116 / 586
学園3年目
楽譜読めぬ者たち
しおりを挟む
ルディ君の涙に、若い神官長は折れた。
好きなだけ持っていけと言われたので、遠慮なくゴッソリと楽譜をゲットした俺たちは武術棟の方に引き返す。
「そういや俺、楽譜読めないんですよ」
「安心しろ、俺もだ」
「安心できるか馬鹿!ここでもルディ頼みか…」
「さすがにこの量を1人じゃきついでしょ…読める人を探しましょう、できるだけ大勢!」
「おねがいします!」
武術練習場に戻ると、砦がほぼ出来上がっていた。
屋根は付いてるし、あとは窓を嵌めるだけ…かな?
王子とジョンさんが仲良く窓を外枠に取り付けているのが見える。いつ見てもラブラブだな…。
「おー、戻ったか」
「戻りましたぁー、大量ですよ!」
「ほー、良く借りられたのぉ、すごいな」
「ルディ君が活躍してくれたので」
あと神官長の自爆とね。
「神殿というもんはどうにも頭が堅くてのぉ、なかなかこういうもんを貸し出してくれんのじゃ…
やや、これはまた古いやつまで持ってきたな」
「おじいちゃん先生、楽譜読めますよね?」
「いや、さっぱり読めん」
えっ!予想外!
「誰か読める人知りませんか?」
「それなら知っとるぞ、何人いるんじゃ?」
「えー…沢山?」
「分かった、明後日まで待てるかの?」
「あ、そりゃもう、はい」
おじいちゃん先生に楽譜を読める人を頼めたので、賛美歌のことは一旦明後日まで置いとくことにして、俺たちはまた古代魔法の文献を読むことに。
「爵位の高い方なら読めるわけじゃないんですね」
「いいとこの子は楽器やるもんだと思ってたんだけどなぁ…そういうもんでもないんですか?」
「爵位より信仰心がものをいうのかもしれんな。
楽譜見て歌うのは聖歌隊くらいのもんだしな」
「あー基本耳で聞いて覚える感じですよねー」
分かる分かる。
「あ、そういえばワルド先輩、古代語の件は?」
「おーそうそう、古語でドロップは雫、ウォーターは迸り、ウォーターアローは穿つ水…って、ここに対応表書いて来たわ、光のもついでに聞けたから、これも」
「へえ…ライトは月の欠片って言うのか…ヒールは精霊の…施し?施されてんだ、俺たち…」
「古代の人って詩的な表現を好んだんですね」
ルディ君が「詩的」なんてアカデミックな言葉で表現してるけど、要は中二病的なアレだよな…
「こりゃあ……大変だ」
「でも、詩的な表現だから、歌には合いそうだな」
「あっ、確かに!」
ルディ君、賛美歌に目をつけたの、大正解かも」
「ほんとですか!?」
「…信心がこんなとこで役立つなんて……。
やっぱ無駄な事って無いのかもしれないなぁ…」
ワルド先輩が妙に深い事を言って、俺たちはまた属性を付与する魔法の再生に取り組み始めた。
「イメージ…イメージかあ」
「詠唱を元にイメージすんのが大変だよな」
「古代魔法の詠唱は今でいう理論なんですかね?」
今は科学がそれなりに発達して「こういう理屈でこうなって、だからこういう効果の魔法が出るんですよ」って理屈をつけられるから、誰でもイメージしやすくなってるんだけど、昔は何とかの精霊がいっぱいいたのかもしれないなぁ。
そんなことを考えていると、ルディ君が言った。
「発音を探るのも心が折れそうです、けど…」
「けど?」
「1人じゃないから、楽しくできます」
「ルディ…」
はにかむルディ君。
友だちが出来て良かったな…的な顔をする教授。
ほっこりする俺とワルド先輩。
そこへ、タイミング良く王子が声を掛けてきた。
「ルース先生ー!砦が出来ましたよー!」
「窓の取り付け、完了です」
「えー、もう出来たんですか!?早いな!」
「図面があるとイメージが固まりやすいから、壁を出しやすいんだよね」
「グランド・インフェルノも覚えましたし!
