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学園5年目

愛はナンチャラを救う……

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「……は?」
「だから、ゴードをカメリアへ輿入れさせる」
「ちょっと意味分かんないです」

俺が決勝戦の解説をして大会のシメコメントを何とか捻り出している最中に、何か起きたらしい。

うん、何かは聞いた。
聞いたけど脳が追いつかない。

よく分からないけどカメリアのおーじさまがゴードせんぱいにプロポーズしてベロチューかまして拉致ろうとしたんだってさ。

分かる?
俺は分かんない。

「ゴードさんの全てが兄の好みに当てはまっちゃったらしくてですね、『何もかも愛しい』って、婚前交渉も辞さない勢いでしたよ」

こ!こんぜんこうしょうですと!?
どっちがどっちなの!?
想像つかないんですけど!!

「……先輩は、何て?」
「あうあう言うだけで全然駄目だな」

拉致はケンタウレア先生とカイト君によって何とか防がれたらしいが、今カメリア本国とジギタリス家では蜂の巣をひっくり返したような騒ぎらしい。

そらそうでしょうね!
寝耳に間欠泉でっせ!?

「とりあえず、輿入れまでに急ピッチで正室教育をするのに後宮にぶち込んだが…」
「えっ!?後宮に!?」
「側室にはしていないから大丈夫だ」
「そらそうでしょうよ!!」

何せ伯爵家と王家じゃ微妙に家柄が釣り合わない。
だから王家の養子に入れて、家庭教師と共に後宮に住み込ませて体裁を整えてから輿入れさせる…

It's perfect.

……なわけあるかい!!

とはいえさすが伯爵家、マナーや所作、ダンスの基礎はきっちり出来上がっているらしく、後は外交社交にカメリアの地理歴史文化法律……

山積みやないか!!

「だ、誰か一緒に行ってあげる人は」
「一応伯爵家から側付きが1人…」
「あと5人は付けよう?」

言葉は一緒だけど文化はだいぶ違うよ?
無理矢理知識をねじ込むよりは、詳しい人が付いて行ってフォローしてあげる形のほうが良くない?

「…問題はそれだけじゃないんです」
「まだ何かあるの!?」
「片時も離れたくないとかって、兄が王宮へ押しかけて泊まり込んでます」
「をい」

国賓!
アポなし宿泊の国賓!!
自由か!?自由人なんか!?

「まあ、こっちの国の事を分かってもらう良い機会だと思ってだな、前向きに考えてはいる…うん」

カメリアで囁かれているローズ王家の悪い噂も、払拭できるチャンスだと思ってだな…
と遠い目の殿下。
エルさまはそれを見て俺に言う。

「分かってはいたんです。
 兄だって自分が素敵だと思える人と添い遂げたいだろう、って。
 兄はジョンみたいに、逞しくて男らしい人が好きで…なのに今まで兄に婚約者だ閨係だと言って宛がわれてきたのは、ほっそりとした美しい方ばかり。
 要は周りが思う「理想の正室」像に合致した人間を、父や重臣たちが押し付けていたんです」

あ~…それで「ほっそりとした人」に対して辛辣になったのか。
あっ。

「…もしかして兄弟仲がよろしく無いのはそれが原因なのでは?」
「どういうことだ?」
「エルさまを見てください。
 典型的な「ほっそりとした美しい人」です」
「……へっ?」
「エルさまだから嫌いなんじゃなくて、ほっそりした美人だから嫌いなんじゃないですかね」

つまり「弟」が嫌いなのではなく「弟の外見」が嫌いなのだ。
そして、なぜ「筋肉の無い身体でいること」に甘んじているんだ、と…お怒りなのではないかと思われる。

つまり、スプーラ殿下は筋肉至上主義なのだ。

「魔法使いが嫌いなのも、魔法使いは大概「細身」だからじゃないですかね」
「ああ、そういう事か…勘違いしているのは周りということだな」
「そうそう、だから気に入られたいなら魔法を辞めるのではなく、筋トレすればいいという事になりますね」
「…簡単な事だったんですね」

エルさまは憑き物が落ちたような顔をしていた。
そりゃ可憐だから嫌われるとか意味わからんよな…。

「そういえば魔法書を読みながらでも出来る筋トレがあるってケンタウレア先生が言ってましたよ」
「ほう、ケンタウレア一門に伝わる秘伝か何かか?」
「ゴード先輩の身体を見るに、多分そう…あっ」
「?どうした」
「まさか…筋肉がカメリアを、救う…?」

なあ、これ、どういうノリなん?

誰か説明して??

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