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猟師と青年 1
猟師、山で青年を拾う
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「何か、人間の臭いがするなあ」
ふんふん。
こっちだな。
ふんふん。
「あっ、いた」
服装から見るに、どうやら兵隊さんのようだ。
こんなとこで座り込んで寝てるなんて、何か事情があるのかもしれないなあ。
もう日も暮れたし、山小屋まで持っていこう。
「よいせ」
抱っこしてみると、意外と重いな。
まあ、抱えられないほどじゃないけど…
「なーんか、いい匂いする」
ふんふん。
このひとの体臭かなあ。
ふんふん。
いつまでも嗅いでいられそう。
「いい匂いっていうか、クセになるっていうか…」
いい獲物を手に入れたときより上機嫌になって、オレはこのひとを山小屋まで連れて行くことにした。
***
ふんふん…と彼を自分ちの床に寝かせて眺める。
いい匂いもするし、よく見るとかわいい。
いいものを拾った!
もしこのひとが行くとこないんだったらオレがもらっちゃおう。
きっと脱走兵だと思うんだ。
脱走兵はどこの国でも捕まったら死刑だから、それならオレがもらっちゃってもいいよね。
「うふふふ……」
よく分かんないけど、このひとが欲しい。
なんでだろう、自分のだ!って思うんだ。
変なの……あっ!
「鍋が噴きこぼれちゃうっ」
と、オレが少し離れたすきに、彼が起きた。
「はっ!」
「あっ、気がついた?」
オレは何でもない風をよそおう。
いろんなとこに鼻をくっつけて匂いを嗅いでたのがばれちゃいけない。
こうゆうのは第一印象が大事だからね!
ここは彼を怖がらせないようにお茶目な感じで行こう…。
んんっ。
「山ん中で寝ちゃ駄目だよー、狼に食べられちゃうよ?」
「あっ、はい、すいません…」
「お腹空いてない?猪の鍋、食べる?」
「あの、あなたは…」
ふふ、驚いちゃってる…かーわいい。
オレはにっこり笑って自己紹介する。
「オレは猟師のロウ。あんたは?」
彼に猪肉をたっぷり入れたお椀を渡す。
すると彼はおずおずと手を出して、お椀を受け取ってから名乗った。
「おれは、ソラ。西の砦所属の…兵隊です」
「やっぱり兵隊さんか。国境の山で行き倒れだなんて、何か事情でもある人なのかなと思ってねえ」
そう言ってオレはフフフと笑う。
名前も仕事も分かっちゃった!
ってことは、やっぱ脱走兵なのかな!?
オレが期待したような目を向けたからか、彼は気まずそうにお椀の汁をすすった。
それから、残念な事実を教えてくれた。
「事情…は…無いです」
「えっ……そうなの?」
「薪とりにきて、迷子になっただけで…」
そんなあ!!
じゃあ1人で国境の山にいたのは何で!?
「一緒に来た人たちはいないの?
まさか、置いていかれた…?」
「いや、元々一人で来ましたので…」
「え!?じゃあ切った木はどうやって運ぶの!?」
「縄で括って、引き摺って、荷馬車まで運びます」
えっ?1人で?無理でしょ!!
はっ!!まさか、この子、眷属……?
オレはまさか彼が荷馬車も自分で曳くんじゃないかと思って聞いた。
「じゃあ、荷馬車の人は?」
「日も暮れたし、帰ったと思いますが…」
「それなら、明日には誰か助けが来るのかな?」
あ、良かった。
さすがにそこは普通だった…
そっか、山なら上から落とせばいいから、1人でも何とかなるのか…。
はは、焦った。
でもそれよりもっと謎な事を彼は言った。
「…いや、誰も来ないです、多分」
「…なんで?」
「…………」
あっ、まずい。聞いちゃいけない事聞いたかも。
気まずい空気の中、彼はまたお椀の汁をすする。
こ…こういう時は、オレが力になってやる!みたいな感じで…よし!
「いっ…いじめられてる、とかなら」
「いや、そういうのではないです。
でもおれを助けに行けっていう命令は出ないと思いますし、助けに行きたいって人もいないです」
「何でさ!?」
「何でって…そんなことしたら、他の仕事が回らなくなりますから」
何でも無いふうにソラ君は言う。
オレは理解できなくて叫ぶ。
「人の命より大事な仕事って何!」
「帝国臣民の安全を守ることですが」
「君も帝国臣民でしょ!」
「…おれは、臣民より下なので」
なに、それ。
下とか上とか、どういうこと?
