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学園6年目
トリプル新年会 4
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軽食コーナーでおじいちゃん先生が温めてくれたホットドッグを食べる。
やっぱり焼きたてが美味しいね!
もぐもぐしながらヘザー先輩が俺に聞いた。
「ルース君、殿下は?」
「ああ、用があるって出て行って…」
「それで殿下がルースさんのとこへ行けって言ったんですね」
「ふふ、我が君ったら過保護なんだから」
「いいえエル、そうでもありません。
先ほどから随分周りに行動を観察されています」
「えっ、そうなんですか?全然気づかなかった…」
今更誰が俺の事狙うんだろう?
お家断絶の危機は養子で回避できるようになったし、危険な橋を渡る理由もないと思うんだけど…。
まあいいか。
椅子は無いけどお菓子をつまみながらコーヒーを飲む。
一つ前の新年会(スラムの新年炊き出し会)が長引いて、晩御飯をスキップしてしまったからお腹は空いてるんだけど、満腹になったら寝ちゃいそう…。
コーヒーが当たり前に置かれてるのが有難い。
「コーヒーもいつの間にか用意されるようになりましたね」
「これもシャラパールとの関係が良好だからだよねぇ」
「あの巨大ミミズと戦った甲斐がありましたね!」
僕もすっかりコーヒー好きになったよ、とヘザー先輩。
ニコニコと同意するカート君。
そういえば…とジョンさんが言う。
「あのミミズの穴だが、相当なダンジョンらしいぞ。
まだ半分も攻略が進んでない…と、クリビア殿から聞いてな…」
「ジョンさん、まさか潜りに行く気ですか?」
「その時は私も付いて行くからね」
「もちろんです、エル!」
いいなあ、俺も殿下が王様を引退したら一緒に行こう。
「コーヒーをもう一杯貰おうかな…」
さっきからすこーし眠気が出て来たんだ。
ダンスで魔法を使ったからかな…
「ふわぁ…」
と、その時、突然ファンファーレが鳴り響いた。
「うん、何!?」
「何かの発表でしょうか?」
「えっ、何だろう?」
立太子することはもう色んな所で通達したり報道されたりしてるし…
今更周知するっていうのも遅すぎるよな。
「なんだろう?」
「なんでしょうねえ」
俺の疑問をよそに、ファンファーレの後、国王・正室両陛下及びアルファード殿下が楽団をバックに壇上へ上がっていく。
そして殿下が声を張る。
「本日、この場を借りて皆に報告がある」
んっ、何?
「側室が新たに2名増員することとなった」
は!?
「紹介しよう、一人は元学園の神官長であり、最年少神官長でもあるセント・ジェンティアナ神官。
もう一人は帝国再興派との戦いでも活躍した冒険者、ダグだ」
ええ!?
このタイミングで2人増えたっ!?
「おい、あれは…イフェイオンの」
「だが冒険者として扱うと宣言されたぞ」
「それにジェンティアナ家の…あれは」
「確か事故で当主と伴侶が死んで…その末息子か?」
当然の如く会場はざわつく。
俺も心の奥でめっちゃざわつく。
ダグさんとシンカンチョーがそこまで進んでる…
と、いうことはだ。
…ダグさんは正統派のSってこと…!?
「……さすが元公爵家」
「何がです?」
「いや、何でもないです!」
さすがにシンカンチョーがドMだから云々…って話は出来ないからな、黙っとこう。
ダグさんが本当にSかどうかも分かんないしね。
今度は国王陛下がお言葉を述べられる。
「皆も知っての通り、後宮は余の代より「より良いローズを目指す」為の「国立研究所」へ生まれ変わる。
二人は神殿や冒険者ギルドをより国民に近づける為の活動をしてもらう事が決まっている。
皆が知っての通り、王家と対になるはずの公爵派は帝国再興派となり消えた。
私の治世でそのような事は起こさぬと約束するが、今後何代か後に愚王が出て来ない保障はない。
その未来に備え、余は「対になり王家を諫め、または愚行を阻む事が出来る組織」として、世界各地に拠点がある神殿と冒険者ギルドを指名し、その両方から承認を得た。
彼らはその先駆けとなる2名。
くれぐれも軽んじる事の無いように」
「「「御意!」」」
会場の雰囲気が一気にぴりっとする。
王家に逆らえるものを王家が用意する、ということの意味をそれぞれが考えているんだろうな…。
陛下の言葉を真に受けて、神殿や冒険者ギルドに擦り寄るような人は多分もういないと思うけど。
その後、正室陛下の
「では宴の続きを楽しみましょう」
の一言で場が和み、楽団は穏やかな曲を演奏し始める。
宴の中心がダンスから会話へ緩やかに変わる。
俺と周りのみんなもさっきの事を話題にやいやい言う。
「急にびっくりしたねカート、ダグさんが後宮だなんて」
「でもこれで、イフェイオン家の再興は完全に無くなりましたね、エルさま」
「そうですね、彼を冒険者として紹介した以上は…ねえ、ジョン」
「ええ、彼を旗印に担ぎ出そうにも後宮に囲われていれば公爵派の残党も手出しができませんし、良い案です」
「そうなると元公爵家全員を囲うんですかね?
