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学園3年目

2年ぶりの里帰り ~リリー君視点~

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大神殿で文献をあさったり、建物の中に魔法陣が隠れていないか探したりして数日。

結果としていくつかの魔法陣が見つかったけど、書き写すのもなかなか大変で…。
というわけで、書き写し作業は神殿に残る古代魔法チームにお任せして、僕らは大神殿から鉱山都市へ移動することになった。
この道程だとうちの領地で一泊することになるから、ついでに里帰りでもしようかと思うんだけど…
本当は帰り道でって言ってたのが、父の都合が悪いんだってさ。生意気だよね?

別にあんたのために帰るわけじゃないのに。

うちの領地では昔から大神殿で使う道具だとか食料を作っていることもあって、当主は中央で神殿関係の部署長を歴任してきた。はっきり言って閑職なんだけど、現当主の父はそれが不満らしくてさ。
それで、家業は変えられないけど、せめて王族と「懇意になって」地位を上げたいんだって。

そこで、当主を継がない僕に白羽の矢が立ったってわけ。

「どんな手を使ってもアルファード殿下とお近づきになりなさい」

だって。
そんなこと言われても、10歳の子どもに何ができるっていうんだよ。
結局、考えた末に出たのは「入学式の時に殿下の前でコケて気を惹く」っていうちゃちな作戦。
破れかぶれだけど作戦が成功したのは、ただ運が良かったから…なのに。

そしたら今度は、
「もっと距離を縮めて、必ず抱いて頂きなさい」

だって。
それって10歳の子に言うことなの?
それに大体、殿下だってその時12歳だよ。
あんまり人を馬鹿にしすぎじゃない?

なのに毎週手紙が来て、内容は閨での奉仕だとか男を誘惑する方法とかそういうのばっかり。
僕が魔法でどれだけ成果を出しても興味なしなのに、今回殿下領にお連れする…って言ったら狂喜乱舞してるし。
飛び級のことだって、アルファード殿下と同級生になることばっかり喜んで、僕が頑張ったことは1つも認めてくれなかったしさ。

確かに、うちの領地に火属性も水属性も必要ない。
農地が多いしご先祖がしっかりと水路を整えていてくれたお陰で水不足の心配もない。だから土属性が一番重宝されるし、当主になる兄は土属性魔法の使い手だ。
だから、どんなに火や水の魔法が使えても意味がないって…褒められることなんてなかった。
兄の初級土魔法のほうが役に立つってさ。

あ、兄の事は嫌いじゃないよ?
僕にまともな内容の手紙をくれるのは兄だし、
魔法の成果を認めてくれるのも兄だし、
土魔法を上位まで使いこなせるのは兄の方だし、
何なら地位ばかり追いかけて何もしない父の代わりに領地を経営してるのも兄の方だし。
兄の伴侶も僕に優しいし、2人はとても仲良しで、僕の理想なんだ。

そうそう、この前、甥っ子が生まれたんだよ!
その子に一目会いたくて里帰りを決めたんだ。
あ~、可愛いんだろうな~。

だから父は正直いらないんだよね。
殿下に失礼な事言いそうな予感がするし。
あとルースさんにも…。

はっきりいって、今僕が殿下の近くにいるのは、ルースさんの側に殿下がいるなんだから。
ルースさんと仲良くなったから、自然と殿下がついてきただけ。
僕もルースさんとなら仲良くしたいと思うし、一生友達でいたいし、できれば親友になりたい!
だから殿下とも友達ではいられると思うよ?

でもさ、殿下に抱かれるのなんか絶対無理。
だってさ、コトの最中でも心の中にはずっとルースさんがいるんでしょ?
そんなの絶っっっ対に嫌!
僕は僕だけを好きでいてくれる人がいいの!

だから、僕は今度こそちゃんとした作戦を立てた。

実はね、父を黙らせることができて、しかも好きな人と一緒になれる方法があるんだよ。
ヘザー先輩と一緒に後宮へ入るの。
子どもが2人出来たらお互い1人ずつ産んだことにして、そうすれば一生そこで2人で暮らせるし、父は王族と縁ができて大喜びでしょ。

まあ、ぬか喜びなんだけどね。
殿下の子どもなんか産まないからね。
何度も言うけど、殿下とはそういうの無理!

僕、ヘザー先輩ともう約束してるんだ。
実はもうキスまで進んじゃってるもんね!
みんなには内緒だけど、順調に愛を育ててるよ。

……魔王ヘヴィさんにはまだ、言ってないけど。

ヘヴィさん、どうやらクリビアさんを先輩の伴侶にしたいみたいでさ…
綺麗だし優しいし大人だし、分かるんだけど!
分かるんだけど!!

僕だって負けないからね!
最強の魔法使いを黙らせる実力をつけてみせる!

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