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どうやら隣国師団長の庇護欲スイッチを押してしまったらしい

プロローグ

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 藍色の長髪を低い位置で括り、耳の上に位置する場所にくるりと渦巻く角を携えた男─"ジーン・ラパイント"は、目の前で己の手を握り跪く男にその碧眼を瞬かせると思わず頬を引き攣らせた。
 北の地に建てられた城に引きこもり、できるだけ平穏無事に暮らそうと隠居生活を楽しんでいたというのに。仲間たちと共に面白おかしく、この城でただ平和に暮らそうと人生設計を立てていたというのに。

「俺、ケイス・マラミュスカは、ジーン・ラパイントを生涯愛し、幸せにすると誓う。…………逃げられると思うなよ」

 ギラリと黄土色の目を本能に光らせて、男─ケイスはジーンを睨みあげる。大分この強面と言葉が噛み合っていないが、それが本気というのは否が応でも知ってしまったから。
 掴まれた手はさっぱりすっぱり抜くことが出来ず、逃げ腰になって後退る足によってさらに強く握り込まれた。若干骨が悲鳴を上げそうになっているが、今はそんなこと気にしている場合では無い。
 いつの間にか立ち上がっていた彼は、自分が逃げ出そうとすれば一歩どころか何歩も詰めてくる。既に数センチもない距離まで追い込まれたジーンは、もはや叫ぶことしか出来ない。

「─オレは一体、どこでお前のスイッチを押してしまったんだ!!」

 そう、ただただ過去の己を恨むことしか出来ないのであった。




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