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王子様と皇太子殿下 1
皇太子、長い走馬灯を見る 1
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僕は、第2皇太子として帝国に生まれた。
出生も存在も、多少複雑な「皇太子殿下」だ。
僕は元々、行商人の父と母さまの間に出来た子どもだった。
そのまま生まれていれば、僕も行商人になったのかもしれない。
……でも。
妊娠してすぐの、まだ子どもがお腹の中にいると分からないくらいの時の事だ。
母さまの「金色の髪と緑の目」という、帝国人には無い見た目と美しさを気に入った皇帝が、無理やり父から引き離して第2夫人に召し上げた。
父は、お金を貰って消えた…らしい。
本当は殺されたんじゃないかな、と思う。
皇帝は、母さまと父は「白い結婚」だと主張した。
周りもその通りだと賛同した。
大々的に側妃として迎え入れ、祝典まで行い、母さまの逃げ場を奪った。
だけどそのときにはもう…
僕が母さまのお腹の中に、いてしまったんだ。
皇帝は、母さまを召し上げたその日から抱いてやったのだと言っていた。
だからお腹が大きくなった時、これは自分の子が出来たのだと確信したのだ、と。
今度は母さまをこの世に縛り付けておくために、大々的に子どもが出来た事を発表したのだ、と。
そうして自分は産まれてきてしまった。
都合の悪い事に、自分は帝国臣民の色を持っていなかった。
だけど都合の良い事に、その色は母さまと同じ色だった。
帝国臣民と呼ばれる人たちは、全員明るい茶色の髪に青い目をしている。
「金色の髪と緑の目」をした赤子に帝国人らしさは無い。
だが大々的に発表した事に加え、死産とするのは皇帝の子種を否定することだ…という、よく分からない皇帝の言い分がまかり通った。
追従すればいくらでも甘い汁が吸える。
そうやって財を貯め込み、金の無い者に貸して暴利をむさぼり、また財を成す。
それが領地を持たない宮殿貴族の生き方だったから、元々反対する人間など居なかった。
仕方なく自分は第2皇太子として育てられることになった。
帝国臣民の色を持たない僕の扱いは、「予備にもならない皇太子」だった。
それでも、母さまが生きてる間は楽しかった。
広いお城の敷地の隅に与えられた小さな小屋で、小さな菜園で採れる野菜と、庭で飼ってる鶏の卵、時々お城から母さまが貰ってきてくれるパンを食べて暮らした。
それから、母さまがいないときにも寂しくならないように、色んな本が読めるようにって…
国立図書館の司書さんが家庭教師に来るようになって、色んなことを教わって、たくさん本を貸してもらった。
第1皇太子やその取り巻きから虐められる事もあったけど、母さまがいれば甘える事も出来た。
「辛かったわね、頑張ったわね」って、頭をなでて、ぎゅってしてくれて…
そんな暮らしは、母さまが死んで、終わった。
悲しくて、寂しくて、どうしようもなくて…
でも、何とかして一人で、この小屋で暮らしていかなきゃって決意した、母さまの葬儀の日の夜。
僕は皇帝から呼び出された。
「母親が死んだのだから、お前が代わりをしろ」
…何を言われたのかわからないまま、寝所へ連れ込まれて、無理やり脱がされ、縛られ、鞭で打たれながら、汚らしいモノをしゃぶらされて、尻の穴に指をねじ込まれて、広げられて、アレをねじ込まれて、気を失ってる間に、背中に焼印を押された。
…母さまがされていたことを知った。
母さまはパンを貰うために、皇帝の嗜虐趣味に付き合っていたんだって、知った。
この行為の延長上で何かがおきたんだって、わかった。
「かあさま……」
なんてことをしてしまったんだろう。
「また、お城のパンが食べたい」なんて、言わなければ良かった。
僕が、母さまを、死なせた。
パンぐらい自分で作れば良かったのに。
パンがどうやって出来てるかなんて本を読んで知ってたのに、何にもしなかった。
庭の畑を広げて、小麦を植えれば良かった。
そうして小麦が育てられるようになるまで、パンを我慢すれば良かった。
小麦の種くらい城を抜け出して買うことだってできたはずだし、司書さんに頼むこともできたのに。
なんで、なんであんな我儘を…
ぼくは……最低だ。
だから毎日陛下に「ご奉公」させられても、何も言えなかった。
これが自分の罪なんだと、言い聞かせて…
いつかこれで死ぬのだと、
そうやって母さまに償うのだと…
そうすれば、司書さんが教えてくれた「天国」へ…
