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あの人は今

駄目人間だもの ~ルージュ視点~

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陛下の言葉に項垂れて、カールの言葉にまた項垂れる男を見て思った。
そして思った事を言った。

「はは、シュタインって最低だね」

実家に戻れないからって、いつまでもドグサレ野郎と結婚してた僕はもう悟ったんだ。

我慢して良いことなんか何にもない。
言いたい事は言ったほうがいい。
察して貰えるまで待つなんて馬鹿馬鹿しい。

そしたらシュタインが咎めるみたいに僕を呼ぶ。

「……っ、ルージュさん」

牢屋の中でずっと過去を反省してたシュタイン。

馬鹿だなぁ。
かっこつけてるからそうなるんだよ。

「最初から言えば良かったんだよ。
 気持ちよくしてやるから抱かせろ、って。
 最悪のセックスは最高のセックスでしか癒せない、僕はそう思うけどね」
「ルージュ様…いやに実感こもってません?」

ルース君が僕に聞く。
こういう直截さが大事だと思うんだよね。
いかに遠回しに嫌味を言うかなんてくそくらえだ。

「う~ん、実体験?」
「経験者が語りすぎる!」

はは、変な言い回し…
なるほど、この重い空気をちょっと軽くしようって事ね、何となく分かった。

「でも最高のセックスってなんだろうね?
 結構深い問題だと思うんだ。
 だから、そういう問題に真摯に取り組んでいるトリエステさんと、一緒に働きたいなって」
「えっ、陛下の命令じゃなくて?」
「最初はそうだったけど、打ち合わせで話してるうちに自分からそう思うようになったんだ!
 この歳でもやりたい事ができるなんて嬉しいね。
 ところで、トリエステさんって恋人いる?」
「いやぁ…どうでしたっけね」
「今度執事のリチャードに聞いといてよ」
「下手すりゃ彼氏がリチャードですけどね」
「えー、そうだったら困るな…なーんてね!
 まあ、恋人がいてもいなくてもいいんだ。
 カール殿の言う通りだよ、恋が出来るって、それだけで素敵なことだもん!
 セックスは…まあ、オマケみたいなもんかな?」
「オマケってアナタ」
「だって、あってもなくても恋には関係ないもん」


……可愛そうだから、シュタインの為に最後のセックスを笑って流せるようにしてあげる。

だって、日付が決まってない話は社交辞令、という前提でこの場は回ってるんだ。
ということは、カールの「最後にセックスしよう」って誘いは社交辞令ってこと……

つまり、痛烈な皮肉だ。

かなり貴族的で、恐ろしいお誘い。

笑って断れたら…
最高にカッコつけて終われる。

ただし本気にしてコトに及ぶなら……

さて、どうなるかねぇ。
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