上 下
219 / 586
学園4年目

埋まる側室枠の真実

しおりを挟む
側室の枠が埋まりつつある…という話が気になりすぎて、寮に帰ってすぐ殿下に確認してみた。

「殿下、側室の枠が埋まりそうだって…本当ですか?」
「ああ、馬鹿が勝手に売りに出しているらしい」
「…は?誰がですか?」
「プリムラ公爵だ」
「またですか!?」

あいつなんぼ程やらかすねん。
馬鹿になるように洗脳されとるんか?

「正確には「プリムラ家が側室に推薦する権利」を売っているんだがな。
 あの馬鹿、賭けの胴元になったはいいが、勝手に倍率を操作した結果大損して金が無いんだろう」
「誰が買うんですかね」
「それなりに金があって、かつ一粒種が続いている貴族だろう」
「あれですね、側室になれば俺が1人は産んでくれるって噂を利用してるわけですね」
「うむ…調べたところ、どうやらもう20人ほどその気で金を払ったようだな」
「馬鹿かな?」

人間が何人産めると思ってんだ?
ホント無責任つうか無知というか…

「…いよいよお取り潰しまっしぐらですな」
「これほど馬鹿だとは思わなかったな…」

殿下と2人してため息をつく。
ため息しか出ない。
こんな馬鹿しか派閥にいないの?
コーラス様も大変ね。

プリムラさんちの息子さんは生徒会会計、か…
あ。

「まさか、生徒会費に手を付けたりはしてないですよね?」
「さすがにそれは無かろう…と、思いたいがな…」

殿下は数枚の紙を取り出した。

「フィーデが気づいたんだが、来年度の学園祭予算が多すぎるんじゃないかということだ。
 詳しく調べんと何とも言えんが…フィーデにやらせるのは危険だろうから、調査はこちらで行うから暫く手伝うふりをしてただ見守るようにと指示した。
 また洗脳などという事になれば大変だからな」

確かに、生徒会役員なら一度は洗脳されててもおかしくないもんな。

「それに、テナチュール様はここ最近急に心を入れ替えたって噂になってますしね」
「うむ、洗脳が解けたせいとも考えられるからな。
 今後は経営や政経の授業などで関わり合う事も増えるだろう。仲良くしてやってくれ。
 な」

えー!珍しい!
殿下が仲良くしてやれだなんて初めてじゃないの!?

「フィーデの存在がフリージアやバイオレットの息子にもいい影響を与え始めているし、繋がりを持っておくのは悪くない。それに、テナチュールの伴侶殿に第2子が出来たそうだし」
「え!?今!?」
「お前の嘘が良い方へ転がったんだろう。
 フィーデが側室になりたいなどと言い出す事も無かろうし、真面目な高位貴族は貴重だからな。
 但し、積極的にお前から声を掛ける事はならん」
「はい」

まあ、急に距離詰めるのも不自然だもんな。
というか…

「殿下ってヤキモチ焼きですよね、意外と」
「俺は普通だ。お前がおかしいんだ」
「…そうですかね?」

そういえば、俺って嫉妬とかしないな。
なんでだろう…

「ゼフが『そうなるように育てた』と言っていた」
「え、そうなんですか?
 あんまり心当たり無いですけど…」

言われてみたら、元々1人にフラれてもめげることなく30人にフラれ続ける役になるはずだったんだもんな。
嫉妬するほど執着してたらそうはいかないよね、フラれるって結構辛いもん。

「俺、元々は恋愛しないで一生を終える予定だったでしょうからね」
「…そうか」
「だって俺、本来なら自分の父親くらいの歳の人たちにとっかえひっかえ種付けされるはずだったんですもんね?
 まともな精神で務まるとは思えませんし、まあ…子どもを作る道具になるわけですから、そう扱われても不幸と感じない人間であるように考えてくれたんだと思います。
 歴代の当主たちが知恵を絞って…それを不幸と感じないようにする教育方法を考えたのかな、と」
「……ああ」

産む道具に途中からなるのはつらい。
だから最初からそう育てればいい。
そういえばうちの書庫には恋愛小説が無かった。
その事と多少は関係もあるだろう、と思う。

「でも、殿下…アルが俺のこと、変えてくれた。
 愛してるって、俺のものだって…
 言い続けてくれたから」

執着されたから、芽生えるものがあったと思う。
ゼフ父さんもきっとそうだったんじゃないかな…。

俺は何となく殿下に抱き着いてみる。
こうして俺からハグするのは久しぶりだ。
殿下は俺の事をすごく優しい目で見て…
それから、言った。

「ところでルース。
 お前、何か大事な事を忘れていないか?」
「?大事な事?」
「お帰りのキスをしていない」
「えっ?」
「…まだそういう事は分からんのだな。
 ではみっちり教えてやろう…ベッドの上で」

えええ!
何でそうなるのよ!!

あっ、やん!
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

処理中です...