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学園2年目

ダンジョン再生計画4.ちょっと中断

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「武術棟と魔法棟って、昔は仲が悪かったと聞きましたけど…」
「今やそんなことは言うとれん。
 なんせ魔法剣やら魔法拳やら…みんな気になって仕方ないんじゃから!
 派手じゃしの!土属性と違って!!」
「私の一言がそんなに胸をえぐるとは」
「言っちゃいけない一言だからね…」
「そうですよアイリスさん!
 先生に謝ってください、土属性は地味でもすごいんですから!」
「カート、それ追い打ち…」

ガーベラ先輩に引きずられてカレンデュラ先生の部屋に来たら、久しぶりのメンバーがわちゃわちゃと物を運び入れていた。
本気の引っ越しだ…。

「ダンジョンの再生は1年2年で出来んじゃろ?」
「まあ…それは、確かに…あっ!」
「また何じゃ?」
「ヘザー先輩!ダンジョンで、こんなもの拾ったんですよ」
「へえ?何これ?白い…玉?」
「餓死したスライムからとれる魔石だそうです」
「ええ!じゃあ、これ…まだ属性のついてない魔石ってこと?」
「そうです、やっぱり白でしたね!
 魔生物学では知られてることみたいですけど、やっぱり珍しいんだそうです。
 あ、エルグラン王子も見ます?」
「あの子たち何でも食べるからね~。
 餓死なんてよっぽどだろうね。
 私も初めて見たなあ、何かの卵みたい…ねえ、ガントレット」
「う~ん、そうですね…魔石っぽいですけど…水に漬けておいたらスライムになったり…しないよね?」
「それは俺も考えたんですよね。んで、採取したその日に、いくつか井戸水に漬けといてみたんです」
「さすがルース先生、で、どうでした?」
「10日間ほど漬けましたが、何も起きなかったので…。それでも孵化に時間がかかるんじゃないかなってことで、まだいくつか漬けたままですよ…持ってきます?」
「うん、観察したいな」

俺になぜかついてきたソラン先輩が言った。

「僕の研究室…魔生物学研究室では、スライムの魔石以外の卵も観察しています。どのような条件で孵化するのかわかりませんし、魔力のない状態で生まれるとなるとどのような生物になるのかを研究しようとしていますから」
「へえ~、一度見せてもらいに行こうかな…いいですか先生?」
「取り込まれんようにするんじゃぞ!あそこも研究生が少なくて、うちと毎年競っとるんじゃ…」
「いえいえ、取り込むだなんてそんな。研究室の枠を超えて、共同で研究しても構わないでしょう?」
「ぐぬぬ」

まあ、分野を飛び越えた研究というか…エルグラン王子のやろうとしていることはかなり魔生物学に近いからなあ。
でも、王子の交渉力なら助言や助力を引き出すくらい簡単そうだし、行ってみたらいいんじゃないかと思う。

「エルの研究テーマである「魔物・魔獣の大発生の抑制」は間違いなく世界的な関心事でありますし、今度の学会でも注目されるでしょう。
 様々なところから引き抜きなどの声がかかるのではと…私も危惧しております」
「大丈夫だよジョン。私はこの研究室が大好きだし、少なくともこの学園から離れる気はないよ」


エル…?

「ああ、ルース先生にもご報告しておかないと!
 実は、これを機に、私とジョンはお互いを伴侶とすることを前提に交際を始めたんです。
 ですので、私がアルファード殿下の正室になることなど絶対にありえません。
 その代わりと言っては何ですが…2人とも側室にして頂くことになりました」

「は?はい?」

急な爆弾発言に固まる。
なに、どゆこと?
なんで?
王子ルートの当て馬…俺じゃないの?
ジョンさん?え?え?

「身分身分と煩い連中がいるのはわが国も一緒ですから…それならローズ王国で「側室」となることで身分を揃えたら良いのではと思いまして」

は?側室?王子が?ジョンさんと?

「ええええええええ!!?」
「ルース…そんなに驚いとるのはお前だけじゃぞ」
「いやいや、だって!側室!ジョンさんが!?」

だってジョンさん…20歳近く年上よ?
それに…悪いけどこの方、外見はグリズリーですよ?恐ろしいほうの熊ですよ?
殿下がこの人を抱くの?
いや実際には抱かないのか?
あれ?うん?

「ああ…そっちか。
 私も柄ではないのは分かっているが…
 これならアルファード殿下の「好み」を探るやつらを攪乱するのにも多少は有効だろう」
「多少!?むしろ過多ですよ!」
「うふふ、ルース先生ったら!
 私が側室になるのは違和感が無かったんですか?
 なぁんだ、先生が気にしてると思って、事を急いだのに…まあ、いいきっかけでしたけど、ふふふ」

そりゃ王子は攻略対象ってなんとなく分かってたし…。
すると、確実に対象者であろうリリー君からまたも衝撃の事実を聞かされた。

「この国でそうやって身分を揃えて結婚するって、時々あるみたいですよ?
 ヘザー先輩のお家もそうですし」
「は?ヘヴィさんが?元側室!?」

若いときは美人だった…とか?
ヘザー先輩をちらっと見る。
まさかこれがあれに進化…と考えていたら、
何かを察した先輩が苦笑しながら言う。

「はは…聞いたときは僕もびっくりしたよ。
 陛下を脅…交渉して、2人で側室になって、それから3年して側室を辞めさせてもらって結婚したんだって。
 あ、でも陛下と体の関係はないんだよ?
 言っておくけど。
 ローズ王家のお墨付きで「お似合いの2人」になるんだ、だから誰も文句言えないんだって」

愛が重い!そして息子の言い様が酷い!

「まさかルースが側室になる条件に「外見」が必要と思い込んどるとは…そういうところだけは「常識」が働くんじゃな」
「あ、あはは!校長、言い過ぎで、ふふ、」
「何ですか!?俺は常識人ですよ!」
「ルースさん…やっぱり自分の事ちゃんとわかってないじゃないですか」
「ルース、常識人はね…火魔法使って、ホットドッグを焼かないんだよ」
「えっ…何でですか?焼いたほうが美味しいのは常識じゃないですか!」
「あ、分かった。常識の優先順位がおかしいんだ」
「足から魔法が出せるとか言うのにね」
「あ、ちなみに頭からも出せますよ」
「あたまからもでる!?」

ガーベラ先輩がアレクさんを見る。

「なんだよ、ガントレット!新人なんだからキリキリ働けよな!先生と師匠も!手伝ってくださいよ!」
「はーい、すいません!」
「…あたまからもでる…あたまからもでる…」

気が付いたら、あんな記事のことなんてすっかり忘れて、いつものメンバーと違和感なく話をしてる自分がいて…肩の力も抜けた気がした。
おじいちゃんが言った。

「やっぱり皆、お前がおらんと面白くないんじゃ。
 そのうちアルファードのやつも来るじゃろ。
 ここは厩舎も近いしの…アナガリス兄弟にもダンジョン再生に手を貸すように言うといたぞ」
「あ、ありがとうございます…」

また涙が出てきた。
おじいちゃんは俺の頭を優しく撫でた。

「儂らはあんな記事に踊らされん。
 2年後に笑うのはこっちじゃ」
「は?」
「確実に来る大穴に、賭けん者がおるか?」
「…え?」

おじいちゃんは悪い顔で笑った。

「非公式じゃが、今のところ倍率は100倍以上だそうな…くくく、家柄の事しか頭にない連中の吠え面が楽しみじゃわい」



もー、おじいちゃんったら!
俺は競走馬じゃありませんよ!
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