【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

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王子様と皇太子殿下 2

皇太子は目覚め、猟犬は歓喜に沸く

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「今日もいい天気ですよ~」

聞き慣れた声が聞こえる。
いい天気なら、洗濯物も早く乾きそうだな。

しかし、あいつがあの世に来てしまったか…。
他のやつらは、うまく逃げられていれば良いが。

なるべくここには自分だけが来るようにしたかったけど、あそこまで味方が敵の思うつぼじゃ……。

俺は聞いた。

「他の……者は……?」

ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー

今日もいい天気だ。
殿下に蜂蜜入りのヤギ乳を飲ませ、いつものように殿下を「清潔に保つための」お世話をして、ヨシヨシと頭を撫でたあと、いつものようにいい天気ですよと声をかける。

すると、

「他の……者は……?」

と、殿下が急に、話しかけてきたので

「はい、全員おりますよ~」

と返事をして、ハっとなる。まさか。

「殿下…殿下!?目が覚めたのですか!!?」

病室の外でガタンと音がし、見張りのやつが走っていく音が聞こえる。

ベッドを見る。
殿下の目が開いている……!
俺はベッドに駆け寄る。
殿下は天井を見たまま言う。

「なんで…全員…いるんだ」

俺は殿下の手を握る。

「当たり前でしょ……!
 俺たちが殿下を放って逃げるなんて、そんなこと、できるわけないでしょうが……!」

俺は涙声になって訴える。
殿下がその言葉に返してくれる…

「…そうか…自分のせいで…すまん」
「いいんです、いいんですそんなことは……!
 殿下が生きていてさえくれれば!!」
「………生きて?」

外からみんなの足音が聞こえる。
大きな音を立てて扉が開いて、我先に病室に入ってくるみんなは、口々に殿下に声をかける。

「殿下!」「殿下ぁ!」「良かったぁー!」「うおー!」「みんな心配してたんですよ!」「俺は信じてましたよ!」「俺だって信じてたわ!バーカ!」「ううっ…」「泣くなようっとおしい」「そう言うなよ」「うわーん殿下ぁ!」「抱きつくなバカ」「でもこいつは手を握ってるじゃねーか」「役得が過ぎる」

後ろの方、入りきれてねーじゃん。
これまた先生に怒られるやつだろ…と思ったら、

「黙れ阿呆共!!」

先生じゃなくて助手のほうが先に来た。

「はっ、申し訳ありません!」

俺たちは一瞬にして静かになった。
助手はさらに続けて言った。

「彼の意識が戻ったという報告は受けた。
仲間たちにも伝えてやれとは言った。
だがここで騒ぐ許可は出していない。
貴様らは野営地で宴会の準備でもしていろ!」

「はっ!」

助手のほうが怖いんだよなー。
帝国最強、東の辺境伯様くらいコワイ。

「仕方ねえ……」

俺たちはスゴスゴと野営地に帰るのであった…。
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