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学園5年目
後宮探訪
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衣装合わせと段取りの確認も終わり、殿下と2人で側室になるみんながお泊りする部屋の点検をしに後宮へ行く。
後宮は、正門から見て殿下の離れの左側にある。
通路を挟んで両サイドに部屋がある建物で、かつては王様(または王太子様)の寵愛順に入る部屋が決まっていたらしいんだけど、今回はそういうのが無いので1カップルずつ平等になるように振り分けられるらしい。
それと、側室の居室以外に1階の中央に図書室、2・3階に談話室・遊技場がある。
部屋の作りは広めのワンルームに大きめ収納・バス・トイレ付と、大体どこも一緒のようだ…
ゴード先輩がいた監禁部屋以外は。
俺は殿下に何でこんな話を受け入れたのか聞いた。
「ああ、公爵派の連中それぞれから側室になる権利を買った者の人数が正確に掴めたからな」
「なるほ…え?売ってるのはプリムラ公爵だけじゃなかったんですか?」
王宮の調査によると、エルム公爵とテナチュール侯爵の2人も販売した形跡があるらしい。
アレクさんが次期正室ナンチャラになったおかげで、「生真面目な国庫の番人」コスモス伯爵と王家の間に彼らが干渉できないパイプができたもんだから、横領がやりづらくなったんだろう…
と、殿下が言う。
「まあ、一番売っているのはプリムラだがな…
実際それぞれから買って、契約書も押さえた」
「一体いくらで?」
「500万だ。貴族の子どもを1人養うにはそれくらいかかるから、その分で買えばとか何とか」
「どの口が抜かすのかな?」
養育費ほぼ払ってない奴が偉そうに!!
ほんで500万じゃ全然足りんからな!!
なめとんか!!!
「…で、一体何人が買ったんです?」
「47人」
「しじゅうしちにん」
赤穂浪士かよ!
俺は白目を剥いた。
殿下は続けた。
「先月まで父上の後宮が30、俺の後宮が22空いていたから、まあそれ以内に収めたんだろうな」
「ちょ、ちょっと待ってください!?
その47人全員の子どもを俺が産む「設定」なんですか?」
いくらなんでも無理があるだろ!?
「いや、単に王家とお近づきになりたい平民の富裕層もいるようだから、全員では無かろうが」
あー、そういう人もいるのか。
お馬鹿さんばかりじゃなくて良かった…
あっ、そうか。
「もしかして、空きを47以下にするため…ですか?」
「うむ、ワルドとルディにノースとガーベラだけでは足りんだろう?」
「…なるほど」
「今回のパーティーは、シャラパールとの友好を深める為だけの物では無い。
これほど大々的に側室の人数を正式発表すれば、買った連中の中にも気づく者が出るだろう。少なくとも側室の枠を売った公爵派は必ず焦る」
つまり、最後の揺さぶりをかけるってことか…
「…でもそうなると、側室になったみんなを狙う人が出てきませんかね?」
側室の空き枠が権利を買った人の数を下回っているなら、その分作り出せばいい。
そう考えるやつは必ず出る。
「これのせいで、誰かに何かあったら…」
でも殿下は心配するなと笑って、言う。
「側室の顔ぶれを考えてみろ。
カートとヘザー、エルグランとジョン、それと魔法棟の5侯爵…。
彼らに勝てる者などほぼいない。
デューイとカイトには、常に2人でいる事とあの笛を肌身離さず携帯する事を義務付けている。
イドラとソランには王家の影を出し抜けるほどの従者が付いている。
ノースとガーベラには「シャラパールを裏切らない為の」監視が常につけられている。
ルディとワルドなど、我が国の軍事力に寄与する研究者だ…当然軍が警護・監視している」
確かに戦闘力の高いメンバーが揃ってるな…
でも念のために養殖真珠グッズを人数分用意しとこう。
「…死角なし、ですか」
「やれるものならやってみろ、という事だ。
さて、次が最後の部屋だな」
「あれ?まだ部屋があるんですか?」
「ああ、4階に1部屋な」
へえ、そんなのあったんだ…
この前来たときは全然気づかなかったな。
「まずはこの天井のスイッチを押す」
殿下が腰の剣を抜いて、そのスイッチをコツン、とつつく。
すると脚立くらい急な階段がスー…と降りてくる。
「お…おおー…」
何かすげー!!
