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学園2年目

ダンジョン2日目

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ダンジョンに入って2日目。
朝の話し合いで、チームを2つに分けて、俺たち魔石採取チームは先へ、魔法バカ達とジョンさん、ヘヴィさんは探索後またここに戻ってくることになった。

ただし、おじいちゃん先生は一緒に来るらしい。
俺の動向を監視する係だそうだ…なぜに。

3人はスライムについての研究をしたいそうで、それぞれ次の学会までにデータ集めをするとのこと。
その研究に必要だとかで、「色んな魔物の死体を揃えたい」という無茶とも思える王子のお願いに、ジョンさんは二つ返事でOKしていた。
何でも魔物の大発生を抑制できる可能性を秘めた研究らしい。
俺も何か協力できるといいな。


ヘヴィさんは今日もまるで当然のような顔でヘザー先輩を見守る位置に陣取っている。
それを見て、パパさんが微妙な笑顔で言う。

「頼むから地獄の業火グランド・インフェルノだけは使うなよ」
「分かっている」

地獄の業火グランド・インフェルノって…あの、あたり一面火の海にするやつ?
これ、物騒なフラグじゃないだろうな?
とにかく無事に帰れますように…。

「この先は、一日目と違って色々な種類の魔物が出ますから気を付けてくださいね!」

俺はクリビアさんの言葉を聞いて、さらに気を引き締めた。全員無事で帰るのが1番大事だ。

「ルース、今日は俺から絶対に離れるなよ」
「はい、殿下」

昨日はほとんどスライム戦だったから剣の出番がなくて欲求不満なのか、殿下はちょっとご機嫌ナナメ。

「ここから先の魔物の傾向から言うと、今日の先頭は剣士の方がいいですね」
「そうか。行くぞルース」
「えっ、ちょっと!待って、待って」

悔しいけど、俺あまりにも剣士じゃなくない?
そんなことはお構いなしに殿下に手を引かれて、カレンデュラ先生とジョンさん、アレクさんに合流して先頭集団に混じる。すると、

「お、回復役か」

とカレンデュラ先生が迎えてくれた。
あっそうか、回復役か!なるほど納得。

「よろしくお願いします」
「コーラスのやつがうるさくてかなわん。一緒についてくる護衛とダグラスとかいうのもわずらわしい」

そういえば昨日の夜、殿下はコーラス様とダグラスさんとずっと一緒にいたんだよな…と考えていたら、殿下が急にデコチューしてきた。

「昨日のぶんだ」
「そんな律儀に…」

別に毎日しなきゃいけないものでも無いけどなぁ、と思ったけど、殿下のご機嫌は直った。
ルーティーンみたいなものなんだろうか?謎だ。

「仲のよろしいことで」
「お前も早く落ち着ける相手を見つけろ」
「へーへー」
「ところで先生…「生徒には手を出さない」ってことは「生徒でなくなったら手を出す」ってことでもあるとか言いませんよね?」
「……そうだな」

あ、出してますねこれは。

「ダメな人だなぁ」
「何言ってんだ、一生モテて一生結婚しない…
 それが俺の目標だぞ」
「なんちゅう目標だ」
「下らんことを言ってないで、出発するぞ」

なんだかんだ言ってるうちに、コーラス様と護衛の人、ダグラスさんも合流してしまった。
殿下の機嫌も下降気味だし、また気を使うなぁ…。

2人とも殿下と一緒にいたいのは分かるけど、「いのちだいじに」でお願いしますよ!

