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学園3年目

【閑話休題】どうしようもない雑誌の話

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「…編集長、どうします」
「どうもこうも…このままいくしか道は無い。あと3年…3年、何とか、持たせれば…いいだけだ」

創刊からちょうど20年の節目で、こんな目に合うとは思わなかった。
20年かけて、芸能ゴシップ誌として、そこそこの地位を築いた。
新作劇を盛り上げる為に、話を盛ることはあったけど…捏造に手を染めることになるなんて。

「俺もお前も、家族の命がかかってるんだ…。
 2人だけになっても何とか発行しなきゃならん、だろう?」
「…そう、ですよね…」

2人は同郷だった。
王都から北東、馬車で15日ほどかかるその場所には、自分たちを育ててくれた父たちがいる。一緒に育った兄弟も。

悪夢の始まりは1年前。
アルファード殿下の婚約者を当てる賭けがスタートする直前だった。
突然職場に、領主様が来て言ったのだ。

「お前たち2人とも、私の領地の出身だそうだな」

そこから先は、何を言われたのか覚えていない。
ただ、逆らえば両親の命も兄弟の命も危険に晒されることだけが分かった。
だからその領主様が言うままに記事を書き、雑誌に載せた。

部下が自分たちの記事を事実無根だと糾弾しても、黙ってそのまま進むしか無かった。
多くの部下は去ったが、事情を察してくれたのか芸能記事ならと寄稿してくれる者も何人かいた。

それももうこれまで。
荒唐無稽な捏造記事は、信用だけでなく面白味さえも奪った。
売上は落ち込み、広告主は離れ、原稿料が支払えなくなり、申し訳ないと寄稿も断るようになった。

婚約発表に合わせて、王家を悪者にする記事を書けと言われて、ほぼ思考停止した頭で思いついた内容は、何年か前に人気を博した劇のパクリだった。

「何で、週刊誌なんかにしたんでしょうね」
「…月刊誌ならまだ、楽だったのにな…」

今日もまた、徹夜で文章を書かなければならない。
次の締切まであと1日しかない。

「いっそ、不敬罪で捕まった方が…楽か」
「そう、ですね…それ、いいですね」

不敬罪は最悪、死刑もあり得る罪だ。
しかし、追い詰められた2人には、死ぬほうがどうにも楽に思えた。

「じゃあ、こういうのはどうだ?アルファード殿下は国王陛下が不貞で作った子どもっていうのは」
「えー、じゃあ誰の子どもにするんですか?」
「そりゃー結婚させないようにするんだから、ユーフォルビアさんとの間に作ったのでいいだろ」
「あー、そんなんで死刑になるかなあ…あ、そーだ、陛下が産んだっていうのはどうです?」
「あん?」
「貴族って、産んだ方が下なんですって!」
「へ~、そうなのか?おかしな連中だなぁ!」
「編集長~、それ不敬罪っすよぅ?」
「じゃ~そう書いちまえ!」

おかしなテンションで明日締切の文章を書く。
何とか、何とかして不敬罪で、捕まりたい…
できれば死刑がありがたい。

「お前さあ、死刑の前に何頼む?」
「酒でしょ、酒…とびきり高級で美味いやつ!」
「お!いいね、ツマミは最高級チーズか、肉…」

その時、編集室の扉が音を立てて開いた。

2人の虚ろな目に映ったのは…
黒っぽい服を来た、男たちだった。

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