上 下
478 / 586
学園6年目

早朝、襲撃アリ

しおりを挟む
ドンドンドンドン
「ルーーースサマーーー!!」
ドンドンドンドン
「ルーーースサマーーー!!」

「ふえっ!?」
「…何だ騒がしい」

まだ日も出てないじゃん。
何事?襲撃か何か?
俺はシーツを被ってそっと扉を…

「式典の準備を致しますよ!」
「はあぁ!?」

そこにいたのは王宮美容部の部長だった。
なぜか部下が担架を持って後ろに控えている…

「あっ、殿下はそのままお休みください!
 ルース様は式典前ので御座います。
 すぐに湯殿へ参りますよ!」
「えー!今からぁ!?」
「当然です!一度ご実家へ戻って頂かなくてはなりませんからね、さあ参りますよ!!」
「「はい!!」」
「殿下、ルース様をお運びするのはこちらの担架で行います、ご安心を!」
「うむ」
「へあっ、えっ」

というわけで、俺は担架で式典当日未明に王宮美容部に連行され、2時間のエステを受けるはめに…

「わざわざこんな早朝からしなくても…」
「お黙りくださいませ!」
「肘と膝がカサカサではありませんか!」
「お体を洗う時は泡で撫でる様にお洗いくださいと申しましたのに、布でゴシゴシしたでしょう!?」
「なっ、なんでそれをっ」
「肌を見れば分かりますっ!」

だって泡で撫でただけなんか綺麗になった気せーへんやん!!
擦ってなんぼやろ!?
なんでや!!

***

よう分らん液体を塗りこまれたり揉みこまれたりしながらエステは終了。

遅れて湯殿にやってきた殿下は俺の肌を見てご満悦だ。

「ぷるぷるになったな…ふふ」

さっそく俺の太ももに触ろうとする殿下。
すると美容部からお𠮟りが飛ぶ。

「駄目ですよ殿下!おさわり厳禁です!」
「なっ…」

愕然とする殿下。
その殿下を放置して美容部長は俺に宣言する。

「初夜の前にもきっちり磨きますからね!
 いいですねルース様!!」
「は…はい…」
「殿下もそれまでお待ちくださいね!?」
「う…うむ」

有無を言わさぬ美容部長の気迫に、俺も殿下もたじたじ…
と、そこへ。

「磨き終わりましたか?」
「はい!」
「それではヘアセット入ります」
「うえええ」
「つべこべ言わずに行きますよ、担架!」
「「はい!!」」

俺はまたも担架に乗せられて、今度は王宮へ移動。

「なんでこんな移動が多、」
「殿下の離れの1階がカフェになったからです!」
「後宮…補佐局を使うのではいかんのか?」
「あっちのヘアメイク室は満員です!」

鬼気迫る様子の美容部員たちに気圧されながら運ばれた先は王宮衣装部…

「立太子式用の衣装ください!」
「はい!」
「殿下もそろそろお着替えですよ!」
「うむ」
「そういえば殿下、エステは…」
「殿下にエステは必要ありませんよ?」
「肌を見せるような衣装は着ませんから…」
「ああ、なるほ…えっ?」

待って待って待って!?

それって俺の衣装が露出多めって事じゃ…

なんでよ!!

***

髪にもあれこれ塗り込まれた後、今までした事もなかったふんわりオールバックになった俺。

「あの、このひとふさだけ出てるこれは…」
「それが大事なのです」
「絶対に触らないでください!」

そして青の貴族服…思ったよりシンプルな見た目。

「袖のレースはオフホワイト、ジュストコールとブリーチズの刺繍は同系色でまとめ、カフスとクラバット留めをゴールドに…」
「やはりレースは純白よりこちらのほうが良いな」
「婚礼衣装もオフホワイトを中心に青と金をポイントで使用する形で……」
「うむ」

またも殿下はご満悦。
どうやら自分の色が入った衣装を俺が着ているのが良いらしい…意外とロマンチストだからな。

「殿下、ご朝食をお持ちしました」
「うむ」

殿下の前には一口サイズのサンドイッチ…

「あれ?俺の分は…」
「馬車の中でお召し上がりください!
 ご実家までお送り致します!!」
「へっ!?あ、ええ!?」
「殿下が御実家へ迎えに上がるまで時間がありません!早く!!」
「あああああ」

何でわざわざ実家?
こっから一緒じゃ駄目なの?

「そういう儀式でございます」
「つべこべ言わず急いで!!」

どうやらそういうものらしい。
そんなの打ち合わせの時に言ってたっけ…。

「当たり前すぎて言い忘れました」
「結婚前に同棲されるなど初めての事でございましたので、つい」
「はああああ!?」
「いいから早く!!」


俺は急かされるように馬車へ詰め込まれ、裏口から実家へ向かうのであった…。

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

処理中です...