母さまが待っている天国へ、行けると思った。
ぼくは、ずっと死にたかった。
死んで天国へ行くことだけを夢見ていた。
出生も存在も、多少複雑な「皇太子殿下」だ。
僕は元々、行商人の父と母さまの間に出来た子どもだった。
そのまま生まれていれば、僕も行商人になったのかもしれない。
……でも。
妊娠してすぐの、まだ子どもがお腹の中にいると分からないくらいの時の事だ。
母さまの「金色の髪と緑の目」という、帝国人には無い見た目と美しさを気に入った皇帝が、無理やり父から引き離して第2夫人に召し上げた。
父は、お金を貰って消えた…らしい。
本当は殺されたんじゃないかな、と思う。
皇帝は、母さまと父は「白い結婚」だと主張した。
周りもその通りだと賛同した。
大々的に側妃として迎え入れ、祝典まで行い、母さまの逃げ場を奪った。
だけどそのときにはもう…
僕が母さまのお腹の中に、いてしまったんだ。
皇帝は、母さまを召し上げたその日から抱いてやったのだと言っていた。
だからお腹が大きくなった時、これは自分の子が出来たのだと確信したのだ、と。
今度は母さまをこの世に縛り付けておくために、大々的に子どもが出来た事を発表したのだ、と。
そうして自分は産まれてきてしまった。
都合の悪い事に、自分は帝国臣民の色を持っていなかった。
だけど都合の良い事に、その色は母さまと同じ色だった。
帝国臣民と呼ばれる人たちは、全員明るい茶色の髪に青い目をしている。
「金色の髪と緑の目」をした赤子に帝国人らしさは無い。
だが大々的に発表した事に加え、死産とするのは皇帝の子種を否定することだ…という、よく分からない皇帝の言い分がまかり通った。
追従すればいくらでも甘い汁が吸える。
そうやって財を貯め込み、金の無い者に貸して暴利をむさぼり、また財を成す。
それが領地を持たない宮殿貴族の生き方だったから、元々反対する人間など居なかった。
仕方なく自分は第2皇太子として育てられることになった。
帝国臣民の色を持たない僕の扱いは、「予備にもならない皇太子」だった。
それでも、母さまが生きてる間は楽しかった。
広いお城の敷地の隅に与えられた小さな小屋で、小さな菜園で採れる野菜と、庭で飼ってる鶏の卵、時々お城から母さまが貰ってきてくれるパンを食べて暮らした。
それから、母さまがいないときにも寂しくならないように、色んな本が読めるようにって…
国立図書館の司書さんが家庭教師に来るようになって、色んなことを教わって、たくさん本を貸してもらった。
第1皇太子やその取り巻きから虐められる事もあったけど、母さまがいれば甘える事も出来た。
「辛かったわね、頑張ったわね」って、頭をなでて、ぎゅってしてくれて…
そんな暮らしは、母さまが死んで、終わった。
悲しくて、寂しくて、どうしようもなくて…
でも、何とかして一人で、この小屋で暮らしていかなきゃって決意した、母さまの葬儀の日の夜。
僕は皇帝から呼び出された。
「母親が死んだのだから、お前が代わりをしろ」
…何を言われたのかわからないまま、寝所へ連れ込まれて、無理やり脱がされ、縛られ、鞭で打たれながら、汚らしいモノをしゃぶらされて、尻の穴に指をねじ込まれて、広げられて、アレをねじ込まれて、気を失ってる間に、背中に焼印を押された。
…母さまがされていたことを知った。
母さまはパンを貰うために、皇帝の嗜虐趣味に付き合っていたんだって、知った。
この行為の延長上で何かがおきたんだって、わかった。
「かあさま……」
なんてことをしてしまったんだろう。
「また、お城のパンが食べたい」なんて、言わなければ良かった。
僕が、母さまを、死なせた。
パンぐらい自分で作れば良かったのに。
パンがどうやって出来てるかなんて本を読んで知ってたのに、何にもしなかった。
庭の畑を広げて、小麦を植えれば良かった。
そうして小麦が育てられるようになるまで、パンを我慢すれば良かった。
小麦の種くらい城を抜け出して買うことだってできたはずだし、司書さんに頼むこともできたのに。
なんで、なんであんな我儘を…
ぼくは……最低だ。
だから毎日陛下に「ご奉公」させられても、何も言えなかった。
これが自分の罪なんだと、言い聞かせて…
いつかこれで死ぬのだと、
そうやって母さまに償うのだと…
そうすれば、司書さんが教えてくれた「天国」へ…
母さまが待っている天国へ、行けると思った。
ぼくは、ずっと死にたかった。
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