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新婚旅行
【幕間1】馬が結ぶ恋 ~ウィン兄視点~
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俺とディーは双子で産まれた。
産まれて1年も経たないうちに馬と触れ合いはじめ、5歳になる頃には1人で馬に乗れるようになった。
馬は生まれて半年になると鞍を付けて人のいう事を聞くように調教を始める。
誰でも乗せて走れるようにするにはそこから3年ほどかかる。
毎日馬に触れて暮らしているうちに、何となく馬の気持ちが分かる様になる…
アナガリス家の人間なら当然の事だ。
馬は大事な収入源だけど、それ以上に大切なもの。
だから馬を大切に考えられる人間でないと好きにはなれない。
ルーだって、馬を大切にする人間だ。
えらいね、かわいいね、がんばってるね…って、良く話しかけている。
というか、実際魔法を使って馬と話ができる。
馬となら会話できそうってどこで思ったんだろう…
不思議だ。
ま、馬好きじゃなきゃそんな発想は出ないよな。
だから俺たちはルーが好きになったんだ。
だけど……。
「ただ、ルーは馬に乗れないんだよなあ」
「何でだろうね、不思議だよね」
馬にお情けで運んで貰っている…って感じ?
それはそれで良いのかもしれないけどね。
今回、そんなルーの護衛も兼ねて家へ里帰りすることになった。
ん?アルファードはって?
そんなん自分でやればいいじゃん。
剣だって使えるんだしさ。
とは言いつつも側近の仕事はちゃんとやるよ?
スケジュール管理と書類整理程度だけどな。
***
出発前、ルーが俺たちの所へ挨拶に来た。
「ウィン兄、ディー兄、宜しくお願いします!」
「任せとけ!」
「ま、うちの実家までだけどね~」
一緒に行くのは護衛のトルセンとアレク、セリンセ商会の数人とモロー、それから御者に扮したルーの「影」。
俺たちに挨拶した後、ルーは他の皆にも挨拶する。
「モロー君、今回もよろしくね」
「任せて下さい、何でも運びますよ!」
「商会の皆さんも、宜しくお願いします」
「「かしこまりました」」
相変わらずルーは御者が自分の「影」だって気づいてないみたい。
面白いなあ。
そんなルーを見ながら苦笑いしていると、モローも俺とディーの所へ寄って来て挨拶してくれる。
「ウィンさん、ディーさん、道中の警護と馬の事、よろしくお願いします!」
「こっちこそよろしくな、モロー」
「実家までの間だけどよろしくな!」
元気いっぱいで溌剌と挨拶するモロー。
可愛い。
…モローの身長はルーよりちょっと高め。
そんでもって割とガタイは良くて…子熊っぽい感じ?
笑顔も人懐っこいし、愛嬌あるし。
ま、ルーに「宜しく」とだけ言われるあたり、ただの子熊ちゃんじゃない事は分かるけどね。
ルーは、「できる」って分かってる相手にだけ躊躇なく仕事を丸投げする。
そしてそういう奴らは大抵が出世する…王宮で働く連中の中では半分ジンクスみたいになってるんだ。
ま、当然ながら俺たちもその「宜しくとだけ言われる」グループに入ってんだけどな!へへ!
…それはさておき、俺もディーも、実は最近モローの事が気に入ってる。
物を運ぶために馬を沢山飼ってるっていうのもあって、馬が疲れない乗り方とか馬車の引かせ方とか、結構研究熱心なんだ。
馬の為に最新の魔道具を揃えるくらい馬を大事にしてるし…
何度も言うけど、可愛いしね。
実は密かに狙ってるんだけどさ…問題は俺とディーの好みが全く一緒ってとこだよな。
ま、ルーの時みたいに2人で同時に付き合わないかって口説いても良いんだけど…
モローってそういうとこ古風っぽいんだよなあ。
俺とディー、どっちか1人選ぶとしたらどっちを選ぶんだろ?
どっちも選ばないって可能性もあるけどさ。
んー、難しい…。
「まあ、考えても仕方ないか」
取り敢えず目の前のやるべき事をやる…
モローは仕事の出来ない男を好きになるようなやつじゃないだろうからな。
「行くかディー」
「おう」
実家までは一緒だし、話すこともあるだろ。
俺もディーに負けないように頑張らなきゃな!