ふんふん。
こっちだな。
ふんふん。
「あっ、いた」
服装から見るに、どうやら兵隊さんのようだ。
こんなとこで座り込んで寝てるなんて、何か事情があるのかもしれないなあ。
もう日も暮れたし、山小屋まで持っていこう。
「よいせ」
抱っこしてみると、意外と重いな。
まあ、抱えられないほどじゃないけど…
「なーんか、いい匂いする」
ふんふん。
このひとの体臭かなあ。
ふんふん。
いつまでも嗅いでいられそう。
「いい匂いっていうか、クセになるっていうか…」
いい獲物を手に入れたときより上機嫌になって、オレはこのひとを山小屋まで連れて行くことにした。
***
ふんふん…と彼を自分ちの床に寝かせて眺める。
いい匂いもするし、よく見るとかわいい。
いいものを拾った!
もしこのひとが行くとこないんだったらオレがもらっちゃおう。
きっと脱走兵だと思うんだ。
脱走兵はどこの国でも捕まったら死刑だから、それならオレがもらっちゃってもいいよね。
「うふふふ……」
よく分かんないけど、このひとが欲しい。
なんでだろう、自分のだ!って思うんだ。
変なの……あっ!
「鍋が噴きこぼれちゃうっ」
と、オレが少し離れたすきに、彼が起きた。
「はっ!」
「あっ、気がついた?」
オレは何でもない風をよそおう。
いろんなとこに鼻をくっつけて匂いを嗅いでたのがばれちゃいけない。
こうゆうのは第一印象が大事だからね!
ここは彼を怖がらせないようにお茶目な感じで行こう…。
んんっ。
「山ん中で寝ちゃ駄目だよー、狼に食べられちゃうよ?」
「あっ、はい、すいません…」
「お腹空いてない?猪の鍋、食べる?」
「あの、あなたは…」
ふふ、驚いちゃってる…かーわいい。
オレはにっこり笑って自己紹介する。
「オレは猟師のロウ。あんたは?」
彼に猪肉をたっぷり入れたお椀を渡す。
すると彼はおずおずと手を出して、お椀を受け取ってから名乗った。
「おれは、ソラ。西の砦所属の…兵隊です」
「やっぱり兵隊さんか。国境の山で行き倒れだなんて、何か事情でもある人なのかなと思ってねえ」
そう言ってオレはフフフと笑う。
名前も仕事も分かっちゃった!
ってことは、やっぱ脱走兵なのかな!?
オレが期待したような目を向けたからか、彼は気まずそうにお椀の汁をすすった。
それから、残念な事実を教えてくれた。
「事情…は…無いです」
「えっ……そうなの?」
「薪とりにきて、迷子になっただけで…」
そんなあ!!
じゃあ1人で国境の山にいたのは何で!?
「一緒に来た人たちはいないの?
まさか、置いていかれた…?」
「いや、元々一人で来ましたので…」
「え!?じゃあ切った木はどうやって運ぶの!?」
「縄で括って、引き摺って、荷馬車まで運びます」
えっ?1人で?無理でしょ!!
はっ!!まさか、この子、眷属……?
オレはまさか彼が荷馬車も自分で曳くんじゃないかと思って聞いた。
「じゃあ、荷馬車の人は?」
「日も暮れたし、帰ったと思いますが…」
「それなら、明日には誰か助けが来るのかな?」
あ、良かった。
さすがにそこは普通だった…
そっか、山なら上から落とせばいいから、1人でも何とかなるのか…。
はは、焦った。
でもそれよりもっと謎な事を彼は言った。
「…いや、誰も来ないです、多分」
「…なんで?」
「…………」
あっ、まずい。聞いちゃいけない事聞いたかも。
気まずい空気の中、彼はまたお椀の汁をすする。
こ…こういう時は、オレが力になってやる!みたいな感じで…よし!
「いっ…いじめられてる、とかなら」
「いや、そういうのではないです。
でもおれを助けに行けっていう命令は出ないと思いますし、助けに行きたいって人もいないです」
「何でさ!?」
「何でって…そんなことしたら、他の仕事が回らなくなりますから」
何でも無いふうにソラ君は言う。
オレは理解できなくて叫ぶ。
「人の命より大事な仕事って何!」
「帝国臣民の安全を守ることですが」
「君も帝国臣民でしょ!」
「…おれは、臣民より下なので」
なに、それ。
下とか上とか、どういうこと?
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