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天才錬金術師と最強S級冒険者
プロローグ
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世界最大の国力を誇るイグアスタ王国。その王宮の側にある魔法省の研究棟にて、今日も今日とて爆発音が響き渡った。
「またハオの実験かー!!!」
それに伴い、魔法省局長の叫びが木霊する。もくもくと黒い煙を吐き出す部屋は、既にもぬけの殻となっていた。
ピキリと額に血管が浮き出た局長は、鬼の形相で廊下を駆ける。すれ違う職員達が、巻き込まれるまいと廊下の端へと寄った。
「…そろそろ行ったか?」
ようやく全ての煙が晴れた研究室。入り口のドアのすぐ横に、彼はずっと居た。
ハオ・フォルスト。希代の天才錬金術師と呼ばれ、若くして既に数々の薬を開発した実績を持つ男だ。
ガスマスクを外し眼鏡を掛け、曇ったピーチピンクの瞳が廊下をチラリと覗き、嵐が去ったことを確認するとすぐさま局長とは反対方向へと走る。
白銀の長髪を靡かせて走る彼に、見かけた他の職員たちは笑って局長の居ない方向を教えてくれた。
ハオの実験による爆発はもはや日常となっており、それが原因で開催される局長VSハオの鬼ごっこも恒例行事となっていた。逆に、何もない日は心配される程だ。
同僚たちの手助けにより、局長から逃れて街へと出たハオ。ついでに何か食事でも済ませてから戻ろうかと店を吟味していれば、ふと何処からか視線を感じた。
キョロキョロと辺りを見渡して見るが、特にこちらを見ている人物は見当たらない。気のせいかと首を傾げつつ、結局いつも行ってる料理店へと向かった。
「ストーカーじゃないか?それ」
「はぁ?オレなんかをストーカーして何になるってんだ」
昔の知り合いが経営する料理店にて。カウンター席に座ったハオは、時間帯的に客が少なかったため店長である知り合いのネーヴァ・ウィヘルと会話をしつつ食事をしていた。
会話の内容は先程感じた視線のことであり、何か知らないかと何とはなしに聞いたのである。
予想していなかった返答に、ハオは眉を寄せる。相手の性別がどっちかは知らないが、どっちにしろ自分みたいな中途半端野郎をストーカーするような奴がいるとは思えないからだった。
ハオは性別こそ男だが、その見た目はあまり男らしいと言えるものではなかった。元々成長の悪かった16の頃から変化のない見た目は、その長髪も相まって女性に見えるとはよく言われることである。
ちなみに髪を切ったところで何も変わらないことを知っているハオは、既に見た目のことは諦めていた。
そもそもハオは、顔の左半分を隠すように前髪を伸ばしている。顔が半分も見えない奴のストーカーなぞ居ないように思っていた。
そんなものだから彼は気づいていない。単純にその見た目に引かれて善からぬことを考える馬鹿が、一定数居ることを。
遅すぎる昼食を食べ終え、一応気を付けろよというネーヴァの言葉に生返事を返して店を後にする。
そろそろ戻ってもいい頃合いだろうなぁ、と少し考え事をしながら歩いていれば突然腕を引かれた。
理解が追い付く前に路地へと連れ込まれ、先程言われた注意が頭を過る。あり得ないと思っていたが、まさか本当にストーカーかもしれないと素早く打開策を考え始める。
腕を振り払おうにも、相手の力が強すぎて逃げられないのだ。警戒しつつ相手を見れば、自分より背も高くがたいの良いその人物は何だかボロボロで、酷く疲れているように見えた。
思わず警戒が途切れる。集中すれば血の臭いまでするものだから、何か魔物にでも襲われた人なのかと予想する。
一応ハオは多少顔が知れている。回復薬を求めて直に来る者も多々いるため、もしやこの人物もそうなのかと思ってしまった。
随分と路地を進むと少し開けた場所に出た。そこには小さな小屋があり、ハオは驚きで目を見開く。
周りを見ていなかったため気づかなかった。そこは、過去の自分が大切な相棒と共に見つけ、こっそり使っていた秘密基地だったのである。
まさかとここまで自分を連れてきた人物を見上げる。ボロボロな布を巻いていて顔がよく見えないが、しかし雰囲気は知っているものに思えた。
「……ようやく見つけたぞ、ハオ」
「お、お前…!」
そうしてバサリと取られた布の下から出てきた顔は、記憶より男らしくなっていたが確かに見覚えのある顔だった。
「ガロン!何でここに!?」
それは、錬金術師になる前の仕事で相棒だった、ガロン・ベリゴールであった。
ガロンは不機嫌そうにこちらを見下ろすと、絶対に逃がすまいという風に腕を握る手に力を込めた。
「またハオの実験かー!!!」
それに伴い、魔法省局長の叫びが木霊する。もくもくと黒い煙を吐き出す部屋は、既にもぬけの殻となっていた。
ピキリと額に血管が浮き出た局長は、鬼の形相で廊下を駆ける。すれ違う職員達が、巻き込まれるまいと廊下の端へと寄った。
「…そろそろ行ったか?」
ようやく全ての煙が晴れた研究室。入り口のドアのすぐ横に、彼はずっと居た。
ハオ・フォルスト。希代の天才錬金術師と呼ばれ、若くして既に数々の薬を開発した実績を持つ男だ。
ガスマスクを外し眼鏡を掛け、曇ったピーチピンクの瞳が廊下をチラリと覗き、嵐が去ったことを確認するとすぐさま局長とは反対方向へと走る。
白銀の長髪を靡かせて走る彼に、見かけた他の職員たちは笑って局長の居ない方向を教えてくれた。
ハオの実験による爆発はもはや日常となっており、それが原因で開催される局長VSハオの鬼ごっこも恒例行事となっていた。逆に、何もない日は心配される程だ。
同僚たちの手助けにより、局長から逃れて街へと出たハオ。ついでに何か食事でも済ませてから戻ろうかと店を吟味していれば、ふと何処からか視線を感じた。
キョロキョロと辺りを見渡して見るが、特にこちらを見ている人物は見当たらない。気のせいかと首を傾げつつ、結局いつも行ってる料理店へと向かった。
「ストーカーじゃないか?それ」
「はぁ?オレなんかをストーカーして何になるってんだ」
昔の知り合いが経営する料理店にて。カウンター席に座ったハオは、時間帯的に客が少なかったため店長である知り合いのネーヴァ・ウィヘルと会話をしつつ食事をしていた。
会話の内容は先程感じた視線のことであり、何か知らないかと何とはなしに聞いたのである。
予想していなかった返答に、ハオは眉を寄せる。相手の性別がどっちかは知らないが、どっちにしろ自分みたいな中途半端野郎をストーカーするような奴がいるとは思えないからだった。
ハオは性別こそ男だが、その見た目はあまり男らしいと言えるものではなかった。元々成長の悪かった16の頃から変化のない見た目は、その長髪も相まって女性に見えるとはよく言われることである。
ちなみに髪を切ったところで何も変わらないことを知っているハオは、既に見た目のことは諦めていた。
そもそもハオは、顔の左半分を隠すように前髪を伸ばしている。顔が半分も見えない奴のストーカーなぞ居ないように思っていた。
そんなものだから彼は気づいていない。単純にその見た目に引かれて善からぬことを考える馬鹿が、一定数居ることを。
遅すぎる昼食を食べ終え、一応気を付けろよというネーヴァの言葉に生返事を返して店を後にする。
そろそろ戻ってもいい頃合いだろうなぁ、と少し考え事をしながら歩いていれば突然腕を引かれた。
理解が追い付く前に路地へと連れ込まれ、先程言われた注意が頭を過る。あり得ないと思っていたが、まさか本当にストーカーかもしれないと素早く打開策を考え始める。
腕を振り払おうにも、相手の力が強すぎて逃げられないのだ。警戒しつつ相手を見れば、自分より背も高くがたいの良いその人物は何だかボロボロで、酷く疲れているように見えた。
思わず警戒が途切れる。集中すれば血の臭いまでするものだから、何か魔物にでも襲われた人なのかと予想する。
一応ハオは多少顔が知れている。回復薬を求めて直に来る者も多々いるため、もしやこの人物もそうなのかと思ってしまった。
随分と路地を進むと少し開けた場所に出た。そこには小さな小屋があり、ハオは驚きで目を見開く。
周りを見ていなかったため気づかなかった。そこは、過去の自分が大切な相棒と共に見つけ、こっそり使っていた秘密基地だったのである。
まさかとここまで自分を連れてきた人物を見上げる。ボロボロな布を巻いていて顔がよく見えないが、しかし雰囲気は知っているものに思えた。
「……ようやく見つけたぞ、ハオ」
「お、お前…!」
そうしてバサリと取られた布の下から出てきた顔は、記憶より男らしくなっていたが確かに見覚えのある顔だった。
「ガロン!何でここに!?」
それは、錬金術師になる前の仕事で相棒だった、ガロン・ベリゴールであった。
ガロンは不機嫌そうにこちらを見下ろすと、絶対に逃がすまいという風に腕を握る手に力を込めた。
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