ちょっとワクワクしている俺に、殿下が言った。
「ルース、先に行け。
落ちてきたら助けてやる」
「あっ、はい」
この時の俺はなんて迂闊だったんだろう…
階段をおっかなびっくり登る俺の後ろで殿下がニヤリ…と笑っている事にも、後宮が何の為にあるのかにも気が付かないなんて。
後宮は、正門から見て殿下の離れの左側にある。
通路を挟んで両サイドに部屋がある建物で、かつては王様(または王太子様)の寵愛順に入る部屋が決まっていたらしいんだけど、今回はそういうのが無いので1カップルずつ平等になるように振り分けられるらしい。
それと、側室の居室以外に1階の中央に図書室、2・3階に談話室・遊技場がある。
部屋の作りは広めのワンルームに大きめ収納・バス・トイレ付と、大体どこも一緒のようだ…
ゴード先輩がいた監禁部屋以外は。
俺は殿下に何でこんな話を受け入れたのか聞いた。
「ああ、公爵派の連中それぞれから側室になる権利を買った者の人数が正確に掴めたからな」
「なるほ…え?売ってるのはプリムラ公爵だけじゃなかったんですか?」
王宮の調査によると、エルム公爵とテナチュール侯爵の2人も販売した形跡があるらしい。
アレクさんが次期正室ナンチャラになったおかげで、「生真面目な国庫の番人」コスモス伯爵と王家の間に彼らが干渉できないパイプができたもんだから、横領がやりづらくなったんだろう…
と、殿下が言う。
「まあ、一番売っているのはプリムラだがな…
実際それぞれから買って、契約書も押さえた」
「一体いくらで?」
「500万だ。貴族の子どもを1人養うにはそれくらいかかるから、その分で買えばとか何とか」
「どの口が抜かすのかな?」
養育費ほぼ払ってない奴が偉そうに!!
ほんで500万じゃ全然足りんからな!!
なめとんか!!!
「…で、一体何人が買ったんです?」
「47人」
「しじゅうしちにん」
赤穂浪士かよ!
俺は白目を剥いた。
殿下は続けた。
「先月まで父上の後宮が30、俺の後宮が22空いていたから、まあそれ以内に収めたんだろうな」
「ちょ、ちょっと待ってください!?
その47人全員の子どもを俺が産む「設定」なんですか?」
いくらなんでも無理があるだろ!?
「いや、単に王家とお近づきになりたい平民の富裕層もいるようだから、全員では無かろうが」
あー、そういう人もいるのか。
お馬鹿さんばかりじゃなくて良かった…
あっ、そうか。
「もしかして、空きを47以下にするため…ですか?」
「うむ、ワルドとルディにノースとガーベラだけでは足りんだろう?」
「…なるほど」
「今回のパーティーは、シャラパールとの友好を深める為だけの物では無い。
これほど大々的に側室の人数を正式発表すれば、買った連中の中にも気づく者が出るだろう。少なくとも側室の枠を売った公爵派は必ず焦る」
つまり、最後の揺さぶりをかけるってことか…
「…でもそうなると、側室になったみんなを狙う人が出てきませんかね?」
側室の空き枠が権利を買った人の数を下回っているなら、その分作り出せばいい。
そう考えるやつは必ず出る。
「これのせいで、誰かに何かあったら…」
でも殿下は心配するなと笑って、言う。
「側室の顔ぶれを考えてみろ。
カートとヘザー、エルグランとジョン、それと魔法棟の5侯爵…。
彼らに勝てる者などほぼいない。
デューイとカイトには、常に2人でいる事とあの笛を肌身離さず携帯する事を義務付けている。
イドラとソランには王家の影を出し抜けるほどの従者が付いている。
ノースとガーベラには「シャラパールを裏切らない為の」監視が常につけられている。
ルディとワルドなど、我が国の軍事力に寄与する研究者だ…当然軍が警護・監視している」
確かに戦闘力の高いメンバーが揃ってるな…
でも念のために養殖真珠グッズを人数分用意しとこう。
「…死角なし、ですか」
「やれるものならやってみろ、という事だ。
さて、次が最後の部屋だな」
「あれ?まだ部屋があるんですか?」
「ああ、4階に1部屋な」
へえ、そんなのあったんだ…
この前来たときは全然気づかなかったな。
「まずはこの天井のスイッチを押す」
殿下が腰の剣を抜いて、そのスイッチをコツン、とつつく。
すると脚立くらい急な階段がスー…と降りてくる。
「お…おおー…」
何かすげー!!
ちょっとワクワクしている俺に、殿下が言った。
「ルース、先に行け。
落ちてきたら助けてやる」
「あっ、はい」
この時の俺はなんて迂闊だったんだろう…
階段をおっかなびっくり登る俺の後ろで殿下がニヤリ…と笑っている事にも、後宮が何の為にあるのかにも気が付かないなんて。
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