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王子様と皇太子殿下 1
北の猟犬達、病室に詰めかけて叱られる
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あの王子から噴き出した黒い嵐はその場にいた敵を片っ端から無惨な死体へと変え、帝国軍の全滅という形で戦いは終わった。
「……殿下は、どちらへ行かれたのだろうか」
「それな」
先生と呼ばれたあの男に、殿下の命を預けてしまったが、本当にそれで良かったのだろうか?
いや、治療するとは言っていたし、その言葉に嘘はないと思うが、完全に信用できるのかというと…。
「分からん」
俺たちの意見は一致した。
あの男、先生と呼ばれているが、一体何の先生なのかもよく分からん。
何より「完全という言葉はない」って、殿下がいつも俺たちに言ってたしな。
だからとにかく殿下の無事を確認するのが先だ。
しかし、身ぎれいにしてから来い、とは言われたが、どこへ行けばいいのか分からない。
「場所も言わずに『来い』と言うということは、あの先生とやらはこの国ではわりと有名なんだろう…
どこに住んでいるかも知られているに違いない」
俺たちはすぐに行動に移した。
だが成果は芳しく無かった。
「その辺のを締め上げたが、詳しくは分からん」
「学園?とか楽園?とか言ってたな」
「ここから北西の山、までは分かったが…」
「城ん中調べたけど地図も無かったしな」
こうなると、殿下が連れて行かれた先へ行くであろう人間の後を付けていくしかない。
「やはり第3王子の野郎か?」
「ああ、奴は間違いなく「先生」の所へ向かう」
「なら俺らは馬の用意をしとくわ」
「じゃ、俺らは見張っとくわ」
「じゃあ俺らは荷物まとめとくわ」
つまり、身ぎれいにしてるヒマはないってことだ。
俺たちは散開し、それぞれの仕事に移った。
***
明け方になって奴が動き出したのを見て、俺たちもその後を追った。こういうのは得意なほうだ。
そうして着いたのがこの場所なのだが…
「でかい屋敷が3つもあるぞ」
「小さいのも2つあるな」
「つまり学園ってのは学校の大きいやつか」
「そういえば殿下が、将来は今の学校の上の学校を作って優秀な人間を育てるんだとかって」
「多分それだな…こういう感じか、なるほど」
殿下はここの話を知っていて、北でも取り入れようとなさったのに違いない。
さすが殿下、何でも知っていらっしゃる。
「しかし…広いな」
「どこへ消えた、あの野郎」
問題は、ここにある建物のうちどれに奴が入ったのか、分からないことだ。
仕方ねえだろ!?
あの野郎、途中から急に黒い霧になりやがって、ここまで追っかけるだけでも必死だったんだから!!
……しかし、ここまできたら、あと少しだ。
「手分けして、片っ端から調べりゃいい」
「だな」
***
「それで、この病室を見つけて忍び込んだ、と」
「はい」
「清潔にしてから来いっていったでしょおぉ!」
先生だかいう男が、床を踏み鳴らして怒った。
だけどちっとも怖くないもんで、つい。
「だって、場所が分からなかったんすもん」「わかってりゃ水浴びくらいは出来たんですがね」「そっちが教えてくれないもんだから…なあ」「場所を知ってるだろうあの王子様を追っかけるのに必死で」「そんな時間は無かったであります」「無かったな」「無かったよな」「無かったぞ」
先生だかいう男はさらに怒った。
「口応えしないの!大体君たちは捕虜なんだからさ、うちの国の中で好き勝手したら駄目でしょう!」
怒って正論を吐いたので、つい。
「捕虜、とは?」「捕まった覚えがございませんが、それは」「なんせ帝国の兵隊でもねえし」「残念ながらそういうことなんですなぁ、ハハ」「こっちは残念とも思わんですがねー」「俺らクロエ殿下親衛隊なんで」「そもそも私どもを帝国軍とは認めんと言ったのは軍を統括しているダイイチコータイシの野郎ですから、文句はそちらへ」「ほんと帝国軍は糞」「つまり帝国は肥溜めということだな!」
「「ハハハ!」」
そうしていると、先生だかいう男は、怒りながら譲歩をしてくれる。
「あーもう、うるっさい!ここの一階のお風呂貸してあげるから、さっさと入ってきて!」
うーん、もうちょい何か引き出せそうなんだよな。
というわけで、つい。
「そういえば換えの服が無いであります」「そういうことですから、身ぎれいに、はそもそも無理でしたな」「裸でいいすか」「それは駄目だろ」「せめて手ぬぐいを腰に巻くというのはどうか」「しかしそれでは殿下がお嫌だろうしなぁ」「うーん」「困ったな」「どうしようかな」「服ごと入って洗えばどうか」「天才」「風呂から上がってフクごとフク…ププ」
すると案の定先生はキレながら譲歩した。
「ああーーもう!服ぐらい貸したげるよ!」
おお、そりゃありがたい。
なもんで、俺たちは声を揃えてこう言った。
「ありがとうございます!」
指示通り1階へ降り、風呂場へ向かう。
風呂は割と広くて、無理すれば全員が入れそうだ。
……ウチの大浴場よりは狭いけどな!
