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学園6年目
変化する日々 ~神官長視点~
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イフェイオン邸での戦いから帰って、私の生活は少し変わった。
まずは住まいの事。
今まで借りていた学園の寮から出て、学園の近くの部屋へ引っ越した。
今まで住んでいた場所は来年度からの新任神官長に譲った。
ルースと殿下の卒業と共に、私は学園の神殿から離れる事になったのだ。
後任の神官長にお菓子研究を引き継いでもらうため、ブカツを作って活動できるようにしたから、後はお菓子作りに興味のある生徒が入部してくれればと思う。
ロメリア様からはルースに付いて王宮へ行けと言われている。
王宮と神殿とのパイプ役を務めろ、との事…中々荷が重い。
しかも出来れば後宮へ住んで貰いたいと仰る。
側室の1人であるカートランド・リリー侯爵令息が神殿関係の仕事に就くらしく、近くに住んでいれば何かと便利だろうという話なのだが…
「ジェンティアナ殿には将来を誓い合うような恋人はおらんのか?
居るのであれば、後宮入りを頼めるのだが」
と急に言われても困る。
自分の性癖が特殊なのもあって、現在に至るまで恋人など出来た事もないのだ。
仕方が無いだろう?
思春期の衝動で、お仕置きと性的興奮がくっついてしまったのだ。
そういうエロ本を山ほど私に与えた兄を恨むしかない。
それから生活の事。
寮では当然1人暮らしだったが、今は同居人がいる。
冒険者の「ダグ」だ。
イフェイオン邸での一件以来、なぜか懐かれてしまって今に至る。
元公爵令息だった彼だが、それなりに生活能力はあるようで洗濯と掃除は任せられる。
だが、料理に関してはお互い不得手なので買って来て済ませる。
向こうは冒険者だから家を空ける事も多いし、半分1人暮らしのようなものだが…
今日はどうやら帰って来ているらしい。
家に灯りが付いているのが何となく嬉しい。
ちょっとした幸福を感じつつ玄関の扉を開ける。
「あ、ライトさん、お帰り」
「ええ、ただいま戻りました」
「今日は何かあった?」
「ええ、シフォンケーキなるものの試作を…。
ルースが言うには紅茶にぴったりのお菓子だそうで、フリージア領の神殿で名物になればと。
巡礼を楽しくするために、各地の神殿でそれぞれ地域の特色を生かしたものを作れたらということで、最近取り組んでいるんです。
楽しい巡礼であれば、それほど信心深くない方にも参加してもらえるのではないか、と…。
少し持ち帰ったので、後で一緒に食べましょう。
…そちらは?」
「ああ、学園の地下ダンジョン作りも大詰めでさ。
行き止まりを作る作業も終わりそうだ」
巨大サンドワームが空けたという穴はそのまま塞ぐ案もあったらしいが、冒険者ギルドの進言もあり少し上の経験を積ませるためのダンジョンとして全体の半分程を活用することにしたそうだ。
地下への入口には鉄製の扉を付けるのだとか…。
「随分と潜るのでしょう?」
「ああ、まあ…奥まで3~4日くらいか?