----------

「それにしてもルース、結構戦えてるな」
「まあ、うちに出るゴキブリよりは遅いので…。
 アロー系を当てるだけなら何とかなりますね」
「さすが師匠」

ただ、ここらで出てくる魔物は、でかいネズミとか蛇とかトカゲとかクモとかトンボとかなので、まだ躊躇なく倒せるんだけど…この先、二本足で歩くやつが出てくると、ちょっと心理的に難しいかも。

だけど、倒した魔物からはスライムのときよりちょっと大きな魔石が出るし、気にはなる。

気になると言えば…

「このあたりの魔物が持つ魔石の色は、倒した魔法によって変わることはないですね」
「効きやすい属性と効きにくい属性が明確にありますから、元々何らかの属性を持っているのか…」
「そうなると、スライムは属性が無いということですよね…なのに水属性だけ効かないのは、確かによく分かりませんね」
「そうですよね!ブヨブヨしてるからかな…」
「水っぽい見た目はしてるよね」

後ろの方でスライム研究チームが話をするのが聞こえる。俺もあっちが良かったなあ…

魔生物学基礎の授業でもやったけど、魔物及び魔獣には、魔法なら何でも効くタイプ・魔法が全く聞かないタイプ・特定の属性なら効くタイプがある。
魔法が効かないタイプのやつは剣士にお任せして、特定の属性が効くタイプのやつはひとまず、教科書どおりに属性を合わせて魔法を食らわせる。

魔石工学のおかげか、その魔物の色で何となく弱点の属性が分かるので助かる…
あっ、トカゲ、色違いで出てきた!

「ウインドアロー!」
「ファイヤーアロー!」

さらにコガネムシのでかいのがワラワラ来る。
あれは魔法が効かないって話だけど…そういえば、雷属性については記述のないものが多いんだよな。
元々希少な属性だったしデータが無いだけかも…
試してみよう。

「サンダーアロー、分散!」
「うわ!なんですかそれ!」
「威力は落ちるけどたくさんのゴキに当てたい時に便利だから、分けてみたんですよ」
「おお、見たことのない魔法が出たの…メモメモ」
「属性確認か?残念ながらこれには効かんようだ」
ザシュ。ドス。
「そんなに魔法使って、魔力足りるんすか?」
ドゴ、バコ。ガコっ。
「そうですね、まだ余裕はあるかと…あ、でも、回復用にとっとかないといけないか」

あー、魔力を測るやつ、作りたいな…。
ちゃんと数値化できたら便利だと思うんだよな。
感覚だけだと冒険初心者としてはやっぱ不安だし、普段どのくらいあって、練習したらこのくらい上がったとか分かればモチベーションも上がるし…
なんて考えていたら、
「おい!そっちいったぞ!」
「ひゃっ!?」
コガネムシ!?
「ふん」ザシュ。
「うわあ!?」

いつの間にか隣にいた殿下に助けられる。

「ぼんやりしているからだ」
「はい…すいません」

項垂れる俺。
それを見たカレンデュラ先生が言う。

「お疲れか?午後からは前後入れ替えるか」
「ですね!
 まだアナガリス兄弟もいらっしゃいますし!」
「ここに全く何もしていないやつもいるしな」
「ちょっと、殿下!」
「すいません、皆さんがお強いので出番が無くて」
「すみません…」

むしろ公爵家の一人っ子に怪我でもさせたら大変だから、そうしてるんですけど…。

「午後からはそれなりに活躍できると良いのですが」
「がんばります」
「そうしてくれ、俺とルースは下がる」
「あっ…」

そうだよね~。
2人とも殿下についていきたいんだもんね。

「後方にも仕事はあるでしょうし、良ければ…」
「ルース、ならん」
「……」

ならんじゃないのよー!
伯爵家の十二男のせいで、公爵家の跡取りが怪我をしたなんてことになったらえらいことよ!?

それなのに殿下は俺の思考を読んだかのように、

「誉れ高き公爵家の跡取りが、伯爵家の末子に劣る戦果では立つ瀬がなかろう?
 やりすぎだルース、下がれ」
「うっ…はい…」
「トルセン、ケイ、アレク。あとは任せた」
「おう」「はっ」「…了解」

と何だか納得いかないことを言って2人を前に残し、俺の手を引いて後ろへ下がる。
まあ、後ろからでも援護できなくはないか…

「援護などするなよ」
「うっ…」

そりゃ無理だよ…
俺の胃に穴が開いちゃう。

「じゃあ、回復だけ」
「ならん」


だから、ならんじゃないんだってば!!
んもう!
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