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学園5年目
厳しい現状 ~フィーデ視点~
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ルースさんの研究室を出て、意気消沈なさっているプリムラ様の手を引き、レストランの個室へ行く。
まだそこはブカツに侵略されていないはずだ…
レストランは敷居が高いから。
空いている個室を聞いて、ティーセットを頼む。
すぐに紅茶が運ばれてきて、良い香りが部屋に広がり…。
ようやくプリムラ様は、口を開いた。
「フィーデ…僕は、どうしたら」
「大丈夫ですよプリムラ様。
ルースさんがああ言ってくれたんです、ついて行けばきっと何とかなります」
「父は…もう、駄目だ、って…。
同じことをしていた僕も、そのうち死刑に…」
「それはありません!
プリムラ様、この国には特定の罪において18歳未満の者の『若さゆえの過ち』を赦す法があります。
その過ちの中には不敬罪も含まれています…
ですから、今ならまだ間に合うんです」
プリムラ様の誕生日は4月。
来年度になったらすぐに、その法は適用されない歳になる……だから僕は急いだんだ。
「間に合う…?まだ17歳だから?」
「そうです、今からでも遅くありません。
共に学びましょう、プリムラ様…
いえ、プリムラ先輩」
僕は侯爵家で、プリムラ様は公爵家。
だから外では「様」を付けて呼ぶのが当然だけど…
学園では身分の事を考慮してはいけないから。
「でも、でも、僕…初級しか、だから、来年取れるのは中級しか…」
「それもきっと大丈夫です。
ルースさんの有名な話、知りませんか?
2年次で全ての魔法学科を上級まで修めた話を。
あの時に新しい規則が出来たんです。
教授が認める者には、その教授が関与する科目に限り、初級から上級まで全てを1年のうちに履修することを許可する、って」
ふるふる、と首を横に振るプリムラさ…先輩。
「知ってる、だけど無理だよ。
ルースだから出来るんだ…あいつは天才だから!
僕は何でも初級までしか分からない。
全部全部初級止まりだ!!フィーデだって僕を馬鹿だと思ってるんだろ!?」
「そんな事ありません!あんなに沢山の科目を学ばれているのは素晴らしい事ではありませんか。
あのルースさんだって、全部の初級を修めることは出来ていないんですよ?」
プリムラ…先輩は、僕を睨みながら言う。
「…っ、どうせ、武術、だろ」
僕は答える。
「いいえ、違います。物理学です」
実はルースさん、武術でも上級を修めているのだ…
魔法武術に貢献した功績で、特別に。
それなのに…
「物理学は入門で躓いて、そのままだそうです」
「…嘘」
「本当ですよ?
物理の教授に確認してもらっても構いません」
どうしても思考に魔法の事が入り込んで、純粋な物理法則が分からなくなるそうで…
理由が天才っぽすぎて、先輩には言わない方が良さそうだけど。
「僕でも、ルースに勝てるところ、ある…?」
「もちろんです!」
「ほんとう、かなあ」
プリムラ先輩が少し前向きになった。
もう一押しだ。
「それに、広く浅くを極めた先輩なら、ルースさん以上に何かに気付ける人になれるかもしれない。
そうなればこの国にとって有益な存在だと胸を張って言えます、そうすれば家の再興も叶います!」
「…うまく行けば、でしょう?
うまく行かなかったら…どうするのさ」
しまった、押しすぎてプリムラ先輩がまた後ろ向きに…
どうしよう。
ええっと、どうなるんだっけ、確か…
「その時は僕が代わりに内務大臣をやることに…」
「ふぅん、そっか。
テナチュールがうちの家に成り代わるって事」
「そ、そういうことじゃありません!!」
「ふ~~~ん…」
しまった、間違えた。
プリムラ先輩に余計な警戒心を与えてしまった。
どうしよう。
そういうことじゃなくて、こう、そうならないように一緒に頑張っていこう的な、えーと、えーと、えーと、えーと、あっ!そうだ!!
「も、もし!もしそうなったら、僕とプリムラ先輩は政略結婚するんです!」
「…は?」
「プリムラ先輩と僕が結婚して子どもを作って、それで僕の後をその子に継がせれば、そうしたらテナチュールがプリムラ家から内務大臣の座を奪うことにはならないでしょっ?
それが嫌なら、先輩は努力してください!!」
これは我ながら良い説得方法じゃないか?
だってプリムラ先輩はすごくモテるんだもの。
きっと相手なんて選びたい放題だし、恋人だっていてもおかしくない!!
だからわざわざ僕と結婚なんかしたくないだろうし、きっとこれでやる気になってくれるはず…!!
「なるほど、そういう事か…」
「そうです!
頑張らないと僕と結婚させられるんですよ!!
嫌でしょう?困るでしょう!?」
「…そう、だねえ」
プリムラ先輩はニッコリ笑ってくれた。
どうやら熱意が通じたらしい、良かっ…
ちゅ。
「!?」
何、今なんか唇に柔らかい何かが、ふえっ!?
あ、あれ、プリムラ先輩、何でそんな近くに?
な、なんですかその笑顔…えっ、な、何?
