144 / 586
学園3年目
腹の立つミミズの話 ~アルファード視点~
しおりを挟む
ルースとノースのやつがシャラパール語でこそこそやっている。
気に入らんので中に割って入ると、2人は神妙な顔つきで俺とお祖父様に言った。
「実は、大変なことが起きるかもしれなくて…」
大変なこと?
なんだそれは。
「サンドワームがシャラパールでもローズでも増えてるみたいなんです」
「何だって?」
「説明する、シャラパール最近、乾燥してる。畑、水ない、育たない、だから食料ない、争う」
「その乾燥の原因が、サンドワームじゃないかって話で…」
2人が言うには、こうだ。
サンドワームは大きければ大きいほど、多くの水を必要とする。
砂漠地帯で水を得るなら地下深くになるから、より見つけづらくなる。
すると生存確率が上がり、より大きく成長する。
「学園のやつより大きいやつ…というと、もはや想像がつきません。
それともう一つ…大きいやつがいるだけでなくて、比較的良く見られるサイズ…1~3m程度のものが大発生している可能性です」
「大きいの一匹、小さいのたくさん、効果一緒。乾燥する…畑、だめになる」
なるほど、そっちの線もあるのか…。
それならこの前のように、おびき寄せて叩くしかあるまい。
国として何かできる事があれば良いのだが…。
「サンドワームの好きな餌が何か、は分からないですが…」
「大きな魔物、人間たべる。大きなサンドワームも、人間食べる思う…。
今、争う起きてる、人死ぬ…それ食べてる?もしかして。
…魔獣の大発生と同じになるのじゃない?」
「何じゃと!?」
そんな馬鹿な!
魔物の大発生は何が要因なのかまだ分かっていないんだ、魔獣の大発生と一緒にはできん…とは、思うが…
そういう場合もある、としたら…
「つまり、あの化け物ミミズが大発生するというのか?」
「…今までの記録には、大発生の時に群れが単一の魔物で占められている事例はありません」
「全然、つかない、想像。サンドワームだけ増える、おかしい」
「サンドワームの卵や小さな個体は、乾燥地帯の魔物の生態系を支えているそうです…スライムと同じく。
それが沢山増えると言うことは、それを食べている魔物も増える…エルグラン王子の説とも共通しています」
「どこかで、魔物、増えてる。
もしかして、隠れてる…」
「そう、大きなサンドワームが掘った穴の中…とかで」
…ということは、つまり…
「もしかしたら、超巨大サンドワームがいて、その上1~3m級も増加しているんじゃないかと」
「そう、恐ろしい、サンドワームの穴、ゴブリンの巣穴なる」
「暗き森の遺跡でも、道の端に開いた穴からゴブリンが出てきました。あの穴がサンドワームの物かはわかりません。ただ、あの時…ヘヴィさんが正体の分からない黒焦げの何かを持ってたの、覚えてますか?」
「ああ、そう言えば」
「あれがサンドワームだったら…?」
「……!!」
まさか!?
あれがそう繋がるというのか?
「実は、もう一つ、恐ろしい可能性についても考えたんです」
「何だそれは」
「ここ最近ローズ王国内で見つかっているサンドワームは、誰かに飼育されていたんじゃないかと…」
「何だって!?」
「その誰か、が、人間なら…まだいいんですけど」
「まだいい?」
まだいい、とはどういうことだ?
それは最悪の事態のような気がするが…
「最悪なのは、ゴブリンが飼育している場合…です」
「ゴブリンが?そんなことをするのか?」
「分からない、けどあいつら頭いい、武器作って戦う、道具使って魔獣捕まえる。
村、乗っ取る、増える、人間と戦争する、聞いたことある」
俺も記録として見たことはある。
確かその戦いで活躍したのが「英雄」では無かったか?
「…ゴブリンって、人間に良く似てませんか?
属性がまちまちで、魔法を使うのもいれば武器をつかうのもいる」
「そう言われると…そうかもしれんがの…」
ルースは真剣な顔で訴える。
この可能性を少しでも考えるべきだ、ということだろう。
国家の安全の為ならば、用心しすぎるということは無い。
少なくとも想定しておくことはできるだろう、荒唐無稽と言うものはいるかもしれないが。
さらにルースは続けた。
「でも、ゴブリンは人間と違って、捕まえて尋問することができません。
そもそも言葉が通じな…い、です、よね…?」
「どうした?」
ルースが何か思いついたようだ。
これの思いつきは馬鹿にできん。
黙って続きを待つ。
ルースが口を開く。
「通じたら、何か、変わる…?
試す価値は…あるかもしれません、ちょっとサンダーアーム…」
「なるほど!」
「試す価値はありそうだな…!」
「ではゴブリンを捕獲せねばならんということか…これは難題じゃな」
「…いい罠、ネリネ教授に聞いてみる」
どうやら少しは光明もあるようだ。
それに賭けてみるのもいいかもしれんな。
ルースの言うことが杞憂で終わればいい。
だがこいつの「嫌な予感」は大体当たる。
それこそ「思いつき」と同じように。
国家を、世界を脅かす可能性が…
この地下に眠っているのかも、しれない。
気に入らんので中に割って入ると、2人は神妙な顔つきで俺とお祖父様に言った。
「実は、大変なことが起きるかもしれなくて…」
大変なこと?