土を焼くのに地獄味はいらないですしね!」
やっぱ魔法馬鹿たちはすげえなぁ。
「あれ、おじいちゃん先生は…?」
「楽譜読める人に連絡してくるって」
「えっ…今?」
変だな…
明後日って言ってたのに。
好きなだけ持っていけと言われたので、遠慮なくゴッソリと楽譜をゲットした俺たちは武術棟の方に引き返す。
「そういや俺、楽譜読めないんですよ」
「安心しろ、俺もだ」
「安心できるか馬鹿!ここでもルディ頼みか…」
「さすがにこの量を1人じゃきついでしょ…読める人を探しましょう、できるだけ大勢!」
「おねがいします!」
武術練習場に戻ると、砦がほぼ出来上がっていた。
屋根は付いてるし、あとは窓を嵌めるだけ…かな?
王子とジョンさんが仲良く窓を外枠に取り付けているのが見える。いつ見てもラブラブだな…。
「おー、戻ったか」
「戻りましたぁー、大量ですよ!」
「ほー、良く借りられたのぉ、すごいな」
「ルディ君が活躍してくれたので」
あと神官長の自爆とね。
「神殿というもんはどうにも頭が堅くてのぉ、なかなかこういうもんを貸し出してくれんのじゃ…
やや、これはまた古いやつまで持ってきたな」
「おじいちゃん先生、楽譜読めますよね?」
「いや、さっぱり読めん」
えっ!予想外!
「誰か読める人知りませんか?」
「それなら知っとるぞ、何人いるんじゃ?」
「えー…沢山?」
「分かった、明後日まで待てるかの?」
「あ、そりゃもう、はい」
おじいちゃん先生に楽譜を読める人を頼めたので、賛美歌のことは一旦明後日まで置いとくことにして、俺たちはまた古代魔法の文献を読むことに。
「爵位の高い方なら読めるわけじゃないんですね」
「いいとこの子は楽器やるもんだと思ってたんだけどなぁ…そういうもんでもないんですか?」
「爵位より信仰心がものをいうのかもしれんな。
楽譜見て歌うのは聖歌隊くらいのもんだしな」
「あー基本耳で聞いて覚える感じですよねー」
分かる分かる。
「あ、そういえばワルド先輩、古代語の件は?」
「おーそうそう、古語でドロップは雫、ウォーターは迸り、ウォーターアローは穿つ水…って、ここに対応表書いて来たわ、光のもついでに聞けたから、これも」
「へえ…ライトは月の欠片って言うのか…ヒールは精霊の…施し?施されてんだ、俺たち…」
「古代の人って詩的な表現を好んだんですね」
ルディ君が「詩的」なんてアカデミックな言葉で表現してるけど、要は中二病的なアレだよな…
「こりゃあ……大変だ」
「でも、詩的な表現だから、歌には合いそうだな」
「あっ、確かに!」
ルディ君、賛美歌に目をつけたの、大正解かも」
「ほんとですか!?」
「…信心がこんなとこで役立つなんて……。
やっぱ無駄な事って無いのかもしれないなぁ…」
ワルド先輩が妙に深い事を言って、俺たちはまた属性を付与する魔法の再生に取り組み始めた。
「イメージ…イメージかあ」
「詠唱を元にイメージすんのが大変だよな」
「古代魔法の詠唱は今でいう理論なんですかね?」
今は科学がそれなりに発達して「こういう理屈でこうなって、だからこういう効果の魔法が出るんですよ」って理屈をつけられるから、誰でもイメージしやすくなってるんだけど、昔は何とかの精霊がいっぱいいたのかもしれないなぁ。
そんなことを考えていると、ルディ君が言った。
「発音を探るのも心が折れそうです、けど…」
「けど?」
「1人じゃないから、楽しくできます」
「ルディ…」
はにかむルディ君。
友だちが出来て良かったな…的な顔をする教授。
ほっこりする俺とワルド先輩。
そこへ、タイミング良く王子が声を掛けてきた。
「ルース先生ー!砦が出来ましたよー!」
「窓の取り付け、完了です」
「えー、もう出来たんですか!?早いな!」
「図面があるとイメージが固まりやすいから、壁を出しやすいんだよね」
「グランド・インフェルノも覚えましたし!
土を焼くのに地獄味はいらないですしね!」
やっぱ魔法馬鹿たちはすげえなぁ。
「あれ、おじいちゃん先生は…?」
「楽譜読める人に連絡してくるって」
「えっ…今?」
変だな…
明後日って言ってたのに。
30
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる