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新婚旅行
浮足立つ出発 ※微
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卒業式&卒業パーティーが終わった次の日、俺と殿下は学園から直接視察旅行に出る事にした。
いちいち王宮へ戻るよりこっちのほうがウィン兄・ディー兄の実家に近いのだ。
ま、たった1日分だけの話なんだけど…。
アナガリス領はさすが辺境と名前がついてるだけの事はあって、北の国境沿いにある。
領の一番南の街まで大体学園から馬車で15日くらい、領主邸まではさらに5日くらい掛かる。
休み休み行くからとはいえ、めっちゃ遠い。
ちなみに、アナガリス領の西側がケルベラ辺境領、東が正室陛下の出身地であるエランティス辺境領だ。
予定ではエランティスから回って、最後アナガリス領の一つ手前の街でウィン兄・ディー兄と合流して王宮へ戻る予定になっている。
生まれて初めての長旅にテンションが上がっている俺は、いつもよりだいぶ大きなトランクと荷物をパンパンに物を詰めた紙袋3つを持って馬車が待つ正門へ向かった。
殿下が言った。
「ルース、随分大荷物だな」
「へへ…だって楽しみだったんですもん!」
パンツと肌着はもしもの事も考えて10枚、靴下は15足に買い足して、後はノートとペンとインクを購買で買えるだけ買って、あとは…
「その紙袋は何だ?」
「妊娠・育児中にお茶の調合なんて無理という声を受けて、ついにハーブティーのティーバッグを発売することになりましてですね、イドラ君とシーマさんが全国の妊パパにPRしてきてって言うから、いっぱい持って来ました」
「そ…そうか」
「あと、ついにMDMとBro.が全国ツアーに出るからそのチラシを配ってくれってダンピエラ男爵から頼まれたのと、ノースさんがシャラパール観光のパンフ作ったんでそれと、各大学から来てた質問状の回答を作ってきたのと、論文の感想と、まだ読めてない本と…」
中身を説明すると、殿下が呆れたように言った。
「紙と茶しか無いのか?」
「いえいえ、ちゃんと服もありますよ!
一応ダンジョンに行くかもしれないので作業着と、普段用のズボンとシャツ、パジャマ、タキシード…
ところで、殿下の荷物は?」
「ああ、そっちの馬車に積んでいるが?」
「…えっ」
殿下の視線の先を見ると、そこには大きな馬車が3台。
御者台にはモロー君とセリンセ商会の人たち…
「ええええ!?」
「婚姻祝いの返礼品が殆どだがな」
「あっ、なるほど…そういう事か」
さすが王族、そつがない。
はぁ…なんだかなあ。
「…駄目だな、俺。
そういうの全然気が回らなかった…」
「気にすることではない。
こういった事は王宮の儀礼式典係がするものだ」
うん、まあ、それは分かってるんだけどさ。
礼儀がなってないみたいで何か嫌じゃん…
申し訳ないっていうかさ。
「…なんか、はしゃいじゃって恥ずかしい」
「いいじゃないか。
新婚旅行なんだから好きなだけはしゃげばいい…
楽しそうなお前を見るのは、俺も嬉しい」
「…うん」
しょんぼりしている俺の頭を撫でながら、殿下は続けた。
「視察の準備は万端なんだろう?
自分の仕事が出来ているならそれで良い。
返礼品の手配までお前がやるようになったら儀礼式典係は首になるし、俺との時間も減る。
良い事など何も無い」
「…うん」
確かに、全部自分でしてたらいくら時間があってもたりないもんな…
毎度クリパの手土産で怒られてるし。
「王宮に戻ったら儀礼式典係に礼でも言えば良い。
自分の仕事を褒められるのは誰でも嬉しいし、土産でも持っていってやれば余計に喜ぶだろう。
人を使うというのはそういうことだ」
「そっか……うん、そうだね」
俺、人を使うのにまだ慣れないからなあ…
言わなくてもしてくれる人なんて、執事リチャードか元庭師トリエステかイドラ君かアレクさん…
うん、結構いたな。
そういうことか。
「分かったのなら良い」
楽しい旅行にしよう、と殿下が言って、いつもの特製馬車に乗り込む。
俺のトランクも一緒に積み込む。
扉を閉じたら、キスをする。
「俺もお前との旅行を楽しみにしていたんだぞ?」
「本当?」
「ようやくお前を独り占めできるからな」
「……んもう」
靴を脱いで、室内をフルフラットにして、2人で寝ころぶ。
するとアルがすぐさま俺に言う。
「ルース、服に皺が出来てもいかん。
上着もスラックスも脱いでおけ」
「うん、そう思って部屋着買ったんだ~」
「ねやぎ?」
「へやぎ!」
アルったら頭の中エロばっかになってるじゃん。
駄目だなあ。
俺は買ったばかりの部屋着を着てみせる。
「ほら、これ、このモコふわ感が最高なの!
冬物が特価になってて安かったんだ~!」
「ほう…これはなかなか…」
「へへ…いっぱいさわっていーよ?」
「!!?」
駄目って言っても触るんだし、だったら逆にこっちから良いよって言ってしまおう。
そのほうがきっとアルも喜ぶし…
新婚さんだもん。
誰も見てないとこでちょっと羽目を外すくらい…
「ちょっ、アル!
いきなり何してるのっ!?」
「ムラムラした、今すぐ挿れたい」
「や、駄目ったら、そこ洗ってないからっ」
「大丈夫だ、その為の魔道具も持ってきた」
「…は?あっ、やっ!?」
ほんまにもう!