なんだそれは。
「サンドワームがシャラパールでもローズでも増えてるみたいなんです」
「何だって?」
「説明する、シャラパール最近、乾燥してる。畑、水ない、育たない、だから食料ない、争う」
「その乾燥の原因が、サンドワームじゃないかって話で…」
2人が言うには、こうだ。
サンドワームは大きければ大きいほど、多くの水を必要とする。
砂漠地帯で水を得るなら地下深くになるから、より見つけづらくなる。
すると生存確率が上がり、より大きく成長する。
「学園のやつより大きいやつ…というと、もはや想像がつきません。
それともう一つ…大きいやつがいるだけでなくて、比較的良く見られるサイズ…1~3m程度のものが大発生している可能性です」
「大きいの一匹、小さいのたくさん、効果一緒。乾燥する…畑、だめになる」
なるほど、そっちの線もあるのか…。
それならこの前のように、おびき寄せて叩くしかあるまい。
国として何かできる事があれば良いのだが…。
「サンドワームの好きな餌が何か、は分からないですが…」
「大きな魔物、人間たべる。大きなサンドワームも、人間食べる思う…。
今、争う起きてる、人死ぬ…それ食べてる?もしかして。
…魔獣の大発生と同じになるのじゃない?」
「何じゃと!?」
そんな馬鹿な!
魔物の大発生は何が要因なのかまだ分かっていないんだ、魔獣の大発生と一緒にはできん…とは、思うが…
そういう場合もある、としたら…
「つまり、あの化け物ミミズが大発生するというのか?」
「…今までの記録には、大発生の時に群れが単一の魔物で占められている事例はありません」
「全然、つかない、想像。サンドワームだけ増える、おかしい」
「サンドワームの卵や小さな個体は、乾燥地帯の魔物の生態系を支えているそうです…スライムと同じく。
それが沢山増えると言うことは、それを食べている魔物も増える…エルグラン王子の説とも共通しています」
「どこかで、魔物、増えてる。
もしかして、隠れてる…」
「そう、大きなサンドワームが掘った穴の中…とかで」
…ということは、つまり…
「もしかしたら、超巨大サンドワームがいて、その上1~3m級も増加しているんじゃないかと」
「そう、恐ろしい、サンドワームの穴、ゴブリンの巣穴なる」
「暗き森の遺跡でも、道の端に開いた穴からゴブリンが出てきました。あの穴がサンドワームの物かはわかりません。ただ、あの時…ヘヴィさんが正体の分からない黒焦げの何かを持ってたの、覚えてますか?」
「ああ、そう言えば」
「あれがサンドワームだったら…?」
「……!!」
まさか!?
あれがそう繋がるというのか?
「実は、もう一つ、恐ろしい可能性についても考えたんです」
「何だそれは」
「ここ最近ローズ王国内で見つかっているサンドワームは、誰かに飼育されていたんじゃないかと…」
「何だって!?」
「その誰か、が、人間なら…まだいいんですけど」
「まだいい?」
まだいい、とはどういうことだ?
それは最悪の事態のような気がするが…
「最悪なのは、ゴブリンが飼育している場合…です」
「ゴブリンが?そんなことをするのか?」
「分からない、けどあいつら頭いい、武器作って戦う、道具使って魔獣捕まえる。
村、乗っ取る、増える、人間と戦争する、聞いたことある」
俺も記録として見たことはある。
確かその戦いで活躍したのが「英雄」では無かったか?
「…ゴブリンって、人間に良く似てませんか?
属性がまちまちで、魔法を使うのもいれば武器をつかうのもいる」
「そう言われると…そうかもしれんがの…」
ルースは真剣な顔で訴える。
この可能性を少しでも考えるべきだ、ということだろう。
国家の安全の為ならば、用心しすぎるということは無い。
少なくとも想定しておくことはできるだろう、荒唐無稽と言うものはいるかもしれないが。
さらにルースは続けた。
「でも、ゴブリンは人間と違って、捕まえて尋問することができません。
そもそも言葉が通じな…い、です、よね…?」
「どうした?」
ルースが何か思いついたようだ。
これの思いつきは馬鹿にできん。
黙って続きを待つ。
ルースが口を開く。
「通じたら、何か、変わる…?
試す価値は…あるかもしれません、ちょっとサンダーアーム…」
「なるほど!」
「試す価値はありそうだな…!」
「ではゴブリンを捕獲せねばならんということか…これは難題じゃな」
「…いい罠、ネリネ教授に聞いてみる」
どうやら少しは光明もあるようだ。
それに賭けてみるのもいいかもしれんな。
ルースの言うことが杞憂で終わればいい。
だがこいつの「嫌な予感」は大体当たる。
それこそ「思いつき」と同じように。
国家を、世界を脅かす可能性が…
この地下に眠っているのかも、しれない。
46
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる