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学園4年目

魔笛使いと魔性?の男

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「こんな素敵な演奏ができる笛を表に出せないんじゃ…もったいないですしね!」

その言葉に、感極まったデューイはルースに抱き着く。

「……ルースさん!!」

ルースは困った顔で俺と殿下を見る。
見ながらも背中をポンポンと叩いている。

分かっている、それは友情の範囲だって。
それでも、デューイがルースに友情以上の感情を持っているのを知っているから腹が立つ。

デューイは言う。
ルースさんが困った時には一番に助けてあげたい、と。
愛しているとかそういうことじゃなくて、ただそうしたいんだ、と。
とても大事な友人なんだ、と…

それは分かる。
俺もルースが困った時には助けてやりたいと思う。
大事な友人だし、尊敬できる友人だ…

そう、俺のルースに対する感情は、親友でありたいという感情であって、恋じゃない。

でも、デューイのそれは、何かの拍子に恋に傾くような感情じゃないのか?と思うと気が気でない。

俺が最初にルースに抱いたのも、仄かな恋心だったからだ。
デューイもそうかもしれない。
そして、今は俺よりルースのほうがデューイの力になれているのも…悔しいけど、認めざるを得ない。
いつデューイの心がルースに傾いても不思議じゃないんだって…モヤモヤする。

そしてそれは、隣にいる御方も同じらしい。

「…気に入らん」

という言葉が聞こえた、直後……

***

感極まって抱きつくデューイにも、それを許しているルースにも腹が立つ。
今すぐ双方にしっかり分からせてやらねばならん。

「おい、ルース」
「何です?殿下」

俺は抱きついているデューイをそのままに、ルースの唇を奪い、そのまま舌を絡める。

「んー!んー!」

ルースが何を抗議しようが知らん。
お前にも自覚が足りん!

「は、はわわ」

デューイが慌ててルースから離れる。
奴が抱きついた場所に上書きするように、ルースを抱き寄せてキスを続行する。

「デューイ、こっちに!」

カイトの奴がデューイを引き寄せ、同じように抱きしめている。
こっちを見せないようにしているようだが無駄だな。

「…!…!」くちゅっ、ぴちゅっ…

わざと音が出る様に吸い付き、口の中を舐る。
ルースの鼻息も荒くなる。
音楽家というのは耳が良いらしいから、音だけでもこの場面が頭に残るだろう。

まったく、ルースは誰の頭の中でも随分な位置を占めているから厄介だ。

さて、周りの連中にもしっかり分からせてやったところで…
キスを一旦終わりにする。
ちゅぅ。
「んあ、はぁ…っ、何す、ぅわっ!」
そしてルースを担ぎ上げる。
そこにいた者たちに問う。
「空いている仮眠室は?」
「ええ、いつも通り一番奥は空けていますよ」

ジョンに目を塞がれたエルグランが俺に応えた。

「いつもすまんな」
「いえいえ、ルース先生と殿下の仲が良ければ良いほど私も嬉しいですから」

…つまり、ルースにジョンを取られる心配をしなくて済むということだろう。
あいつも随分と初恋を拗らせていたせいで、執着が激しいからな。

「…分からせて差し上げてください、
「ああ」

降ろして、と抗議し足をばたつかせるルースの尻をぺちぺちと叩きながら、俺は仮眠室への階段を上った。

***

「ったく、アルファードのやつ…独占欲丸出しなんだから」
「仕方ないよ、ルースはモテるからね~」

俺の片割れ、ウィンはそういって肩をすくめた。
ルーが可愛くて仕方ないのは俺よりもウィンの方だったはずなのに…
まあ、俺もルーの事は大好きだけど。

「ウィンはそれでいいのかよ」
「…まあ、ルーが幸せになるなら、いいよ」
「物分かりが良すぎるんじゃないか?」
「うん、でもここまで来ちゃったら仕方ないじゃん」

はは、とウィンは笑ってそう言った。

俺はあの日頭を下げたアルファードを見てから、心の中のルーの立ち位置が少し変わった…
いや、変わったというか、本来の位置に収まったというべきか。
ルーに感じる愛情は、肉欲を伴わないものに変化していた。
もしかしたらウィンも同じなんだろうか?

「ルーを諦めて次の恋を探す?」
「うーん、諦めるというか…昇華したっていうか」
「…そっか」

やっぱりウィンも…そうなんだな。

「でも、ルーを不幸にするやつは許さない」
「それは当然だろ」

ルーが抱かれて嬉しいのは誰かを考える。
その相手は伴侶も満足させられないようなオッサンではなく、子どもを作る道具と見做しているような野郎でもなく…ルー自身を大事にしてくれる男。


…ってよく考えたら、それって別にアルファードだけじゃないんだけどな!
だから余計にタチが悪い。

「ま、アルファードのやつがルーを不幸にしそうなら辺境へ攫っていくつもりなのは変わんないけどね!」
「それは俺も一緒」

いや、ここにいる全員が、そうじゃないかと思う。
そのくらいルーはみんなの心にいる。

アイツが居なかったら、全員がこう思うはずだ。
「俺が幸せにしてやる」って。

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