でも、殿下は背中の焼印を気にしてるから…
ちっちゃい個人用の風呂があれば良いんだが。
俺たちはこそこそと話し合う。
「殿下が穏やかな寝息を立ててるのも確認したし、目が覚めるまで交代で見張りに来るか」
「部屋の中で世話する係もいるだろ?
殿下の肌を他人に見せたくねえ、特にシモは…」
「そうだな、それに目が覚めたとき知った顔があるのとないのとじゃ、安心感も違うだろうし」
「そうだな」「確かに」「違いねえ」「うむ」
今後の方針は決まった。
「俺たちはここに留まって殿下のお世話をする」
「「異議なし」」
というわけで殿下のいる建物の近くの庭で野営の準備をしていたら、早速先生に見つかってため息をつかれてしまった。
「せめてもう少し端っこでやってよ…」
「はい」
ま、端でも何でもいい。
どうやらここにいる許可は降りたようだからな。
「……殿下は、どちらへ行かれたのだろうか」
「それな」
先生と呼ばれたあの男に、殿下の命を預けてしまったが、本当にそれで良かったのだろうか?
いや、治療するとは言っていたし、その言葉に嘘はないと思うが、完全に信用できるのかというと…。
「分からん」
俺たちの意見は一致した。
あの男、先生と呼ばれているが、一体何の先生なのかもよく分からん。
何より「完全という言葉はない」って、殿下がいつも俺たちに言ってたしな。
だからとにかく殿下の無事を確認するのが先だ。
しかし、身ぎれいにしてから来い、とは言われたが、どこへ行けばいいのか分からない。
「場所も言わずに『来い』と言うということは、あの先生とやらはこの国ではわりと有名なんだろう…
どこに住んでいるかも知られているに違いない」
俺たちはすぐに行動に移した。
だが成果は芳しく無かった。
「その辺のを締め上げたが、詳しくは分からん」
「学園?とか楽園?とか言ってたな」
「ここから北西の山、までは分かったが…」
「城ん中調べたけど地図も無かったしな」
こうなると、殿下が連れて行かれた先へ行くであろう人間の後を付けていくしかない。
「やはり第3王子の野郎か?」
「ああ、奴は間違いなく「先生」の所へ向かう」
「なら俺らは馬の用意をしとくわ」
「じゃ、俺らは見張っとくわ」
「じゃあ俺らは荷物まとめとくわ」
つまり、身ぎれいにしてるヒマはないってことだ。
俺たちは散開し、それぞれの仕事に移った。
***
明け方になって奴が動き出したのを見て、俺たちもその後を追った。こういうのは得意なほうだ。
そうして着いたのがこの場所なのだが…
「でかい屋敷が3つもあるぞ」
「小さいのも2つあるな」
「つまり学園ってのは学校の大きいやつか」
「そういえば殿下が、将来は今の学校の上の学校を作って優秀な人間を育てるんだとかって」
「多分それだな…こういう感じか、なるほど」
殿下はここの話を知っていて、北でも取り入れようとなさったのに違いない。
さすが殿下、何でも知っていらっしゃる。
「しかし…広いな」
「どこへ消えた、あの野郎」
問題は、ここにある建物のうちどれに奴が入ったのか、分からないことだ。
仕方ねえだろ!?
