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新婚旅行
新婚さんと傷心さん
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5日間の海辺のバカンスが終わり、次の視察地へ。
「…良かったんですかね、これで」
俺たちの新婚旅行兼視察旅行には、同行者が一人増えていた。
カール伯父さんだ。
「ああ、そうだな。
これ以上あの男と一緒にいたところで意味はあるまい。
魔法による治療に切り替える以上はお前と俺で面倒を見た方が良いだろう」
伯父さんはセリンセ商会の馬車で、御者さんの隣に座っている。
商会の人があれは何だとか案内してくれて、それなりに楽しそうにしているようだけど…
「…でも、伯父さん、先生の事…」
「ふん、あれは医者として優秀かもしれんが、人間としてはろくでなしの部類だ。
無意識に他人の恋心を弄ぶような奴より、うちのジジイの方がまだましだ」
殿下の、先生に対する評価は相当低い。
王家に来た報告の内容を俺に知らせないあたり、何かとんでもない情報を持っているのかもしれないな。
俺がゴシップ記事にショックを受けて倒れてから、そういうとこちょっと過保護だから…。
殿下はやや怒り気味に言った。
「カール殿の為に療養所を探し、退院できるまで何年でも入院費を払うと決めたのはうちのジジイだ。
自分の為に何かをしてくれた者を好きになるんだったら、そっちでも良いだろうが」
そりゃまあそうかもしれないけど…
そんな殿下の言い分に、俺は疑問を呈した。
「…1つ、聞いて良いですか?」
「うむ」
「おじいちゃん先生、カール伯父さんの事が好きだったりするんですか?」
「さあ?」
「さあ…って、んな無責任な」
馬車は海沿いの街道をカタカタと走る。
闇魔法を連日使っているせいで、殿下はちょっとお疲れ気味だ。
のんびり外の景色を楽しみながら進もう。
次の目的地は、大小の漁港が点在するあの領だ。
海の幸をアピールするために「スリミオアゲタン(=さつま揚げ)」で王都に殴り込みをかけようとしている…
それだけではいくらなんでも戦えまい。
何か他に観光の目玉になるものを見つけられたらいいんだけどな。
俺は結婚披露宴で渡された漁獲に関する資料を眺めながら考える。
「うーん…光物が多いのがな…。
お土産にするなら干物か瓶詰…、だけどローズはパン食だし…。
せめてパスタ…出来れば米…。
もっと現地で楽しめる事…観光漁船…釣り堀もありかな…あと朝市とか…うーん…」
漁港の資料しかないからなあ。
もうちょっと農産物のデータがあれば…
「また仕事か?ルース」
「そうですね…王都から観光客を呼ぶとして、馬車で10日…ルート上の領地とタッグを組んで飽きさせない工夫を…行きと帰りでルートを変えられたら…
うーん、乗合馬車の路線図がいるなあ」
セリンセ商会の乗合馬車は、ローズ全土に広がっている。
乗り継いで行けば辺境領にだって行ける。
問題は乗り継ぎの待ち時間と宿泊場所…
「道の駅…」
「ミチノエキ?」
「民泊…いっそグランピング…」
「ミンパク?グランピング?」
自分で馬車を借りて行く?
でも馬の扱いなんてそうそう出来るもんじゃ…
「運転免許…」
「免許?」
あ、いかん。
異世界知識ばっかりだ。
この世界に合わせて考えないと…。
「難しいですね、地域活性化って」
「…そうだな」
まずは国内のお金を回さないと。
もっと個人預金を活用できれば…
「個人投資…株式…」
「かぶしき…?」
馬車はどんどん進んでいく。
気が付けばいつの間にか、今日の宿泊場所だ。
「魚…DHA…健康食品…」
「…よく分からんが、そろそろ晩餐会だぞ」
「あっ、はーい」
仕方ない、分からない事は領主さんに聞こう。
俺は急いで夜会用の衣装に着替え、殿下のエスコートでパーティー会場へ向かうのであった。
「…良かったんですかね、これで」
俺たちの新婚旅行兼視察旅行には、同行者が一人増えていた。
カール伯父さんだ。
「ああ、そうだな。
これ以上あの男と一緒にいたところで意味はあるまい。
魔法による治療に切り替える以上はお前と俺で面倒を見た方が良いだろう」
伯父さんはセリンセ商会の馬車で、御者さんの隣に座っている。
商会の人があれは何だとか案内してくれて、それなりに楽しそうにしているようだけど…
「…でも、伯父さん、先生の事…」
「ふん、あれは医者として優秀かもしれんが、人間としてはろくでなしの部類だ。
無意識に他人の恋心を弄ぶような奴より、うちのジジイの方がまだましだ」
殿下の、先生に対する評価は相当低い。
王家に来た報告の内容を俺に知らせないあたり、何かとんでもない情報を持っているのかもしれないな。
俺がゴシップ記事にショックを受けて倒れてから、そういうとこちょっと過保護だから…。
殿下はやや怒り気味に言った。
「カール殿の為に療養所を探し、退院できるまで何年でも入院費を払うと決めたのはうちのジジイだ。
自分の為に何かをしてくれた者を好きになるんだったら、そっちでも良いだろうが」
そりゃまあそうかもしれないけど…
そんな殿下の言い分に、俺は疑問を呈した。
「…1つ、聞いて良いですか?」
「うむ」
「おじいちゃん先生、カール伯父さんの事が好きだったりするんですか?」
「さあ?」
「さあ…って、んな無責任な」
馬車は海沿いの街道をカタカタと走る。
闇魔法を連日使っているせいで、殿下はちょっとお疲れ気味だ。
のんびり外の景色を楽しみながら進もう。
次の目的地は、大小の漁港が点在するあの領だ。
海の幸をアピールするために「スリミオアゲタン(=さつま揚げ)」で王都に殴り込みをかけようとしている…
それだけではいくらなんでも戦えまい。
何か他に観光の目玉になるものを見つけられたらいいんだけどな。
俺は結婚披露宴で渡された漁獲に関する資料を眺めながら考える。
「うーん…光物が多いのがな…。
お土産にするなら干物か瓶詰…、だけどローズはパン食だし…。
せめてパスタ…出来れば米…。
もっと現地で楽しめる事…観光漁船…釣り堀もありかな…あと朝市とか…うーん…」
漁港の資料しかないからなあ。
もうちょっと農産物のデータがあれば…
「また仕事か?ルース」
「そうですね…王都から観光客を呼ぶとして、馬車で10日…ルート上の領地とタッグを組んで飽きさせない工夫を…行きと帰りでルートを変えられたら…
うーん、乗合馬車の路線図がいるなあ」
セリンセ商会の乗合馬車は、ローズ全土に広がっている。
乗り継いで行けば辺境領にだって行ける。
問題は乗り継ぎの待ち時間と宿泊場所…
「道の駅…」
「ミチノエキ?」
「民泊…いっそグランピング…」
「ミンパク?グランピング?」
自分で馬車を借りて行く?
でも馬の扱いなんてそうそう出来るもんじゃ…
「運転免許…」
「免許?」
あ、いかん。
異世界知識ばっかりだ。
この世界に合わせて考えないと…。
「難しいですね、地域活性化って」
「…そうだな」
まずは国内のお金を回さないと。
もっと個人預金を活用できれば…
「個人投資…株式…」
「かぶしき…?」
馬車はどんどん進んでいく。
気が付けばいつの間にか、今日の宿泊場所だ。
「魚…DHA…健康食品…」
「…よく分からんが、そろそろ晩餐会だぞ」
「あっ、はーい」
仕方ない、分からない事は領主さんに聞こう。
俺は急いで夜会用の衣装に着替え、殿下のエスコートでパーティー会場へ向かうのであった。
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