272 / 586
学園4年目
おじいちゃんの闇
しおりを挟む
結局俺の足じゃ遅すぎるからとウィン兄に馬に乗せて貰って武術棟へ。
「おじいちゃん先生!!」
「おおルース、ついに大ミミズと決戦じゃの」
「そう、その事で聞きたいんですけど!!」
「な、なんじゃいな」
殿下からちらっと聞いたことがある。
おじいちゃん先生が魔法馬鹿になった理由。
「おじいちゃん、ゴーレム、知ってますか」
「な!なぜそれを…!!」
「…反魂の魔法を研究してて、持っているのが土属性なら…必ず通る道だと思って」
おじいちゃん先生は目を見開いて数秒固まった後…
小さな声で、認めた。
「……さすがじゃのう」
***
おじいちゃん先生が、古びたトランクを持ってきた。
その蓋を開けると、古びた本とノート…それから指輪と肖像画が出てきた。
「…儂の、伴侶じゃ」
「へえ…可愛らしい方ですね」
「うむ、愛らしい頭の良い子じゃった」
「…そう、でしたか」
おじいちゃんが伴侶さんに出会ったのは学園だったそうだ。当時まだ婚約者も婚約者候補もいなかったおじいちゃんは、気になる子がいれば声をかけていたという。
「当時、公爵家にも侯爵家にも輿入れできるものがおらんでな。
友好国からの輿入れも見込めんかったし…何せ、カメリアも当時は一粒種じゃったから」
だから、もう全員が「平民でなければ何でもいい」という状態だったらしい。
珍しく「学園内であれば自由恋愛OK」という雰囲気だったそうだ。
「何せ身分が違いすぎて、こっちから声を掛けねば誰も話しかけられんからのう」
伴侶さんはとある伯爵家の出身で魔法の才能がある方だったらしく、魔法関連の授業で偶然隣の席になったときにその才能に気づいて声を掛けたそうだ。
「魔法師団に興味は無いか、と…最初は、そうやって王宮へ誘って、口説いたりして…」
晴れて婚約、結婚、出産…と、順調にやってきて、
「2人目を身ごもったまま、あの世へ行ってしもうた…」
伴侶さんが1人目を出産した年に、高位貴族の中でも2人目が生まれる家が出てきた。
そして彼らは欲をかきはじめた。
伯爵家では身分が足りない、次期国王はもっと高位の家との血筋で無ければ…と言い始め、生まれたばかりの我が子を側室どころか正室にしようと動き始めた。
「…その時からじゃ。
伯爵家と王家では家格が釣り合わんという常識ができたのは」
そして第一王子の人品をこき降ろし、王に相応しくないと国全体にデマを広げ、次に生まれる王子こそが正統後継者だという雰囲気を作り上げた。
「儂がいくら言おうが無駄じゃった…。
高位貴族どもが息子を軽々しく呼びつけて平気な顔をしておったのはな、教えてやっている・鍛えてやっているというお題目があったからじゃ」
だが、2人目を身ごもったのは伴侶さんだった。
彼らは慌てた。
2人目を産むのは自分の子であると勝手に思いこんでいたからだ。
「真相は分からん。
だが、ある日急に腹を押さえて苦しみだしたと思ったら…そのまま、あの世へ…」
おじいちゃんは必死で、伴侶さんの死因を探った。
遅効性の毒が使われていたことが分かり、犯人を探したところ…
「使用人が1人、首を吊った。
遺書には彼を王家から排除せねばこの国が亡ぶのだと、国を守るためにやったと書いてあった」
裏で糸を引いた者を見つけることはついにできなかった。
「だから魂を呼び出して、聞こうと思ったんじゃ。
せめて誰からどんな事を言われて苦しんでいたのかだけでも…
儂は、何の役にも立たんかった、だから」
「…反魂の術を探したんですね」
「…そうじゃ」
「そして、呼び戻した魂を入れる器が必要だと思ったから、器になるものを探したんですね」
「…ああ、でも魂を返す方法は…見つからなんだ」
「器のほうは、どうですか」
「…作ったところで、入れるものが無いんじゃ…」
「今回は無くても問題ありません」
「何じゃと?」
「…巨大サンドワーム決戦兵器として、ゴーレムを使いたいんです」
俺はおじいちゃん先生に作戦の説明をした。
おじいちゃんは…
「…作った事も、無いんじゃぞ」
「でも作り方は調べたんですよね」
「そりゃ、そうじゃが…古代魔法の知識も必要じゃし、動力代わりの魔石も…あっ?」
部屋の片隅で、一昨年行ったダンジョンでスカルキングから採れた、あの魔石が輝いている。
「…今なら、揃います。
成功確率を上げる魔笛もあります」
「……しかしな」
「魂は戻らないかもしれません、でも、だからといって先生の研究を使わない手はありません」
「…ルース」
「人でなしな事を言っているのは分かっています、お小言は後で、いくらでも」
俺はおじいちゃん先生の心に寄り添えない。
時間も無いし、人生経験が圧倒的に足りない。
それでも今ある命を一つでも救えるなら…
「成功させます、そして、全員を生きて帰します」
「ルース、お前」
「そして、出来れば何もかもを焼き尽くさなくて済むように」
みんなの力を合わせれば、勝てる。
こんなところでゲームオーバーなんて…
ありえへん!!
