上 下
163 / 586
学園3年目

「穴」と説教と宴

しおりを挟む
「…っと、これで、チェック完了ですね」
「そう、この穴が一番入口に近い穴…。
 で、出口までの間で見落としてなければOKだね」

5日かけて奥まで踏破し、5日かけて戻ってきた俺たち。戻りは魔物や魔獣があまり出なかったから、「穴」のチェックもしっかりできた…はずなんだけどな~。
あの最初に感じた長い穴の終点は見つからずじまいで…何だか消化不良気味だ。
ただ今回はゴブリンが出て来なかったので、それは良かったと思う。

しかしそれにしても結構「穴」開いてるもんだな…
調査によれば、凡そ6種類の穴があるようだ。
つまりサンドワームが6匹はいたということで、さらに卵ワラワラ…となるととんでもないことに…。

「穴の大きさから推測するに、どれも砂漠サイズにはなってると思う」

とソラン先輩が言うので、1個1個業火インフェルノやら大波ビッグウェイブやら暴風テンペストやらをぶちかましつつ帰ってきたわけだけど、外に出て死んでたのは2匹だけ。
あとの4匹はどこでどうなってるのか分からない。
ヘヴィさんが持ってきた黒焦げのアレが何かわからないままだから、あれを討伐数には入れられないしな…。

「じゃが大分魔物も間引けたし、これで暫く平穏になるといいんじゃがなぁ」
「今のうちに管理体制整えろって親父に言っとく」
「それにしても腹減ったなあ」
「うん、もうちょっと食料が必要だったね」

後方で穴発見隊をしてくれたヘザー先輩&カイト君、おじいちゃん先生&ゴード先輩の2パーティーも、穴を見守りつつ何匹も魔物を討伐していて、素材も魔石もたんまりだけどその分動いてお腹が空いちゃったんだよね。

「やっぱり砦を建てておいて良かったじゃろ?」
「そうですね、それは確かに…ありがとうございます」
「ふふん、もっと感謝してもよいのじゃぞ?」

砦に帰って、ウィン兄とディー兄は馬の様子を見に行った。
馬への愛がすごいよな…俺たちは砦の中に入って先に休もう。
砦の扉をノックして、宿屋の人が出てくるのを待つ…ん?なんか足音が多くないか…?
すると扉が勢いよく開いて、宿屋の人じゃない人が3人出てきて、いきなり頭を下げた。

「この度は大変申し訳ございません!!」
「今後、ダンジョン管理につきましてしっかりとやっていく所存です!」
「領地経営についてもう一度見直しを図ります!」
「親父、父さん、兄貴!?」

そう、カイト君のご家族だった…。

***

「いいですか?ダンジョン内の魔物の数が適切に保たれなくてはなりません。
 ここのようにあまり人の来ないダンジョンを管理する場合は、最低でも年2回は最深部まで行って帰って来るという依頼を冒険者ギルドに出すなど…」
クリビアさんがカイト君のご両親に懇々と説教している。

俺たちはそれを後目しりめに出された食事をモリモリ食べる。
カイト君ちの奢りだから、遠慮なく食べる。

「チキンうめー!」
「パンがやわらけー!」
「新鮮…こんなに野菜って美味しかったんですね」
「は~…何より牛乳がうめ~…」

「いいですか、ダンジョンから魔物が溢れるようなことがあれば…」
まだ説教は続いている。
聞くと、クリビアさんはダンジョン管理の甘い領主に指導して回る立場の人らしい。
それって結構偉い人なのでは…貴族担当ってそういうことか。
それでも聞かなければ、統括の名前で訴訟に打って出るとのことで…それで家名がいるのね。
貴族って平民から訴えられても無視する傾向があるからなあ。
何か貴族として申し訳ない。

「お腹いっぱいになったら、眠くなってきました…」
「僕も…」
「奥にベッドも入れております!どうぞお休みください!!」
「じゃあ、お言葉に甘えて…」

今日は砦で一泊だ。
明後日から学園か…また忙しくなるんだろうな。

そういえばあの子…ジュリって言ってたっけ、ノースさんが任せといてって言ってたけど…大丈夫なのかな?

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...