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あの人は今
現主治医には逆らえない
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反省しきりの近衛騎士さんの案内で通された貴族牢にいたのは、本当にあの先生だった。
「ルース殿下、アルファード殿下、どうか私にやり直す機会を与えて下さい」
と牢の中で頭を下げ、
「与えるかどうかはカール殿が決める事だ」
とバッサリ殿下に斬られた。
だけどそれじゃあんまりなので、今の主治医(陛下)に聞いてからになるけど、俺から伯父さんに伝えるから…と事情を聞きだした。
「…約束を、忘れて…」
という導入から始まったその懺悔の内容をざっくりまとめると、
街デートを持ち掛けておいてすっぽかすというまあまあの失態と、伯父さんにヨコシマな思いを抱くようになってしまったことへの謝罪だ。
「先生、意外と駄目人間ですね」
「…返す言葉もない」
まあ、反省して謝りたいっていうんなら良いんだけど、「やり直す」って言葉がどうも引っかかるんだよなあ。
「伯父さんが駄目だって言ったら、すっぱり諦めて帰ってもらいますからね?」
「…はい」
「これは王太子正室としての命令ですからね?」
「…はい」
「破るとそれなりの罰がありますからね?」
「…はい」
うーん、何か不安。
先生を出した後しばらくは、影さんに伯父さんの警護をお願いしておこう。
俺と殿下は貴族牢の棟から出て、ため息をつく。
「まさか追いかけて来るとは…」
「あの男なりに想う所があったのだろう」
「それはそうかもしれませんけど、ちょっと強引すぎやしません?」
伯父さんの逗留場所が王宮だったから良いようなものの、うちの実家だったらもうえらいことよ?
「なんだか危険な香り」
約束はしたものの…気が重い。
***
貴族牢から出て陛下に会う為に執務室へ行く。
執務室は王宮のど真ん中にある建物のこれまたど真ん中だ。
扉の前にいる近衛騎士さんが、俺たちの姿を見てすぐに陛下へ取り次いでくれる。
「父上、失礼致します」
「陛下、お目通り失礼します」
そう言って部屋の中に入ると、陛下はわざわざ立ち上がって俺たちを迎えてくれた。
そうして、ニコニコとソファに座るよう促して下さってから言った。
「ルース君、アルファード、おめでとう!
ご懐妊だって?」
「はい、まだ生まれるまで気が抜けませんが…」
昨日の診断は陛下にも速やかに伝えられているらしい…お慶び頂けて何よりだ。
「ところで、伯父の元主治医の件ですが」
「ああ、それはもう知っているよ。
彼とカール殿を一緒に街へ行かせても良いかどうか、だろう?」
「はい」
どうやら陛下にはちゃんと報告されていたらしい。
説明しなくて良いと気を抜いた俺に、陛下は言う。
「一度疑似デートをさせた上で考えたいかな…
デート自体に憧れてるんだったらそれで解消できるし、すでにデートに興味が無くなっていても気分転換にはなるだろう?
その上で、心残りがありそうなら、まだ、その主治医に気持ちが残ってるって事だ」
陛下はそう言った後、部屋の外にいた騎士さんを呼び出し、サラサラとメモを書きつけて渡した。
それから言った。
「さて、デートは明日だ。
私も今の主治医として、後ろからそっと見守りに行くとしよう」
「ありがとうございま……えっ?」
な、何を仰っておられるのかな?
だがやや錯乱気味の俺を後目に、陛下と殿下がそのまま話を進めてしまう。
「何、身重の君に負担は掛けられないだろう?
それに緊急時に何があっても対応できるし」
「ええ、父上になら安心してお任せできます」
「いやいやいやいや」
警備が!
警備が急に大騒ぎに!?
「心配ないよルース君。
私の伴侶は強いから…ねえアルファード?」
「はい、お父様の剣の腕は皆の知るところかと」
「しかもダブルデート!?」
やばい、何か大事になってきた…!
