上 下
349 / 586
学園5年目

王都のクリスマス仕込み

しおりを挟む
2学期が終わるやいなや、またも最速馬車で王宮へ。
時間も惜しいのでそのまま厨房へ一直線だ。
パーティー自体は明後日だけど、明日は王宮のダンスパーティーで厨房を使うだろうから、今日出来る所まで仕込みをやっておかないと料理人さんが寝られなくなってしまう。

「コロッケの仕込みは!?」
「はい、ジャガイモ50㎏、ふかし上がってます!」
「じゃあ順次マッシュを…少し粒を残して!
 あと、ミンチと玉ねぎは!」
「10㎏、炒め終了です」
「ありがとうございます!」

「キッシュのパイ生地は」
「仕込み終わって寝かせております」
「ありがとうございます!」

「ケーキのスポンジシート!」
「今朝からフル稼働で焼いております」
「バタークリーム、作り始めました!」
「ありがとうございます!」

「ハンバーガーのパテ!」
「すでに成型し冷凍済みです!」
「ありがとうございます!」

「ピザ生地!」
「一次発酵が順次始まっております」
「ソース仕込み完了してます」
「チーズ、フレーク状に加工済です」
「ありがとうございます!」

「唐揚げの漬け込みダレは!」
「いまショウガを必死でおろしてます~!!」
「頑張ってください!」

OK、OK!順調よ!唐揚げ以外!!

「皆さん、ありがとうございます!
 すいません、この場所借ります!!」

今回の手土産はスコーン。
プレーンとチョコチップとコーヒーの3種類をそれぞれ200個…
本音を言うと外注したいけど、俺が招く人にあげるものだから、他人に任せるわけにはいかないよな。

計量には助手を頼んでいるけど。

それに、何と今回は秘密兵器があるのだ…

「何ですか、それ?」
「魔石フードプロセッサーです!」

スコーンと言えば粉にバターを擦り混ぜる工程が地味にキツイんだけど、これにバターと砂糖と小麦粉と塩を入れてファーっと混ぜればかなりの時短!
あとは濃いコーヒー、これも実は…

「澱みに潜みたる清き雫の精霊よ、我が掌へ集まりて、我らの渇きを癒したまえ」
じゅわじゅわ…と掌に水の球が生まれる…
「…何ですかこれ?」
「液体濃縮の呪文です…よっと」
水の球を隣のボウルに移動させて、味見。
「うん、水だ」

水分を抜き取る魔法が完成して、とりあえず濃縮することには成功したのだ。
完全に水分を取り切るのは無理だけど、一歩前進したと言える。

ぶっちゃけエスプレッソが良かったんだけど、そうすると新しい道具が必要になるし、さらに言うとそんなもの発注する金は無いのだ。
コーヒー豆って紅茶より高いんだな…。

「さて、それではやりますか」

パーティー券方式で助かるのは、来る人の数が事前に決まる事だ。
準備が少し楽になる…
ただ何で200枚も売ったのか、そこだけが問題だけど。

まあでも、お世話になった人と文通してる人だけでも100超えちゃってるからな…
仕方ないのかな。

今日は生地を作って、焼くのは明日の夜から。
明日の昼は殿下と王都へ視察デートの予定だから…
いかん、考えたら負けだ。

「頑張って作ろう…」

根性論以外の正解が見当たらないからな。
やるで!!
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...