上 下
457 / 586
学園6年目

子育ては親育て…? ~ベルガモット教授視点~

しおりを挟む
ふぎゃあ、ふぎゃあ
ふぎゃ、ふぎゃ
ふええん…ふえええ
おぎゃー!おぎゃー!

「おーよしよし…セドぉ、おっぱいの時間…」
「ん…そうか…ふわあ」

4人産んだのはいいけど、4人分の乳が出続けるかどうか…
出産してすぐにその問題にぶち当たった俺は、ルースから教わった乳マッサージを続けている。
4人の父親であるあいつらも、ルースから色々と指導を受けているらしく一生懸命サポートしてくれる。

「セドは少しでも寝ていてね」
「おしめの変え方も習ったから!」
「マッサージも覚えたから言って」
「ごはん食べさせてあげる、あーん」

肝心のルースは学園に戻る用が出来たと言って昨日からいない。

彼には本当に色々世話になった。
堕ろす事しか考えられなかった俺に「産め」と言ってくれて、産ませるからにはサポートする、といって授業の事から食事内容、ユーフォルビア家の記録から分かった妊娠出産に関しての知識の共有…

『胎児は常に、栄養と共に魔力を求めます。
 ベルガモット教授は魔力の多い方なので、しっかり食べて寝ていれば大丈夫だとは思うのですが…』
『…まさかとは思うが、魔力供給を受けろと?』
『話が早くて助かります。
 基本週に1回程度だそうですが、多胎の場合は頻度を増やすといいそうです』

…で、あの話のあとすぐにあいつらがやってきて…
うん、まあ、うん…色々?

しかし、魔法侯爵4人分の穴を埋めてくれたのはルースとその友人たちだろう。
何か感謝の気持ちを贈らねば…
ああ、そういえばクリビア殿から祝いを頂いたのだ、それも返さないと。

「…おい、キュー。げっぷ頼む」
「はいはい」
「エバも」
「はーい」
「セド、この子たちもおっぱい飲むって」
「…まだ出るかな…」
「先に代替乳ミルク飲ませてるから、乳首吸いたいだけなんじゃない」
「なるほど…まあなるべく公平に、だな」

代替乳ミルクは人の乳に近くなるように色々な家畜の乳を混ぜたものだそうだ。
ルースがとある商店に「新しい保存方法の開発・実験」の名目で、定期配送を頼んでくれた。

ただ表向きの理由が理由なだけに、この前ついに製造元の社長が「進捗はどうですかね?」と納品ついでにやってきたりして…。
だいぶヒヤヒヤしたが、エバが魔法で水を抜くことに成功した話を聞かせて追い返していた。

エバだけじゃない。
ロリィもテディもキューも、少し逞しくなった。
今もこうして俺と子どもたちの世話を甲斐甲斐しく焼いてくれて、おむつの交換も洗濯もしてくれて…。

ルースがいなくても俺たちがいるから大丈夫、と言われたときには思わず泣いてしまった。

なんだ、ちゃんと親になってくれるんじゃないか、って…

だめだ、また涙が出てきた。

「…どうしたの、セド?」
「どこか痛いのか?」
「乳首ヒールする?」
「腰のマッサージする?」

「ううん、嬉しいんだ。
 産んで良かった、本当に…」

ルースは、こいつらに黙って堕ろそうとしたことは黙っておいたほうがいい、と言った。
余計な事を言って心配事を増やさなくてもいいし、出来れば俺も忘れた方がいい…と。

少しだけ乳を吸う子たちから目を離し、あいつらを見る。
げっぷをさせてからお尻をポンポン叩いて寝かしつけようと頑張る、キューとエバ。
4人いるのだから交代で休めばいいのに、ウトウトしながらもおむつを畳むロリィとテディ。

確かに、今はそれをいう時じゃない。
もっと先、この子たちが成長して立派になっ、いっ!?

「痛っ、いたた」
「セド!?」
「か、噛んでも出ないってば、痛い、痛いって」
「こら!パパを困らせちゃ駄目でしょ!!」
「どっちが噛んでるの!?」
「どっちもだ!!」

これは、早急になんとか、乳が4人分出る方法を考えねば…!!

「いっそ4人とも代替乳ミルクに…」
「経済的にそれはちょっと、いたた…
 これ以上ユーフォルビア家の負担になるわけには」

実は食費も医者代も、何も精算していないんだ。
その前に、どうやって金を受け渡すかも考えなきゃならんのに…。

だが、そんなことならという顔でロリィが言った。

「お金ならあるよ!俺たち、授業を代わって貰ったお礼にルースに500万ずつ払っといたから」
「えっ?」

4人それぞれ500万なら2000万がルースの手元にあるということか?
じゃあ、支払いが遅れても多少は問題ない…?

テディやキュー、エバも言う。

代替乳ミルク代って高いのか?
 ならもう少し払っておくか、3学期分も頼むし」
「3学期も頼むのか」
「頼むに決まってるじゃん!
 ついでに引継ぎも頼もうと思ってるのに」
「……は?」
「だって!子育てしなきゃいけないだろ!」

だからって、急に仕事を引継ぎも無しに辞めるだなんて!?
大体魔法侯爵は学園に常駐して優秀な魔法使いを育てるのが使命、だと、言ってなかったか…?

「仕事と子育てを両立するつもりは…」
「だあって!またそれもルースに頼むんでしょ?」
「う…む、まあ…でも、相談できそうな人が他にもいるから、そっちにも聞いてみる…」
「あっ、「魔王のつがい」だな?」
「えー…ああ、そうだ」

どうやらそれが新しいクリビア殿の二つ名らしい。
誰が手を回したんだか知らんが、あの御仁もなかなかの策士だからな…。

「ふーん…だったら良いか」
「ルースに頼むのはムカつくけど、それなら…」

うんうん…と4人は頷く。

俺はどうやら、今後もこいつらの極端な発想に今後も振り回されるらしい。

それはそれで…
まあ、幸せなことなのかもしれないな。

ふふふ。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...