上 下
4 / 586
転生したぞ

来なくていい!

しおりを挟む
俺が前世の記憶を取り戻してからというもの、王子のやつは頻繁にうちに来るようになった。

だもんでほぼ毎日、剣術の練習と称してコテンパンにやられる…ボコられはしないけど。

王子と俺は同い年で、王宮とうちの家が近いこともあって、どうやら遊び相手として選ばれてしまっているらしいのだが…迷惑である。

俺の作る菓子を当然の顔して食うし…

別にお前のために作ってるわけじゃねーんだぞ。
俺の輝かしい未来のために作ってるんだからな!


……俺、前世でお菓子作りが趣味だったのよ。
料理とかも一通りできたけど、それだけじゃ他の男に差をつけられないな…と思って始めたんだ。
そう、全ては女の子にモテるため。
俺、彼女欲しくてさ…童貞捨てたかったし。
そんなしょうもない理由だったけど、意外とハマっちゃって、結構レシピも覚えてるし、道具とか集めたりもしてたんだよね。
だから、もしかして料理チートあるんじゃねえかって思って今生でも作ってみたら…意外と好評なの。
チートってほどじゃなさそうだけど、これを武器に何とか成り上がっていけないかな…と思って。
これも修行だと思って毎日何かしら作ってみてはいるんだけどさ……


だけど、当然のように
「今日の菓子は?」
って言われてもなあ…

でも、こいつにはどうしても逆らえないんだ。
さすが未来のスーパー攻様、クールな目で睨まれると言う事聞かなきゃって気分になっちまって。

それに……

「美味いな」
って言われりゃ悪い気しないし。

それに、お返しのつもりなのか、俺の菓子を食いながら、何やら色々教えてくれるんだ。

とは言っても、法律とか軍事とか税制とか社交とか、多分王子様が学ばされてるやつばっかだけどね。
結構真剣に教えてくれるんだけどさ…。

残念ながら、俺は冒険者になりたいんだ。
そんなこと学んでも役に立たないのよ。
もっと他のこと勉強しなきゃいけないの!

…って思うけど、やっぱり逆らえなくて…。
ちゃんと覚えてるかテストしてくるし、出来ないと覚えるまでやらされるし、仕方ないからお勉強に付き合ってる。

とはいえ、自分のための勉強や、魔法や剣術の稽古も、怠るわけにはいかない。

魔法のほうは才能があったのか、すでに「水」「火」「風」「土」の4属性を覚えた。
「雷」と「光」と「闇」にも、近々挑戦する予定。
特に「光」は、回復系だから早く覚えないと…。

剣術の方は、残念ながら今一つ。
でも、成長したらいけるかもしれないから、腐らず真面目にやるのみだ。

こうして、俺の日常は過ぎていく。
毎日毎日、努力&根性。
朝早く起きて、王子が来ないうちに自分のやる事を済ませておかないといけない。
王子が来ると、お菓子作ったり、勉強に付き合ったり、お忍びの外出に付き合ったり、王宮へ連れて行かれたり…とにかく疲れるから、集中できるうちにやらないと。

そうやって7年…
俺は冒険者になるために頑張りすぎて、
大事なことを忘れていたのだった。

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...