あの野郎、途中から急に黒い霧になりやがって、ここまで追っかけるだけでも必死だったんだから!!
……しかし、ここまできたら、あと少しだ。
「手分けして、片っ端から調べりゃいい」
「だな」
***
「それで、この病室を見つけて忍び込んだ、と」
「はい」
「清潔にしてから来いっていったでしょおぉ!」
先生だかいう男が、床を踏み鳴らして怒った。
だけどちっとも怖くないもんで、つい。
「だって、場所が分からなかったんすもん」「わかってりゃ水浴びくらいは出来たんですがね」「そっちが教えてくれないもんだから…なあ」「場所を知ってるだろうあの王子様を追っかけるのに必死で」「そんな時間は無かったであります」「無かったな」「無かったよな」「無かったぞ」
先生だかいう男はさらに怒った。
「口応えしないの!大体君たちは捕虜なんだからさ、うちの国の中で好き勝手したら駄目でしょう!」
怒って正論を吐いたので、つい。
「捕虜、とは?」「捕まった覚えがございませんが、それは」「なんせ帝国の兵隊でもねえし」「残念ながらそういうことなんですなぁ、ハハ」「こっちは残念とも思わんですがねー」「俺らクロエ殿下親衛隊なんで」「そもそも私どもを帝国軍とは認めんと言ったのは軍を統括しているダイイチコータイシの野郎ですから、文句はそちらへ」「ほんと帝国軍は糞」「つまり帝国は肥溜めということだな!」
「「ハハハ!」」
そうしていると、先生だかいう男は、怒りながら譲歩をしてくれる。
「あーもう、うるっさい!ここの一階のお風呂貸してあげるから、さっさと入ってきて!」
うーん、もうちょい何か引き出せそうなんだよな。
というわけで、つい。
「そういえば換えの服が無いであります」「そういうことですから、身ぎれいに、はそもそも無理でしたな」「裸でいいすか」「それは駄目だろ」「せめて手ぬぐいを腰に巻くというのはどうか」「しかしそれでは殿下がお嫌だろうしなぁ」「うーん」「困ったな」「どうしようかな」「服ごと入って洗えばどうか」「天才」「風呂から上がってフクごとフク…ププ」
すると案の定先生はキレながら譲歩した。
「ああーーもう!服ぐらい貸したげるよ!」
おお、そりゃありがたい。
なもんで、俺たちは声を揃えてこう言った。
「ありがとうございます!」
指示通り1階へ降り、風呂場へ向かう。
風呂は割と広くて、無理すれば全員が入れそうだ。
……ウチの大浴場よりは狭いけどな!
でも、殿下は背中の焼印を気にしてるから…
ちっちゃい個人用の風呂があれば良いんだが。
俺たちはこそこそと話し合う。
「殿下が穏やかな寝息を立ててるのも確認したし、目が覚めるまで交代で見張りに来るか」
「部屋の中で世話する係もいるだろ?
殿下の肌を他人に見せたくねえ、特にシモは…」
「そうだな、それに目が覚めたとき知った顔があるのとないのとじゃ、安心感も違うだろうし」
「そうだな」「確かに」「違いねえ」「うむ」
今後の方針は決まった。
「俺たちはここに留まって殿下のお世話をする」
「「異議なし」」
というわけで殿下のいる建物の近くの庭で野営の準備をしていたら、早速先生に見つかってため息をつかれてしまった。
「せめてもう少し端っこでやってよ…」
「はい」
ま、端でも何でもいい。
どうやらここにいる許可は降りたようだからな。
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