もしそうなるとして、あのプリムラとかいうのは何の益があるんです?納得しかねますよ」
「イドラ君、なんて事言うんだい?まあ分かるけど」
「損切り出来ない駄目、ガントレットも分かる」
「ノースさん、それは今の当主様の方でしょ?今言ってるのは息子さんの方」
「あいつも顔はいいらしいけど頭はな…さすがに側室にはできねえと思うぜ?なあルディ」
「はい、フィーデ・テナチュールさんと結婚してアウディ・テナチュールになるって言って回ってました!」
「うむ、馬鹿っぽい作戦じゃが愚直にやっとるぞい」
「えっ、校長のとこまで届いてるんですか」
「学園の全員に言って回っとるからのう」
「「愚直がすぎる」」
それ俺も聞いたな…。
だから頑張らないもん宣言付きで。
しかし、セント神官長のご実家も色々あるんだな。
お兄さんが実家を継いで頑張ってる話は聞いてるけど、あんまり王都には出て来ないらしいからなあ。
今日のパーティーにも来てないみたいだし…。
まあ、弟が側室になったんだし、そのうち会えるか。
王都に出て来ないって事は中央で出世したいタイプじゃないって事だし、それほど問題にはならないはず…
だと、思う。
多分。
やっぱり焼きたてが美味しいね!
もぐもぐしながらヘザー先輩が俺に聞いた。
「ルース君、殿下は?」
「ああ、用があるって出て行って…」
「それで殿下がルースさんのとこへ行けって言ったんですね」
「ふふ、我が君ったら過保護なんだから」
「いいえエル、そうでもありません。
先ほどから随分周りに行動を観察されています」
「えっ、そうなんですか?全然気づかなかった…」
今更誰が俺の事狙うんだろう?
お家断絶の危機は養子で回避できるようになったし、危険な橋を渡る理由もないと思うんだけど…。
まあいいか。
椅子は無いけどお菓子をつまみながらコーヒーを飲む。
一つ前の新年会(スラムの新年炊き出し会)が長引いて、晩御飯をスキップしてしまったからお腹は空いてるんだけど、満腹になったら寝ちゃいそう…。
コーヒーが当たり前に置かれてるのが有難い。
「コーヒーもいつの間にか用意されるようになりましたね」
「これもシャラパールとの関係が良好だからだよねぇ」
「あの巨大ミミズと戦った甲斐がありましたね!」
僕もすっかりコーヒー好きになったよ、とヘザー先輩。
ニコニコと同意するカート君。
そういえば…とジョンさんが言う。
「あのミミズの穴だが、相当なダンジョンらしいぞ。
まだ半分も攻略が進んでない…と、クリビア殿から聞いてな…」
「ジョンさん、まさか潜りに行く気ですか?」
「その時は私も付いて行くからね」
「もちろんです、エル!」
いいなあ、俺も殿下が王様を引退したら一緒に行こう。
「コーヒーをもう一杯貰おうかな…」
さっきからすこーし眠気が出て来たんだ。
ダンスで魔法を使ったからかな…
「ふわぁ…」
と、その時、突然ファンファーレが鳴り響いた。
「うん、何!?」
「何かの発表でしょうか?」
「えっ、何だろう?」
立太子することはもう色んな所で通達したり報道されたりしてるし…
今更周知するっていうのも遅すぎるよな。
「なんだろう?」
「なんでしょうねえ」
俺の疑問をよそに、ファンファーレの後、国王・正室両陛下及びアルファード殿下が楽団をバックに壇上へ上がっていく。
そして殿下が声を張る。
「本日、この場を借りて皆に報告がある」
んっ、何?