「おじいちゃん先生!!」
「おおルース、ついに大ミミズと決戦じゃの」
「そう、その事で聞きたいんですけど!!」
「な、なんじゃいな」
殿下からちらっと聞いたことがある。
おじいちゃん先生が魔法馬鹿になった理由。
「おじいちゃん、ゴーレム、知ってますか」
「な!なぜそれを…!!」
「…反魂の魔法を研究してて、持っているのが土属性なら…必ず通る道だと思って」
おじいちゃん先生は目を見開いて数秒固まった後…
小さな声で、認めた。
「……さすがじゃのう」
***
おじいちゃん先生が、古びたトランクを持ってきた。
その蓋を開けると、古びた本とノート…それから指輪と肖像画が出てきた。
「…儂の、伴侶じゃ」
「へえ…可愛らしい方ですね」
「うむ、愛らしい頭の良い子じゃった」
「…そう、でしたか」
おじいちゃんが伴侶さんに出会ったのは学園だったそうだ。当時まだ婚約者も婚約者候補もいなかったおじいちゃんは、気になる子がいれば声をかけていたという。
「当時、公爵家にも侯爵家にも輿入れできるものがおらんでな。
友好国からの輿入れも見込めんかったし…何せ、カメリアも当時は一粒種じゃったから」
だから、もう全員が「平民でなければ何でもいい」という状態だったらしい。
珍しく「学園内であれば自由恋愛OK」という雰囲気だったそうだ。
「何せ身分が違いすぎて、こっちから声を掛けねば誰も話しかけられんからのう」
伴侶さんはとある伯爵家の出身で魔法の才能がある方だったらしく、魔法関連の授業で偶然隣の席になったときにその才能に気づいて声を掛けたそうだ。
「魔法師団に興味は無いか、と…最初は、そうやって王宮へ誘って、口説いたりして…」
晴れて婚約、結婚、出産…と、順調にやってきて、
「2人目を身ごもったまま、あの世へ行ってしもうた…」
伴侶さんが1人目を出産した年に、高位貴族の中でも2人目が生まれる家が出てきた。
そして彼らは欲をかきはじめた。
伯爵家では身分が足りない、次期国王はもっと高位の家との血筋で無ければ…と言い始め、生まれたばかりの我が子を側室どころか正室にしようと動き始めた。
「…その時からじゃ。
伯爵家と王家では家格が釣り合わんという常識ができたのは」
そして第一王子の人品をこき降ろし、王に相応しくないと国全体にデマを広げ、次に生まれる王子こそが正統後継者だという雰囲気を作り上げた。
「儂がいくら言おうが無駄じゃった…。
高位貴族どもが息子を軽々しく呼びつけて平気な顔をしておったのはな、教えてやっている・鍛えてやっているというお題目があったからじゃ」
だが、2人目を身ごもったのは伴侶さんだった。
彼らは慌てた。
2人目を産むのは自分の子であると勝手に思いこんでいたからだ。
「真相は分からん。
だが、ある日急に腹を押さえて苦しみだしたと思ったら…そのまま、あの世へ…」
おじいちゃんは必死で、伴侶さんの死因を探った。
遅効性の毒が使われていたことが分かり、犯人を探したところ…
「使用人が1人、首を吊った。
遺書には彼を王家から排除せねばこの国が亡ぶのだと、国を守るためにやったと書いてあった」
裏で糸を引いた者を見つけることはついにできなかった。
「だから魂を呼び出して、聞こうと思ったんじゃ。
せめて誰からどんな事を言われて苦しんでいたのかだけでも…
儂は、何の役にも立たんかった、だから」
「…反魂の術を探したんですね」
「…そうじゃ」
「そして、呼び戻した魂を入れる器が必要だと思ったから、器になるものを探したんですね」
「…ああ、でも魂を返す方法は…見つからなんだ」
「器のほうは、どうですか」
「…作ったところで、入れるものが無いんじゃ…」
「今回は無くても問題ありません」
「何じゃと?」
「…巨大サンドワーム決戦兵器として、ゴーレムを使いたいんです」
俺はおじいちゃん先生に作戦の説明をした。
おじいちゃんは…
「…作った事も、無いんじゃぞ」
「でも作り方は調べたんですよね」
「そりゃ、そうじゃが…古代魔法の知識も必要じゃし、動力代わりの魔石も…あっ?」
部屋の片隅で、一昨年行ったダンジョンでスカルキングから採れた、あの魔石が輝いている。
「…今なら、揃います。
成功確率を上げる魔笛もあります」
「……しかしな」
「魂は戻らないかもしれません、でも、だからといって先生の研究を使わない手はありません」
「…ルース」
「人でなしな事を言っているのは分かっています、お小言は後で、いくらでも」
俺はおじいちゃん先生の心に寄り添えない。
時間も無いし、人生経験が圧倒的に足りない。
それでも今ある命を一つでも救えるなら…
「成功させます、そして、全員を生きて帰します」
「ルース、お前」
「そして、出来れば何もかもを焼き尽くさなくて済むように」
みんなの力を合わせれば、勝てる。
こんなところでゲームオーバーなんて…
ありえへん!!
26
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる