上 下
106 / 586
学園3年目

本業はこちら 〜トレッド視点〜

しおりを挟む
「王宮内部の勢力図…これは、本当なのか?」
「そうですね、何せ王宮に泊まり込んでこの目で見てこの耳で聞きましたから…間違いないです」
「ふーむ…」

上司は考え込んだ。
巷での噂とあまりに違う…そんなところだろう。

「正室はルース・ユーフォルビアで決定なのか?」
「余程のことがない限りは」

殿下の正室を当てる賭けが始まってからしばらく。
世間では家格順が順当…と思われているらしく、やはり一番人気はカメリア王国第二王子「エルグラン・カメリア」だ。その次は公爵家のご子息…。
しかし、俺は確定事項として、エルグラン王子は側室に入ると知っている。
何せ本人がそう公言している。
恋人ジョンともラブラブだし。

ただ、学園内のことが外へ漏れることは殆ど無いから、平民みんなの耳には届いていない。

「だが、公爵家が黙っていないだろう」
「ええ、それは間違いなく。
 なので事件が起こることは間違いありません」
「そうか…まだ続けられそうか?」
「それは問題なく。
 取材対象の方々とも友好な関係です」
「そうか、期待してるぞ!」

上司は俺の肩をポンと叩いて、上機嫌で席を立つ。
きっともう1つ上へ報告に行ったんだろう。

ただ、ワケあって、ここ1年ほど俺の書いた記事は当たり障りのないやつに変更されている。
上司の上司がとある公爵家に買収されているからだ。
それを知らずに怒鳴り込んだら、

「うん、買収?されてるよ?
 結構お金くれるっていうからさ~。
 その上カワイイ子紹介してくれるって言うし?
 あ、どっちも手はつけてないから大丈夫よ!」

って軽く言い放たれた上に、

「某公爵家が失脚したら、お前の取材を纏めたルポ本出して大儲けだぜ~!」

と言われて、あっハイ…となった俺の気持ちよ…。

おまけに、

「そーそー、会社ぐるみで買収されてることになってっからさ、そのつもりでやってちょ。
 君は「俺の記事が握りつぶされてる!」って酒場で嘆く係だかんね、それもヨロ~」

だとよ。
本当にタヌキ野郎しかいねえなこの新聞社。

んでもって、俺の上司は俺の記事をいちいち報告して上に指示を仰いで記事を差し替える係。

「この記事クソつまんねーって思うけど、これで買収してきたやつらを騙してるんだと思うとスラスラ書けちゃうんだよなぁ…俺天才じゃね?」

はいはい、天才天才。

そんなわけで、これからも俺は心置きなく潜入取材を続けられるってことだ。
つまり、まだまだあいつらと楽しく付き合ってていいってことでもあるな。

俺の学生時代なんてバイトばっかで何にも無くて…
それがこんなふうにやり直せるなんて、思っても見なかったな。
本当、あいつらには感謝しないと…

特に、気づいても見て見ぬ振りの殿下と、俺の仕事に無頓着なルースにはね。

「さてと、次は何を口実にあそこへ行くかね…」

魔石工学の上級でも取るかなあ。
それが1番手っ取り早い。

「もー1年くらい学生さして貰うかな」

学費はおいおいルポ本の売上で返すってことで。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...