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学園6年目
戦という名の総決算 12
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イフェイオン邸の地下で、俺と殿下は穴の方に耳を澄ませる。
だけど一向に何の音も聞こえて来ない…
まあ、馬で半日も掛かる距離だったら聞こえないのが普通か。
「歩きかホバーか、どっちですかね?」
「はっ、あの男が自分の足で歩くものか」
「えっ、健康にうるさい人って言ってませんでした?」
「それはそうだが、だからといって運動している事にはならんだろう」
「は?」
健康は適度な運動と質の良い睡眠が基本じゃないの?
セレブの健康法って謎だらけだな。
「まあそれはそれとして、あっちで捕まえられたのなら一番良いのだが」
「そうですね、その方がキレイに終われますし…
この地下道の事もおさまりがつきますし」
「出来ればこのまま国に接収したいからな」
それならいっそ、あっちとこっちのお屋敷を保養施設にでもしたらどうかしら。
ちょっとリッチなお宿にして…イベントしたり、結婚式したりできる場所もあるし…
あっ。
「掘ったら温泉が出たりしないかなあ」
「…温泉?」
「今後この屋敷を活用する時に目玉になるじゃないですか」
「もう次の事を考えているのか?」
「だって少しでも取り返さないと…相当の損失が出てるんですから」
「なるほど、お前らしい考え方だな」
「どういう意味ですか、それ…」
「そのままの意味だが?」
ちょっとむくれた俺を見て殿下が笑う。
なんなのもう…人を守銭奴みたいに!!
「国庫はなるべく減らさない方がいいでしょ!」
「ほら、そういうところだ」
「え?」
「国の事をいつでもちゃんと考えているところだ」
「……あ」
なんだ、そういうことか。
いい意味だったんだな…良かった。
ほっとした俺のつむじにキスをしてから、殿下は続けた。
「やはり俺の伴侶になるのはお前しかいない。
俺の目に狂いは無かった…3歳だった頃の俺を褒めてやりたい気分だ」
「……えっ?」
「ルースを初めて見た瞬間、分かった。
生まれる前から俺のものになる事が決まっていたのはルースだ、と」
「……は?」
いきなり何の話?
産まれる前から…って、何?
「3歳になった時だ。
ユーフォルビア家には生まれる前から俺の元に輿入れする事が決まっている者がいると教えられた。
ある日交流を深めろと言われて、仕方なく家に遊びに行った。
そうしたら3歳になったお前と7歳のデカールが居た。
迷わず俺はルースの手を取った。
だが周りはデカールの方が相応しいと言い、王宮の行事でもデカールばかりが呼ばれた」
「へえ…そうだったんですね」
だから子どもの時のクリスマス行事の記憶が無いのか。
参加してないんだから当然だよな。
まあデカール兄さんのほうが可愛いからなあ。
髪もロイ父さんに似た金色で、目も青だし。
俺、隔世遺伝か何かで黒目黒髪だし、ユーフォルビアかどうかも疑われてたんだろうな…。
「ところが、遊学に来たミュッテの王子が、偶然学園祭でデカールを見初めてな。
元々ミュッテから「神の怒りを避ける為にユーフォルビアの子が欲しい」と打診があったこともあって、すぐに婚約が決まった」
「えっ、そうなんですか?」
「そうだ、俺が偶然そうなるように仕向けた」
「…は?」
「デカールが国外へ輿入れするなら、ルースが必然的に俺の元へ転がり込んでくるだろう?」
「……!!」
俺は唖然として殿下の…アルの顔を見た。
するとアルは自慢げな顔で言った。
「…俺の愛の深さが、分かったか?」
「……うん」
「ずっとルースが欲しかった。
俺のものにしたかった。
魂に突き動かされるように、お前を欲した。
一目惚れという領域を超えた何かだった」
「うん」
「愛している、の意味が分かったか?」
「…うん」
好きだ、とか、愛してる、の奥にある執着。
それは俺が思うよりずっと濃いもの。
「なあ、ルース。
いますぐここで、お前と愛し合いたい…
駄目か?」
熱を孕んだ目でアルが俺を見つめる。
アルの右手の指が俺の顎を捉え、俺は目を閉じ…
その時。
地下室への扉がバタン!と開き、
「ルース!通信だ!」
「あっちでエルム公を捕まえたと…」
ダグさんをつれた神官長がやってきて、
「……し、失礼致しましたっ!!」
「ご…ごゆっくりどうぞ…!!」
通信の報告もそこそこに、消えた。
「…………………。」
暫くの沈黙があってから、アルは言った。
「…どうやらこの穴からは誰も出て来ないようだな」
「そ…そうですね」
「これで何の憂いも無くできるな?」
って、
「んっ、ん、んん~~!?」
ちょ、待って!?
普通はこういうのってやる気が削がれるもんじゃ…
あんっ…!
だけど一向に何の音も聞こえて来ない…
まあ、馬で半日も掛かる距離だったら聞こえないのが普通か。
「歩きかホバーか、どっちですかね?」
「はっ、あの男が自分の足で歩くものか」
「えっ、健康にうるさい人って言ってませんでした?」
「それはそうだが、だからといって運動している事にはならんだろう」
「は?」
健康は適度な運動と質の良い睡眠が基本じゃないの?
セレブの健康法って謎だらけだな。
「まあそれはそれとして、あっちで捕まえられたのなら一番良いのだが」
「そうですね、その方がキレイに終われますし…
この地下道の事もおさまりがつきますし」
「出来ればこのまま国に接収したいからな」
それならいっそ、あっちとこっちのお屋敷を保養施設にでもしたらどうかしら。
ちょっとリッチなお宿にして…イベントしたり、結婚式したりできる場所もあるし…
あっ。
「掘ったら温泉が出たりしないかなあ」
「…温泉?」
「今後この屋敷を活用する時に目玉になるじゃないですか」
「もう次の事を考えているのか?」
「だって少しでも取り返さないと…相当の損失が出てるんですから」
「なるほど、お前らしい考え方だな」
「どういう意味ですか、それ…」
「そのままの意味だが?」
ちょっとむくれた俺を見て殿下が笑う。
なんなのもう…人を守銭奴みたいに!!
「国庫はなるべく減らさない方がいいでしょ!」
「ほら、そういうところだ」
「え?」
「国の事をいつでもちゃんと考えているところだ」
「……あ」
なんだ、そういうことか。
いい意味だったんだな…良かった。
ほっとした俺のつむじにキスをしてから、殿下は続けた。
「やはり俺の伴侶になるのはお前しかいない。
俺の目に狂いは無かった…3歳だった頃の俺を褒めてやりたい気分だ」
「……えっ?」
「ルースを初めて見た瞬間、分かった。
生まれる前から俺のものになる事が決まっていたのはルースだ、と」
「……は?」
いきなり何の話?
産まれる前から…って、何?
「3歳になった時だ。
ユーフォルビア家には生まれる前から俺の元に輿入れする事が決まっている者がいると教えられた。
ある日交流を深めろと言われて、仕方なく家に遊びに行った。
そうしたら3歳になったお前と7歳のデカールが居た。
迷わず俺はルースの手を取った。
だが周りはデカールの方が相応しいと言い、王宮の行事でもデカールばかりが呼ばれた」
「へえ…そうだったんですね」
だから子どもの時のクリスマス行事の記憶が無いのか。
参加してないんだから当然だよな。
まあデカール兄さんのほうが可愛いからなあ。
髪もロイ父さんに似た金色で、目も青だし。
俺、隔世遺伝か何かで黒目黒髪だし、ユーフォルビアかどうかも疑われてたんだろうな…。
「ところが、遊学に来たミュッテの王子が、偶然学園祭でデカールを見初めてな。
元々ミュッテから「神の怒りを避ける為にユーフォルビアの子が欲しい」と打診があったこともあって、すぐに婚約が決まった」
「えっ、そうなんですか?」
「そうだ、俺が偶然そうなるように仕向けた」
「…は?」
「デカールが国外へ輿入れするなら、ルースが必然的に俺の元へ転がり込んでくるだろう?」
「……!!」
俺は唖然として殿下の…アルの顔を見た。
するとアルは自慢げな顔で言った。
「…俺の愛の深さが、分かったか?」
「……うん」
「ずっとルースが欲しかった。
俺のものにしたかった。
魂に突き動かされるように、お前を欲した。
一目惚れという領域を超えた何かだった」
「うん」
「愛している、の意味が分かったか?」
「…うん」
好きだ、とか、愛してる、の奥にある執着。
それは俺が思うよりずっと濃いもの。
「なあ、ルース。
いますぐここで、お前と愛し合いたい…
駄目か?」
熱を孕んだ目でアルが俺を見つめる。
アルの右手の指が俺の顎を捉え、俺は目を閉じ…
その時。
地下室への扉がバタン!と開き、
「ルース!通信だ!」
「あっちでエルム公を捕まえたと…」
ダグさんをつれた神官長がやってきて、
「……し、失礼致しましたっ!!」
「ご…ごゆっくりどうぞ…!!」
通信の報告もそこそこに、消えた。
「…………………。」
暫くの沈黙があってから、アルは言った。
「…どうやらこの穴からは誰も出て来ないようだな」
「そ…そうですね」
「これで何の憂いも無くできるな?」
って、
「んっ、ん、んん~~!?」
ちょ、待って!?
普通はこういうのってやる気が削がれるもんじゃ…
あんっ…!
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