産まれて1年も経たないうちに馬と触れ合いはじめ、5歳になる頃には1人で馬に乗れるようになった。
馬は生まれて半年になると鞍を付けて人のいう事を聞くように調教を始める。
誰でも乗せて走れるようにするにはそこから3年ほどかかる。
毎日馬に触れて暮らしているうちに、何となく馬の気持ちが分かる様になる…
アナガリス家の人間なら当然の事だ。
馬は大事な収入源だけど、それ以上に大切なもの。
だから馬を大切に考えられる人間でないと好きにはなれない。
ルーだって、馬を大切にする人間だ。
えらいね、かわいいね、がんばってるね…って、良く話しかけている。
というか、実際魔法を使って馬と話ができる。
馬となら会話できそうってどこで思ったんだろう…
不思議だ。
ま、馬好きじゃなきゃそんな発想は出ないよな。
だから俺たちはルーが好きになったんだ。
だけど……。
「ただ、ルーは馬に乗れないんだよなあ」
「何でだろうね、不思議だよね」
馬にお情けで運んで貰っている…って感じ?
それはそれで良いのかもしれないけどね。
今回、そんなルーの護衛も兼ねて家へ里帰りすることになった。
ん?アルファードはって?
そんなん自分でやればいいじゃん。
剣だって使えるんだしさ。
とは言いつつも側近の仕事はちゃんとやるよ?
スケジュール管理と書類整理程度だけどな。
***
出発前、ルーが俺たちの所へ挨拶に来た。
「ウィン兄、ディー兄、宜しくお願いします!」
「任せとけ!」
「ま、うちの実家までだけどね~」
一緒に行くのは護衛のトルセンとアレク、セリンセ商会の数人とモロー、それから御者に扮したルーの「影」。
俺たちに挨拶した後、ルーは他の皆にも挨拶する。
「モロー君、今回もよろしくね」
「任せて下さい、何でも運びますよ!」
「商会の皆さんも、宜しくお願いします」
「「かしこまりました」」
相変わらずルーは御者が自分の「影」だって気づいてないみたい。
面白いなあ。
そんなルーを見ながら苦笑いしていると、モローも俺とディーの所へ寄って来て挨拶してくれる。
「ウィンさん、ディーさん、道中の警護と馬の事、よろしくお願いします!」
「こっちこそよろしくな、モロー」
「実家までの間だけどよろしくな!」
元気いっぱいで溌剌と挨拶するモロー。
可愛い。
…モローの身長はルーよりちょっと高め。
そんでもって割とガタイは良くて…子熊っぽい感じ?
笑顔も人懐っこいし、愛嬌あるし。
ま、ルーに「宜しく」とだけ言われるあたり、ただの子熊ちゃんじゃない事は分かるけどね。
ルーは、「できる」って分かってる相手にだけ躊躇なく仕事を丸投げする。
そしてそういう奴らは大抵が出世する…王宮で働く連中の中では半分ジンクスみたいになってるんだ。
ま、当然ながら俺たちもその「宜しくとだけ言われる」グループに入ってんだけどな!へへ!
…それはさておき、俺もディーも、実は最近モローの事が気に入ってる。
物を運ぶために馬を沢山飼ってるっていうのもあって、馬が疲れない乗り方とか馬車の引かせ方とか、結構研究熱心なんだ。
馬の為に最新の魔道具を揃えるくらい馬を大事にしてるし…
何度も言うけど、可愛いしね。
実は密かに狙ってるんだけどさ…問題は俺とディーの好みが全く一緒ってとこだよな。
ま、ルーの時みたいに2人で同時に付き合わないかって口説いても良いんだけど…
モローってそういうとこ古風っぽいんだよなあ。
俺とディー、どっちか1人選ぶとしたらどっちを選ぶんだろ?
どっちも選ばないって可能性もあるけどさ。
んー、難しい…。
「まあ、考えても仕方ないか」
取り敢えず目の前のやるべき事をやる…
モローは仕事の出来ない男を好きになるようなやつじゃないだろうからな。
「行くかディー」
「おう」
実家までは一緒だし、話すこともあるだろ。
俺もディーに負けないように頑張らなきゃな!
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