「側室が新たに2名増員することとなった」
は!?
「紹介しよう、一人は元学園の神官長であり、最年少神官長でもあるセント・ジェンティアナ神官。
もう一人は帝国再興派との戦いでも活躍した冒険者、ダグだ」
ええ!?
このタイミングで2人増えたっ!?
「おい、あれは…イフェイオンの」
「だが冒険者として扱うと宣言されたぞ」
「それにジェンティアナ家の…あれは」
「確か事故で当主と伴侶が死んで…その末息子か?」
当然の如く会場はざわつく。
俺も心の奥でめっちゃざわつく。
ダグさんとシンカンチョーがそこまで進んでる…
と、いうことはだ。
…ダグさんは正統派のSってこと…!?
「……さすが元公爵家」
「何がです?」
「いや、何でもないです!」
さすがにシンカンチョーがドMだから云々…って話は出来ないからな、黙っとこう。
ダグさんが本当にSかどうかも分かんないしね。
今度は国王陛下がお言葉を述べられる。
「皆も知っての通り、後宮は余の代より「より良いローズを目指す」為の「国立研究所」へ生まれ変わる。
二人は神殿や冒険者ギルドをより国民に近づける為の活動をしてもらう事が決まっている。
皆が知っての通り、王家と対になるはずの公爵派は帝国再興派となり消えた。
私の治世でそのような事は起こさぬと約束するが、今後何代か後に愚王が出て来ない保障はない。
その未来に備え、余は「対になり王家を諫め、または愚行を阻む事が出来る組織」として、世界各地に拠点がある神殿と冒険者ギルドを指名し、その両方から承認を得た。
彼らはその先駆けとなる2名。
くれぐれも軽んじる事の無いように」
「「「御意!」」」
会場の雰囲気が一気にぴりっとする。
王家に逆らえるものを王家が用意する、ということの意味をそれぞれが考えているんだろうな…。
陛下の言葉を真に受けて、神殿や冒険者ギルドに擦り寄るような人は多分もういないと思うけど。
その後、正室陛下の
「では宴の続きを楽しみましょう」
の一言で場が和み、楽団は穏やかな曲を演奏し始める。
宴の中心がダンスから会話へ緩やかに変わる。
俺と周りのみんなもさっきの事を話題にやいやい言う。
「急にびっくりしたねカート、ダグさんが後宮だなんて」
「でもこれで、イフェイオン家の再興は完全に無くなりましたね、エルさま」
「そうですね、彼を冒険者として紹介した以上は…ねえ、ジョン」
「ええ、彼を旗印に担ぎ出そうにも後宮に囲われていれば公爵派の残党も手出しができませんし、良い案です」
「そうなると元公爵家全員を囲うんですかね?
もしそうなるとして、あのプリムラとかいうのは何の益があるんです?納得しかねますよ」
「イドラ君、なんて事言うんだい?まあ分かるけど」
「損切り出来ない駄目、ガントレットも分かる」
「ノースさん、それは今の当主様の方でしょ?今言ってるのは息子さんの方」
「あいつも顔はいいらしいけど頭はな…さすがに側室にはできねえと思うぜ?なあルディ」
「はい、フィーデ・テナチュールさんと結婚してアウディ・テナチュールになるって言って回ってました!」
「うむ、馬鹿っぽい作戦じゃが愚直にやっとるぞい」
「えっ、校長のとこまで届いてるんですか」
「学園の全員に言って回っとるからのう」
「「愚直がすぎる」」
それ俺も聞いたな…。
だから頑張らないもん宣言付きで。
しかし、セント神官長のご実家も色々あるんだな。
お兄さんが実家を継いで頑張ってる話は聞いてるけど、あんまり王都には出て来ないらしいからなあ。
今日のパーティーにも来てないみたいだし…。
まあ、弟が側室になったんだし、そのうち会えるか。
王都に出て来ないって事は中央で出世したいタイプじゃないって事だし、それほど問題にはならないはず…
だと、思う。
多分。
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