【完結】どれだけ永く生きてても

紫蘇

文字の大きさ
上 下
8 / 134
王子様と皇太子殿下 1

先生と助手、話し合い、城へ向かう

しおりを挟む
僕の、頼りになる助手にしてかわいい恋人が言う。

「先生、何か王都のほう、ヤバい気がしない?」

僕は返す。

「うん、そうだね」

でも、それだけ。

僕は今までの経験上、こういう「人の」戦争には関わらないでいなきゃならないと思ってるからね。


 ーーーなぜかって?ーーー

僕、普段は人の姿なんだけど、いざとなったら人じゃない姿にもなれるし、今のところ「この世界」の「人間」にはない力も使えてしまうんだ。

とりあえず不老不死だしね。
背中に羽根生やして飛べるしね。
まあ、羽根生やさなくても、転移できるけどね。
あと、割と大きな怪我でも治せちゃうとか?
自分のだけじゃないよ、他の人のもだよ。

それから、スゴいパワーで牛とか馬とかを抱っこできるし、それから、あと、う~ん、まあ他にも色々あるんだけど…今はいいか。

簡単に言うと化物とか怪物とか、そういうやつ。

でもさぁ、そういう言い方ってどうなの?ってなっちゃってさ。
なんかカッコいい言葉を思いつくまで、とりあえず「眷属」って言い方にしてみたんだ。

 ーーーそれでーーー


ぶつくさと頭の中で語る僕に、彼は言う。

「俺、心配なんだけど…ねえ、先生」
「僕は行かないよ。
 また、何かやっちゃったら…困る」

僕は頑なに行かないと言い張る。
僕は戦争に関わっちゃいけないんだ。


 ーーーなぜかって?ーーー

それはね、300年くらい前の事なんだけど。
僕の大切な人たちがまとめて処刑されそうになった事件があってね。
その時、僕は感情やら何やらを暴走させてしまって、大切な人たちをみんな「眷属」にしちゃったんだよね

だから、人が殺されるっていうのは僕にとってとてもショッキングなことだと思うんだよね。
だから、たくさんの殺人があるところへは行かないでいようって事なわけ……

 ーーーそれでーーー


と、そうやって僕が脳内で誰かに言い訳していると、また彼が言う。

「なー先生、行った方が良いって。
 多分あの感じ、エースだろ」

僕は聞かないふりでさらに言い訳を重ねる。

「だって、戦でしょ?
 人がたくさん死ぬんでしょ?
 あの時__・__#と同じ事が起きないとは限らないじゃない」

人を勝手に「眷属」にするわけにはいかないでしょ、常識的に考えて。

それでも彼が更に言う。

「でも、あいつが暴走してもヤバいんでしょ?
 だったら先生と俺で止めに行くしかないじゃん」
「それは……そうなんだけどさ」

王都の方から、「回路」の暴走が起きそうな不穏な気配がするのには気づいてるよ、でも…。

僕がぐるぐると考えていると、また彼が言う。

「なあ、先生、行こう?」
「駄目だよ…僕は行けない」

僕だって反論する。
だからちょっと言い合いになる。

「僕が行って、事態が悪化したらどうする?」
「それでも、あいつの暴走を止められるのは先生しかいないだろ」
「ユーゴだって…親友なんだし、さぁ…」
「一番永く生きてるのは先生だし、眷属のこと一番良く知ってるのも先生じゃないか!」

彼が言う。

「俺だけじゃ無理だ、なあ先生!!」

分かってる、でもあそこは。

「戦場だもん……」
「……先生」

…すぐに止めにいかなきゃまずいのは分かる。
あの場で第3王子エースが暴走したら、今度は何人が巻き込まれるのか分からない。

彼の部下が全員眷属になったら、この国の軍隊は真のリアル不死身の軍隊になっちゃう。
それは「宇宙のほうそくがみだれる」大事件だ。

でも…僕。

「あそこに、行くの…怖いんだもん」

そんなつぶやきを、可愛い恋人はこう切り返す。

「大丈夫、俺がついてるから!」

僕はあっけに取られて……言う。

「何なのその自信…、ふふ」

仕方ない、行こうか。
頼りになる助手が言うんだから。

「ユーゴ、手を握ってて!転移するよ!
 ……せーの!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...