魔物も出てくるようになったから、多少戦闘もあるし…もうちょっと長くなるかな」
「…そうですか」
イフェイオン邸から戻ったばかりの頃は不安定だった彼の精神も、戻ってから暫くで安定してきた。
光魔法も使えるそうだから、多少の怪我も心配しなくていい…はずだが。
「心配?」
「ええ、まあ…少し」
「そっか…心配してくれるんだ」
「おかしいですか?」
「ううん、嬉しい」
そう言ってダグは笑い、私の頬にキスをする。
ふと思う。
彼がもし、後宮へ一緒に来てくれるなら…。
「…無理、ですよね」
「ん?何が?」
「いえ…何でも?」
自分の性癖がばれたら、この関係も終わる。
はまり込んで抜けなくなる前に、王都へ…
「はあ…」
「どうしたの、何か悩んでる?」
「いや、何でもありません」
私は誤魔化す様に笑い、そして…
「今日の食事はどうしますか?」
当たり前の話で、場を繕った。
まずは住まいの事。
今まで借りていた学園の寮から出て、学園の近くの部屋へ引っ越した。
今まで住んでいた場所は来年度からの新任神官長に譲った。
ルースと殿下の卒業と共に、私は学園の神殿から離れる事になったのだ。
後任の神官長にお菓子研究を引き継いでもらうため、ブカツを作って活動できるようにしたから、後はお菓子作りに興味のある生徒が入部してくれればと思う。
ロメリア様からはルースに付いて王宮へ行けと言われている。
王宮と神殿とのパイプ役を務めろ、との事…中々荷が重い。
しかも出来れば後宮へ住んで貰いたいと仰る。
側室の1人であるカートランド・リリー侯爵令息が神殿関係の仕事に就くらしく、近くに住んでいれば何かと便利だろうという話なのだが…
「ジェンティアナ殿には将来を誓い合うような恋人はおらんのか?
居るのであれば、後宮入りを頼めるのだが」
と急に言われても困る。
自分の性癖が特殊なのもあって、現在に至るまで恋人など出来た事もないのだ。
仕方が無いだろう?
思春期の衝動で、お仕置きと性的興奮がくっついてしまったのだ。
そういうエロ本を山ほど私に与えた兄を恨むしかない。
それから生活の事。
寮では当然1人暮らしだったが、今は同居人がいる。
冒険者の「ダグ」だ。
イフェイオン邸での一件以来、なぜか懐かれてしまって今に至る。
元公爵令息だった彼だが、それなりに生活能力はあるようで洗濯と掃除は任せられる。
だが、料理に関してはお互い不得手なので買って来て済ませる。
向こうは冒険者だから家を空ける事も多いし、半分1人暮らしのようなものだが…
今日はどうやら帰って来ているらしい。
家に灯りが付いているのが何となく嬉しい。
ちょっとした幸福を感じつつ玄関の扉を開ける。
「あ、ライトさん、お帰り」
「ええ、ただいま戻りました」
「今日は何かあった?」
「ええ、シフォンケーキなるものの試作を…。
ルースが言うには紅茶にぴったりのお菓子だそうで、フリージア領の神殿で名物になればと。
巡礼を楽しくするために、各地の神殿でそれぞれ地域の特色を生かしたものを作れたらということで、最近取り組んでいるんです。
楽しい巡礼であれば、それほど信心深くない方にも参加してもらえるのではないか、と…。
少し持ち帰ったので、後で一緒に食べましょう。
…そちらは?」
「ああ、学園の地下ダンジョン作りも大詰めでさ。
行き止まりを作る作業も終わりそうだ」
巨大サンドワームが空けたという穴はそのまま塞ぐ案もあったらしいが、冒険者ギルドの進言もあり少し上の経験を積ませるためのダンジョンとして全体の半分程を活用することにしたそうだ。
地下への入口には鉄製の扉を付けるのだとか…。
「随分と潜るのでしょう?」
「ああ、まあ…奥まで3~4日くらいか?
魔物も出てくるようになったから、多少戦闘もあるし…もうちょっと長くなるかな」
「…そうですか」
イフェイオン邸から戻ったばかりの頃は不安定だった彼の精神も、戻ってから暫くで安定してきた。
光魔法も使えるそうだから、多少の怪我も心配しなくていい…はずだが。
「心配?」
「ええ、まあ…少し」
「そっか…心配してくれるんだ」
「おかしいですか?」
「ううん、嬉しい」
そう言ってダグは笑い、私の頬にキスをする。
ふと思う。
彼がもし、後宮へ一緒に来てくれるなら…。
「…無理、ですよね」
「ん?何が?」
「いえ…何でも?」
自分の性癖がばれたら、この関係も終わる。
はまり込んで抜けなくなる前に、王都へ…
「はあ…」
「どうしたの、何か悩んでる?」
「いや、何でもありません」
私は誤魔化す様に笑い、そして…
「今日の食事はどうしますか?」
当たり前の話で、場を繕った。
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