上 下
191 / 586
学園3年目

身近にいるSランク 2

しおりを挟む
ジョンさんの同意を得られたので、このままランクアップシステムの草案について話し合うことに。
タイミングよく魔法総合研究室を訪ねてきたソラン先輩を捕まえ、話に加わって貰う。

「まずは、ランク分けなんですが、あまり細かくしても自由度が下がるのでまずは6段階で考えたいかと」
「ほう、どう6つに分けるんだ?」
「まずはビギナー。冒険者登録したての状態です。いくつかの依頼を受けつつ、まず3か月生き延びたらDランクに昇格します」
「ビギナー…初心者、ということか」

ふむふむ、とジョンさんが頷く。
ソラン先輩とエルさまも頷く。

「で、この3か月の間に冒険の心得とか野宿の仕方とか、最低限の技能と魔生物の基礎知識を身に付けてもらって」
「なるほど、Dランクになった時点で、冒険者っぽく振舞えるようになるんだな」
「はい、パーティーを組んでダンジョンに行くのも可…にするには、ズブの素人では困るかと」
「まあ、確かにな」
「それで、Dランク以上の依頼をいくつか受けて成功させたらCランク、CランクになったらまたCランク以上の依頼をいくつか受けて成功させたらBランク…と上がっていって、Aランクになったら自由…つまり、今までの冒険者と同じ生き方ができるようになります」
「つまり、Aランクが最高到達点?」
「先生、6段階って言ってませんでした?」
「ああ、Aの上にSランクを設定しようかと」
「ほう?」

俺はソラン先輩に尋ねる。

「現状、最強の魔生物となると何になるんです?」
「魔物ならドラゴン、魔獣ならフェンリルかな…」
「はー、なるほど」
「俺もドラゴンと戦った事は無いな…。遠目に見たことはあるんだが」
「何と!いつ!?どこで見たんです!?」
「あれは15の時だから…クレピスの山奥だ」
「あの山岳国家の山奥…相当ですね」
「俺はそこの生まれでな。
 そのドラゴンを見た時に、いつかあれを倒せる男になりたいと思って冒険者になったんだ」

なるほど、竜殺しドラゴンスレイヤーってやつに憧れたんですね。
わかります。

「ドラゴンを倒すっていう依頼はあるんですか?」
「無い。ドラゴンの死骸を探す依頼はあるが」
「倒すっていうのはほぼ不可能?」
「そもそもドラゴンを倒せるほどの装備を抱えていけるようなところに彼らは棲んでいないし、人間を襲いに出てきたこともないらしい。死ぬときには棲み処を離れるそうだが…」
「伝説の生き物ですし、個体数も少ないと聞きますからね」
「はー、なるほど。じゃあフェンリルは?」
「フェンリルのほうは時々討伐の依頼が出るぞ。ただ単独で挑むものでは無いな…最低でも4人はいないと」

すると、ソラン先輩が驚きのあまり立ち上がって言った。
「ええ!?4人で倒せるんですか!?」
ジョンさんは涼しい顔で言った。
「ああ、上位の光魔法使いがいれば何とかなる」
いや、あなたがいるから何とかなったんでは?
「…ジョンさんはフェンリルを討伐したことが?」
「まあ、3回程…剣士が足りんからと誘われてな」

どういう誘い方だよ、素直に誘えよ。
つーか3回出て3回とも倒したのか…
すげーな。

「じゃあ「フェンリルを倒す」のがAランクになるための最後の試練…で良さそうですね」
「うむ、それでいいんじゃないか?フェンリルはわりとどこの国でも出るからな」
「問題はビギナーからBまで…そういえば、スライムって物理攻撃じゃ倒せないでしょ?剣士が冒険者になって最初に戦うのは何なんですか?」
「ネズミか蝙蝠か蟻だな…場所にもよるが」
「ラット・ラットかブラッディバットかキラーアントですね」

ソラン先輩が正しい名称で言い直す。
んもう…細かいんだから。

「魔法使いは大体スライムからスタートなのかな…」
「まあローザンヌ地域だけならそうじゃない?」
「じゃあ今回はローズ国内だけで考えればいいから、そこからスタートですね」

まあ、細かい部分は後日でもいいかな…。
ちくちくメモをしているところへ、思い出したようにジョンさんが聞いてきた。

「ところでSランクになる条件は?」
「Aランクの依頼をいくつか成功させて、かつ人品に問題が無く、ダンジョンに詳しくて魔生物への知識も豊富な方をS…みたいな」
「人品も見るのか?それに知識も?」
「みんなが尊敬するような存在の方だけをSランクにしないと、上を目指したいと思わなくないですか?」
「なるほど、それこそ「英雄」レベルってことか」
「あ~そうか、「英雄」さんがいたか…じゃあ7段階にして「別格」ランクを作ろう」

すると、エルさまが俺に質問した。

「ところでルース先生の中でSランクって誰なんですか?」
「ああ、ジョンさんですね」

すると、ジョンさんが驚いた顔で俺を見た。

「は?」

は?じゃないんですよ。
どう考えてもあなたですけど?

「フェンリルを3回討伐して魔物の大発生で活躍して爵位貰って一国の王子と結ばれようって人間がSランクでなきゃおかしいでしょうよ」
「待ってくれ!俺は、そんな凄い人間では…」
「…」「…」「…」

う~わ~。
ここにも自覚の無い人おったで!!

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

処理中です...