「それもいいかなあ…なんて」
「よっ、よっ、よくないです!!!」
「そう?とても素敵な提案だと思うけど?」
「ぬあ、えっ、そっ、ど、ど、どどどど……!」
どうしよう。
僕、とんでもない失敗を…
したのかも、しれない。
まだそこはブカツに侵略されていないはずだ…
レストランは敷居が高いから。
空いている個室を聞いて、ティーセットを頼む。
すぐに紅茶が運ばれてきて、良い香りが部屋に広がり…。
ようやくプリムラ様は、口を開いた。
「フィーデ…僕は、どうしたら」
「大丈夫ですよプリムラ様。
ルースさんがああ言ってくれたんです、ついて行けばきっと何とかなります」
「父は…もう、駄目だ、って…。
同じことをしていた僕も、そのうち死刑に…」
「それはありません!
プリムラ様、この国には特定の罪において18歳未満の者の『若さゆえの過ち』を赦す法があります。
その過ちの中には不敬罪も含まれています…
ですから、今ならまだ間に合うんです」
プリムラ様の誕生日は4月。
来年度になったらすぐに、その法は適用されない歳になる……だから僕は急いだんだ。
「間に合う…?まだ17歳だから?」
「そうです、今からでも遅くありません。
共に学びましょう、プリムラ様…
いえ、プリムラ先輩」
僕は侯爵家で、プリムラ様は公爵家。
だから外では「様」を付けて呼ぶのが当然だけど…
学園では身分の事を考慮してはいけないから。
「でも、でも、僕…初級しか、だから、来年取れるのは中級しか…」
「それもきっと大丈夫です。
ルースさんの有名な話、知りませんか?
2年次で全ての魔法学科を上級まで修めた話を。
あの時に新しい規則が出来たんです。
教授が認める者には、その教授が関与する科目に限り、初級から上級まで全てを1年のうちに履修することを許可する、って」
ふるふる、と首を横に振るプリムラさ…先輩。
「知ってる、だけど無理だよ。
ルースだから出来るんだ…あいつは天才だから!
僕は何でも初級までしか分からない。
全部全部初級止まりだ!!フィーデだって僕を馬鹿だと思ってるんだろ!?」
「そんな事ありません!あんなに沢山の科目を学ばれているのは素晴らしい事ではありませんか。
あのルースさんだって、全部の初級を修めることは出来ていないんですよ?」
プリムラ…先輩は、僕を睨みながら言う。
「…っ、どうせ、武術、だろ」
僕は答える。
「いいえ、違います。物理学です」
実はルースさん、武術でも上級を修めているのだ…
魔法武術に貢献した功績で、特別に。
それなのに…
「物理学は入門で躓いて、そのままだそうです」
「…嘘」
「本当ですよ?
物理の教授に確認してもらっても構いません」
どうしても思考に魔法の事が入り込んで、純粋な物理法則が分からなくなるそうで…
理由が天才っぽすぎて、先輩には言わない方が良さそうだけど。
「僕でも、ルースに勝てるところ、ある…?」
「もちろんです!」
「ほんとう、かなあ」
プリムラ先輩が少し前向きになった。
もう一押しだ。
「それに、広く浅くを極めた先輩なら、ルースさん以上に何かに気付ける人になれるかもしれない。
そうなればこの国にとって有益な存在だと胸を張って言えます、そうすれば家の再興も叶います!」
「…うまく行けば、でしょう?
うまく行かなかったら…どうするのさ」
しまった、押しすぎてプリムラ先輩がまた後ろ向きに…
どうしよう。
ええっと、どうなるんだっけ、確か…
「その時は僕が代わりに内務大臣をやることに…」
「ふぅん、そっか。
テナチュールがうちの家に成り代わるって事」
「そ、そういうことじゃありません!!」
「ふ~~~ん…」
しまった、間違えた。
プリムラ先輩に余計な警戒心を与えてしまった。
どうしよう。
そういうことじゃなくて、こう、そうならないように一緒に頑張っていこう的な、えーと、えーと、えーと、えーと、あっ!そうだ!!
「も、もし!もしそうなったら、僕とプリムラ先輩は政略結婚するんです!」
「…は?」
「プリムラ先輩と僕が結婚して子どもを作って、それで僕の後をその子に継がせれば、そうしたらテナチュールがプリムラ家から内務大臣の座を奪うことにはならないでしょっ?
それが嫌なら、先輩は努力してください!!」
これは我ながら良い説得方法じゃないか?
だってプリムラ先輩はすごくモテるんだもの。
きっと相手なんて選びたい放題だし、恋人だっていてもおかしくない!!
だからわざわざ僕と結婚なんかしたくないだろうし、きっとこれでやる気になってくれるはず…!!
「なるほど、そういう事か…」
「そうです!
頑張らないと僕と結婚させられるんですよ!!
嫌でしょう?困るでしょう!?」
「…そう、だねえ」
プリムラ先輩はニッコリ笑ってくれた。
どうやら熱意が通じたらしい、良かっ…
ちゅ。
「!?」
何、今なんか唇に柔らかい何かが、ふえっ!?
あ、あれ、プリムラ先輩、何でそんな近くに?
な、なんですかその笑顔…えっ、な、何?
「それもいいかなあ…なんて」
「よっ、よっ、よくないです!!!」
「そう?とても素敵な提案だと思うけど?」
「ぬあ、えっ、そっ、ど、ど、どどどど……!」
どうしよう。
僕、とんでもない失敗を…
したのかも、しれない。
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