どうしよ!!?
「ルース殿下、アルファード殿下、どうか私にやり直す機会を与えて下さい」
と牢の中で頭を下げ、
「与えるかどうかはカール殿が決める事だ」
とバッサリ殿下に斬られた。
だけどそれじゃあんまりなので、今の主治医(陛下)に聞いてからになるけど、俺から伯父さんに伝えるから…と事情を聞きだした。
「…約束を、忘れて…」
という導入から始まったその懺悔の内容をざっくりまとめると、
街デートを持ち掛けておいてすっぽかすというまあまあの失態と、伯父さんにヨコシマな思いを抱くようになってしまったことへの謝罪だ。
「先生、意外と駄目人間ですね」
「…返す言葉もない」
まあ、反省して謝りたいっていうんなら良いんだけど、「やり直す」って言葉がどうも引っかかるんだよなあ。
「伯父さんが駄目だって言ったら、すっぱり諦めて帰ってもらいますからね?」
「…はい」
「これは王太子正室としての命令ですからね?」
「…はい」
「破るとそれなりの罰がありますからね?」
「…はい」
うーん、何か不安。
先生を出した後しばらくは、影さんに伯父さんの警護をお願いしておこう。
俺と殿下は貴族牢の棟から出て、ため息をつく。
「まさか追いかけて来るとは…」
「あの男なりに想う所があったのだろう」
「それはそうかもしれませんけど、ちょっと強引すぎやしません?」
伯父さんの逗留場所が王宮だったから良いようなものの、うちの実家だったらもうえらいことよ?
「なんだか危険な香り」
約束はしたものの…気が重い。
***
貴族牢から出て陛下に会う為に執務室へ行く。
執務室は王宮のど真ん中にある建物のこれまたど真ん中だ。
扉の前にいる近衛騎士さんが、俺たちの姿を見てすぐに陛下へ取り次いでくれる。
「父上、失礼致します」
「陛下、お目通り失礼します」
そう言って部屋の中に入ると、陛下はわざわざ立ち上がって俺たちを迎えてくれた。
そうして、ニコニコとソファに座るよう促して下さってから言った。
「ルース君、アルファード、おめでとう!
ご懐妊だって?」
「はい、まだ生まれるまで気が抜けませんが…」
昨日の診断は陛下にも速やかに伝えられているらしい…お慶び頂けて何よりだ。
「ところで、伯父の元主治医の件ですが」
「ああ、それはもう知っているよ。
彼とカール殿を一緒に街へ行かせても良いかどうか、だろう?」
「はい」
どうやら陛下にはちゃんと報告されていたらしい。
説明しなくて良いと気を抜いた俺に、陛下は言う。
「一度疑似デートをさせた上で考えたいかな…
デート自体に憧れてるんだったらそれで解消できるし、すでにデートに興味が無くなっていても気分転換にはなるだろう?
その上で、心残りがありそうなら、まだ、その主治医に気持ちが残ってるって事だ」
陛下はそう言った後、部屋の外にいた騎士さんを呼び出し、サラサラとメモを書きつけて渡した。
それから言った。
「さて、デートは明日だ。
私も今の主治医として、後ろからそっと見守りに行くとしよう」
「ありがとうございま……えっ?」
な、何を仰っておられるのかな?
だがやや錯乱気味の俺を後目に、陛下と殿下がそのまま話を進めてしまう。
「何、身重の君に負担は掛けられないだろう?
それに緊急時に何があっても対応できるし」
「ええ、父上になら安心してお任せできます」
「いやいやいやいや」
警備が!
警備が急に大騒ぎに!?
「心配ないよルース君。
私の伴侶は強いから…ねえアルファード?」
「はい、お父様の剣の腕は皆の知るところかと」
「しかもダブルデート!?」
やばい、何か大事になってきた…!
どうしよ!!?
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