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学園4年目

ゴーレムと合唱団

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とにもかくにも合唱、ということであればパート分けが必要なわけで。
デューイ君によると、この詠唱は

・高声(ソプラノ)/水
・中声(テナー)/火
・低声(バリトン)/土

に分かれているのではないか?とのことだ。
確かに水は澄んだ高い声のイメージだし、土はどっしりと構えた低い声のイメージだから…合ってる気がするな。
詠唱には魔力が必要になるので、魔法使いの中からメンバーを選出することに。

「ソプラノはもうルディさんしかいないんで…水はルディさんで」
「はい」
「テナーはいっぱい候補がいますから、ルディさんとの声の相性で決めます」
「分かった」「はーい」「…」
「バリトンは…ヘヴィさんかゴードさん…か」

ルディ君の視線の先には、全力で目を逸らすおじいちゃん先生の姿が…。
それを見たヘヴィさんが一言。

「…ゴードは拳闘士でもあるから、私が」
「おお、そうか!頼んだぞヘヴィ!」

というわけで、残ったテナーパートのオーディションが早速開催されることになった。

「楽譜読めんだからエル王子で良くねっすか?」
「そうだな、エルグランがするべきだな」
「そうですか?相性でいうならワルドさんかと」
「なっ、な、なにいってんすか!?」
「えっ、付き合ってるんでしょ?」
「ばっ…そ、そんなんじゃねえ!」
「え!あ…、ち、ちがう、の…っ…?」
「こらワルド!ルディ泣かすんじゃねえ!!」

・・・・・・

わあわあ言いながらも全員がデューイ君の前でルディ君と一緒に歌う。




結果、一番声の相性が良かったのは…

「…ぼく?」
「ですね~」

……まさかのソラン先輩、だった。


***

「♪~♪~」
「ソラン先輩、音、下がってきてます」
「~♪~♪~♪」
「ヘヴィさん、音、下がってきてます」

やっぱり楽譜が読めないってのは大変…。
2人とも音痴ってわけじゃないし、良い声してると思うんだけど…声の良さと歌のうまさは別みたい。

「ちょっと上、上です、こう、手を上に挙げてイメージを…」

2人に指導するデューイ君の仕草が何とも平〇堅。

「ルディさんが入る前にズレてちゃ駄目ですよ!」

合唱の練習は、船旅4日目にして全員が耳タコになるぐらいに繰り返されている。
よくこれで何も発生しないよな…やっぱ船の上だからかな。

「えーと、その、合わせたところを聞いたことが無いから…イメージが、ねえ…?ね、ヘヴィ殿」
「…おっ、ああ、そうだな」

今更イメージが湧かないとか言い始めた2人に、エルさまから助け舟が出た。

「なら私が試しにテナーをやりましょうか」
「エル王子、楽譜読めますもんね!お願いします」

ソラン先輩がほっとした顔でエルさまに楽譜を渡す。
一方、出遅れたヘヴィさんが立ち尽くしているところに助け舟を出したのは…

「ならバリトンは俺がやろう」
「えっ!ベルガモット教授!?」
「楽譜ぐらい読めずして高位貴族とは言えまい」
「…」「…」

王族2名が沈黙する中、ベルガモット教授はヘヴィさんから楽譜を取り上げた。

「まあ、見ていろ…でなく、聞いていろ、だな」
「じゃあ、お願いします」
「最初の音だけくれるか」
「はい」

ベルガモット教授に言われてデューイ君がフルートでそれぞれのパートの最初の一音を吹く。
3人が目を合わせて、頷き、歌い始める。

「♪~♪~」
「おお…」

まず先に土の呪文うたが1つ。
2つめから火の呪文うたが加わり、
土の4つめと火の3つめが終わるとそこへ水の呪文うたが重なり…

「「「♪~♪~」」」

土の力強さの上に火、その上から水…

そこから先は水は1つを何度も繰り返し、火は4つを繰り返し、土も同じように5つを繰り返し…ずっと一緒になっての詠唱に入り、見事なハーモニーを奏でる。

「「「♪~♪~♪~♪~♪~」」」
「……」

その水が蒸気になって、土で出来た心臓の弁を押すと、魔石の魔力が徐々に…
ああ、それだと…心臓の中に魔石があって、そこから出る魔力を、上からピストンでプシュッ、プシュッって感じで…その魔力に吸い寄せられるように土が、人の形になって…巨人が、現れる…

「…!おい、ルース?」

あれ…何か、俺、ほわ…って、なってる…
何だろ、どっかの、街が、見える…
どこだろ…行ってみよ…

「ルース!!」
「…ふわっ!?」

殿下の声で我に返る。
気が付いたら歌は終わっていた。
みんなが拍手をしている…

「おい、ルース、大丈夫か」
「は、はい…」

何だったんだろ、アレ…。

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