘に恋したのをきっかけに愛さえあれば身分の差など関係なく結婚できる仕組みを作ろうとし、
それが原因で色々ゴタゴタに巻き込まれた挙げ句、
嫁からその法律に基づいて離縁を叩きつけられ、
その仕組みを利用して従者と結婚されるという…
こいつはそういうやつなのだ。
二人で外のベンチでしんみりしていると、どこからか先生がやってきた。
「エース、フラれたんだって?」
「……」
「クロエくんの病室にいったら、あの子が話してくれたからさ。」
先生は続けた。
「…安心しなよ、あの子本当は君のこと嫌いってわけじゃないみたいだからさ。
伴侶なんて急に言うから驚いたんだ…というか、誰かと性的な関係になるのが怖いんだと思う。
彼が今まで経験してきたセックス…性交は、一方的な暴力と同じ…というか、暴力なんて言葉じゃ足りない酷いことだったわけでしょ?
今回のような…あれほどのことが毎度あったとは思わない、けど、あんなことばかりされてきたらさ、「伴侶になる」って言葉の中に隠れた「性的な関係を持つ」っていう部分に過剰な拒否反応が出るのは仕方がないことだって思うよ?
とりあえず、クロエくんの中では、敗戦の将?だっけ?は、勝った方の言うことを何でも聞かなきゃならないっていうのが常識として刷り込まれてるんだから、命令すれば毎日だって近くにいてくれるわけでしょ?
だったら立場でも権力でも何でも利用してとにかく強引にでも物理的な距離を近づけて、アプローチし続ければいいじゃない!
1回駄目だったぐらいで諦めちゃ駄目だよ!「諦めたらそこで試合終了」だよ!成功するまで何度だって愛してるって言えばいいじゃない!」
先生が一気に喋る。
でもエースはいつも言うアレを言わなかった。
そのかわり、先生の目を見て、決意したように頷いた。
それを見て先生は、
「僕らも手伝うからさ…頑張ってみようよ」
と言った。
エースは小さい声で、返した。
「ありがとう、せんせい」
俺は「今度こそこいつの恋が実るようにしてやらないとな」……と、ぼんやり考えた。
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