そんなんまで準備万端なん、なんなん!?
いちいち王宮へ戻るよりこっちのほうがウィン兄・ディー兄の実家に近いのだ。
ま、たった1日分だけの話なんだけど…。
アナガリス領はさすが辺境と名前がついてるだけの事はあって、北の国境沿いにある。
領の一番南の街まで大体学園から馬車で15日くらい、領主邸まではさらに5日くらい掛かる。
休み休み行くからとはいえ、めっちゃ遠い。
ちなみに、アナガリス領の西側がケルベラ辺境領、東が正室陛下の出身地であるエランティス辺境領だ。
予定ではエランティスから回って、最後アナガリス領の一つ手前の街でウィン兄・ディー兄と合流して王宮へ戻る予定になっている。
生まれて初めての長旅にテンションが上がっている俺は、いつもよりだいぶ大きなトランクと荷物をパンパンに物を詰めた紙袋3つを持って馬車が待つ正門へ向かった。
殿下が言った。
「ルース、随分大荷物だな」
「へへ…だって楽しみだったんですもん!」
パンツと肌着はもしもの事も考えて10枚、靴下は15足に買い足して、後はノートとペンとインクを購買で買えるだけ買って、あとは…
「その紙袋は何だ?」
「妊娠・育児中にお茶の調合なんて無理という声を受けて、ついにハーブティーのティーバッグを発売することになりましてですね、イドラ君とシーマさんが全国の妊パパにPRしてきてって言うから、いっぱい持って来ました」
「そ…そうか」
「あと、ついにMDMとBro.が全国ツアーに出るからそのチラシを配ってくれってダンピエラ男爵から頼まれたのと、ノースさんがシャラパール観光のパンフ作ったんでそれと、各大学から来てた質問状の回答を作ってきたのと、論文の感想と、まだ読めてない本と…」
中身を説明すると、殿下が呆れたように言った。
「紙と茶しか無いのか?」
「いえいえ、ちゃんと服もありますよ!
一応ダンジョンに行くかもしれないので作業着と、普段用のズボンとシャツ、パジャマ、タキシード…
ところで、殿下の荷物は?」
「ああ、そっちの馬車に積んでいるが?」
「…えっ」
殿下の視線の先を見ると、そこには大きな馬車が3台。
御者台にはモロー君とセリンセ商会の人たち…
「ええええ!?」
「婚姻祝いの返礼品が殆どだがな」
「あっ、なるほど…そういう事か」
さすが王族、そつがない。
はぁ…なんだかなあ。
「…駄目だな、俺。
そういうの全然気が回らなかった…」
「気にすることではない。
こういった事は王宮の儀礼式典係がするものだ」
うん、まあ、それは分かってるんだけどさ。
礼儀がなってないみたいで何か嫌じゃん…
申し訳ないっていうかさ。
「…なんか、はしゃいじゃって恥ずかしい」
「いいじゃないか。
新婚旅行なんだから好きなだけはしゃげばいい…
楽しそうなお前を見るのは、俺も嬉しい」
「…うん」
しょんぼりしている俺の頭を撫でながら、殿下は続けた。
「視察の準備は万端なんだろう?
自分の仕事が出来ているならそれで良い。
返礼品の手配までお前がやるようになったら儀礼式典係は首になるし、俺との時間も減る。
良い事など何も無い」
「…うん」
確かに、全部自分でしてたらいくら時間があってもたりないもんな…
毎度クリパの手土産で怒られてるし。
「王宮に戻ったら儀礼式典係に礼でも言えば良い。
自分の仕事を褒められるのは誰でも嬉しいし、土産でも持っていってやれば余計に喜ぶだろう。
人を使うというのはそういうことだ」
「そっか……うん、そうだね」
俺、人を使うのにまだ慣れないからなあ…
言わなくてもしてくれる人なんて、執事リチャードか元庭師トリエステかイドラ君かアレクさん…
うん、結構いたな。
そういうことか。
「分かったのなら良い」
楽しい旅行にしよう、と殿下が言って、いつもの特製馬車に乗り込む。
俺のトランクも一緒に積み込む。
扉を閉じたら、キスをする。
「俺もお前との旅行を楽しみにしていたんだぞ?」
「本当?」
「ようやくお前を独り占めできるからな」
「……んもう」
靴を脱いで、室内をフルフラットにして、2人で寝ころぶ。
するとアルがすぐさま俺に言う。
「ルース、服に皺が出来てもいかん。
上着もスラックスも脱いでおけ」
「うん、そう思って部屋着買ったんだ~」
「ねやぎ?」
「へやぎ!」
アルったら頭の中エロばっかになってるじゃん。
駄目だなあ。
俺は買ったばかりの部屋着を着てみせる。
「ほら、これ、このモコふわ感が最高なの!
冬物が特価になってて安かったんだ~!」
「ほう…これはなかなか…」
「へへ…いっぱいさわっていーよ?」
「!!?」
駄目って言っても触るんだし、だったら逆にこっちから良いよって言ってしまおう。
そのほうがきっとアルも喜ぶし…
新婚さんだもん。
誰も見てないとこでちょっと羽目を外すくらい…
「ちょっ、アル!
いきなり何してるのっ!?」
「ムラムラした、今すぐ挿れたい」
「や、駄目ったら、そこ洗ってないからっ」
「大丈夫だ、その為の魔道具も持ってきた」
「…は?あっ、やっ!?」
ほんまにもう!
そんなんまで準備万端なん、なんなん!?
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