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学園1年目

多分一人目

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今日は入学式。

俺は朝から…

「殿下、起きてください」
王子様を起こし、
「殿下、朝食はこちらに」
朝食のビュッフェを取ってきてやり、
「殿下、歯磨きしますよ」
歯磨きをしてやり、
「殿下、御髪おぐしが乱れております」
髪をセットしてやり、
「殿下、シャツのボタンがズレております」
「殿下、靴下が前後ろです」
服を着せてやった。

あーもう!
一人で出来る様になってから寮に入れよな!
こんだけ俺がしてやってんのに、

「ん」

しか言わねーし!
親の顔が見たい!
って王様やぞ!親は王様やぞ!
講堂に肖像画あるから今日なんぼでも見たるわ!

「殿下、何かしてもらったときは「ありがとう」くらい言ったほうが宜しいですよ」
「ん」
何が「ん」じゃーい!
「準備が出来たな。行くか」
…って、お前が言うんかーい!
くそ、心のツッコミが追いつかねえ。
朝から疲れる…
「何をしている、ほら」
え?何?手?手袋かなんか要るっけ?
「ったく、分からんやつだな」
そう言って王子が俺の手を握って、引っ張る。
まさか、おてて繋いで行こうってか?
「エスコートされる役がいるだろう?」
えー、そんなものいるのぉ?

「それも俺の役目なんですか?」
「他にいないだろう」
「……はあ」

納得いかねえー。

おてて繋いで講堂まで歩く。
つか、何も部屋から講堂までは、エスコートするされるなんて関係ないのでは?
「王族は隙を見せてはいけないからな」
あっハイ。ソウデスカ。
逆らわないほうがいい。
ちょっと不機嫌になったからな。

講堂が見えた。
たくさんの生徒が集まってごった返しているが、王子様が「おい」と一言言えば道が開く。
お、機嫌良くなったぞ。ご満悦だな?
そこへ、

「あっ!」

一人、小さな子が押し出されて出てきて、コケた。
王子の目の前で。

「君、大丈夫かい?」

俺は王子の手を離れて、その子に優しく声を掛けて助け起こし、パンパンと制服についた土をはたいて、擦りむいた膝に回復魔法をかけてやり、放流する。

「これでよし…さ、早く行きな」
「ありがとうございます!」

いい笑顔で駆けていく彼に手を振って…
気づいた。

もしかして、あれ、攻略対象者なのでは?
あんな小さな子いたっけか…ショタ枠ってやつか?

「可愛らしい子でしたねぇ」
「……ふん」

王子が不機嫌オーラを発しているのに気づき、
慌てて手を握り直す。


そして…俺は。
さっきのが出会いのイベントだったらどうしよう…
と頭を抱えることになった。


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