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学園2年目

ダンジョン再生計画、始動

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「遅かったな…うん、まあ…うん」

そう言うと、ケンタウレア先生は目を泳がせた。
殿下、何でこんな分かりやすいところにキスマーク付けたかな…うう。
先生の部屋に入ると、前回来た時には無かった机が二つ。

「じゃあ、この部屋をちょっと片付けてな、お前の持ってきた私物を置けるようにしよう」
「はい!何から何までお世話になります」

俺の言葉に、ケンタウレア先生は笑って言った。

「今日から俺とお前は1つのチームだ。
 気遣い合うのは当然なんだから、遠慮するな」

なんて男前な発言…!

まあ、ケンタウレア先生は見た目も男前だしな。
硬派で渋いおじ様って感じ。
びしっと髭もセットされてるし。

先生にも片づけを手伝ってもらいながら、自分のものを机に収めていく。

「俺の弟子たちもサポートする。
 それから、魔生物学の研究室から1人、応援に来てくれるそうだ…そのうち来るだろう」
「じゃあ、この机はその方の?」
「そうだ、多少狭いが他に適当な部屋も無くてな…あ、そっちの棚、使っていいぞ」
「ありがとうございます、じゃあここに教科書を並べようかな」

そうやって片付けしたり収納したりしていると、ノックの音がした。

「先生、ソラン・ファセリアです。魔生物研究室からお手伝いに参りました」
「おお、入ってくれ!
 …お前もなかなかの荷物だな」
「研究資料や学術書も入っておりますので…
 …っと、こちらは?」
「2年のルース・ユーフォルビアです」
「ああ!あなたが、あの!
 短い間ですがよろしくお願いします!」

「あなたがあの」って、どういう意味なんだろ…
何だか怖くて聞けない。

「3人揃ったことだし、大体片付いたら休憩するか…俺の弟子もそろそろ来るしな」

ソラン先輩は4年生で俺より2つ上。
魔生物学研究室として、4馬鹿がやっているスライムの研究にも興味があるそうだ。
上背もあって体格も良くて、温和な雰囲気。

「エルグラン王子はスライムを通してダンジョン内の魔生物の量をコントロールできないかとお考えだと聞きまして、それならうちの研究室と情報交換をして頂けないかな…と」
「そうなんですね、じゃあ…校長先生の研究室宛に手紙を書くので、その事も書いておきますね」
「お願いします、それとついでと言っては何ですが…」

まさか、また雷?

「動物と会話ができる魔法について…
 教えてもらえないかな?」

うん、結局雷だな。

「あれは、雷属性を持っているのが条件で…」
「あ、僕持ってるよ!
 サンダーアロー程度なら出せる」
「じゃあ、サンダーアームもできます…よね?
 それの応用です…ただ、今は馬としか話せなくて」
「…魔生物との会話は無理そう?」
「そうですね…少なくともスライムは無理でした。
 他の魔生物については試すことすらできていないのが現状で…ただ、会話できたらできたで倒しづらくなりません?」

スライム牧場のスライムちゃんですら、愛着が湧いて倒しづらくなってきたというのに…。
あ、ノックの音がした。

「おう、入ってくれ」
ケンタウレア先生が言うと、2人の生徒が入ってきた。
「よく来たな、2人とも。
 じゃあ、改めて自己紹介といこうか

「はっ!自分はゴード・ジギタリス、5年生です。
 ゴードと呼んでください!」
「私はカイト・マンドレイク…2年生です。
 幼少の頃からの父の指導もありまして、僭越ではありますが入学と同時にケンタウレア先生の弟子にして頂きました。
 カイトと呼んでください、よろしくお願いします」

ゴード先輩とカイト君か。
ゴード先輩はともかく、カイト君は同い年なのに大きいなあ。
2人ともがっしり筋肉がついてて…羨ましい。

「私は2年生のルース・ユーフォルビアです。
 ルースとお呼び下さい、宜しくお願いします」
「魔生物研究室所属の4年生、ソラン・ファセリアです。ソランと呼んでください、よろしくお願いします」

俺とソラン先輩が挨拶を済ませると、ゴード先輩が俺に寄ってきた。

「あんたがルースか!なあ、俺に魔法教えてくれよ!ひよっこアレクでも使えるって聞いて、俺もぜひ挑戦してみたいんだ!」
「えっ!えーと…、魔法、何か使えます?」
「ちょっとだけ…フレイムくらいならできる」
「あっ、使えるんですね?見せて頂いても?」
「おう、火、火…、フレイム!」ぽっ…シュワ。

使えるけど…これは練習がかなり必要かも。
それにしても物理攻撃タイプの人って、今まであまり魔法に馴染んでこなかったパターン多いよな…。

アレクさんのときみたいになったら困るから、雷属性を開放するのも気が引けるし…うーん…

「あっ!そうだ、炎の拳って、どうですか?」
「なんだそれ…カッコいいじゃないか!」
「じゃあ、ダンジョン再生計画の合間に、少しずつ完成させていきましょう」

そうだよ!
剣は金属だから雷属性が選ばれてるけど、拳だったら炎も使えるし、何なら風も使えそう…な…

「あっ!」
「どうした?」
「風!風を使って、スピードを上げるって、できないですかね!?」
「なんだ急に!?」
「…これが噂の「ルースの思いつき」か…!」
「ケンタウレア先生!お弟子さんに、風属性を使える方いますか?ちょっと試して貰いたいんですが」
「ああ、風属性持ち…ならすぐそこに」

先生の視線の先で…

「あ、俺、風属性使えます…ほんのちょっとだけ」

カイト君が手を控えめに上げていた。



…渡りに船!

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