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3話 全力で逃げてみる

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「やべぇ…」

俺は息をするとのと同じ位小さな声で
呻いた。
全身から冷や汗がびっしゃりと出てくる
人生の中でここまでの恐怖が俺を
襲う事はなかったし、こんな恐怖を
感じる事になるなんて思いもしなかった

蛇は凄い力で締め付けるか、もの凄い
スピードで噛みつき毒で動けなくなった
ところを丸呑みにして、獲物を狩るって
子供のころ好きだった生き物図鑑で見たことがある。

でも狩りの仕方を読んだだけで
どんな場面でどういう攻撃をするのか
までは知らない、つまり今 俺はどんな
攻撃を受けるかわからない…

相手の攻撃パターンみたいなのを知っていれば本当に少しの可能性かも知れないが逃げられるかもと思える…でも
わからない  それが今死ぬほど恐しい

ー蛇に睨まれた蛙ー

まさにソレだ、言葉通りに
その時閃光が走る様に映像が見えた。

大蛇が俺にもの凄いスピードで俺に
噛み付こうとしてくるところが

俺は見えた瞬間倒れ込む様に咄嗟に
左側へで飛び退いた。

「うぐっ!」

無事に地面に胸で着地を果たし
咳き込みながら直ぐに後ろを振り返ると
蛇の頭は俺の元いた場所に蛇の頭が
あった、もう口は閉じていたが頭は
こちら側に向けている、

マズイっ!このまま第二波が来るか、
噛みつきが通じないとわかれば締め付けられる可能性が高い!もしそうなれば
俺にはもう避ける術がない!

その時ふと思い出した。

確か図鑑には
蛇の弱点は首根っこを掴むとか…
でもこんな大蛇は巨人でもなければ
そんな事はできないだろうし…
あと…そうだ…蛇は嗅覚が…
発達しているって読んだ記憶が…

俺はその記憶と共に一つの希望を
見出した。あの木の実を割って大蛇の鼻付近に投げつけてやれば
少し隙を作れるかも知れない…!
俺は昔の(図鑑を読んだ)自分を
褒め讃えたながら確信していた。

イケる、これはやれる

そう思った瞬間、ポケットに入っている
木の実を取り出した。

「へっへっへ…コレでお前の嗅覚も大分イカれるだろうなぁ!」

そう言うと同時に俺は木の実を思いっきり割った。

ーグチュリー

真っ二つという訳にはいかなかったが
真ん中から音を立てて割れた

「ヴヴォォェェェ!!」

こんな時だというのに強烈な臭い過ぎて
えづいてしまう…!

「はぁはぁ…これでも食らェェェ!
オラァ!!ヴォェェ!!」

引きこもり気味の男子の全身全霊を込めて実をぶん投げた。

運が良かったのか意外にも蛇の鼻の辺りにグチャッと音を立てて直撃した

「どうd…」

俺がどうだと言い終わる前に大蛇は物凄い勢いで暴れ始めた。

ードカドカっバキバキビキッッー

暴れ狂って木を
バッキバッキと折っていく
まるで物凄い太さの鞭の様だ。

「うぉぉぉ!?」

目の前まで大蛇の胴体が迫ってきたが
幸いにも直ぐそこから別の方向に
うねっていく。

「やべぇ!コレ死ぬ!」

俺は直ぐに走って逃げれる体制にした。大蛇が俺を囲う様にした形は既に崩れかけていたし
大蛇も獲物どころじゃないだろう。

ーコレを逃したら次はないッ!ー

暴れ回っていて、俺を囲んでいた
場所より少しズレていた為
既に大きな隙間ができていて
簡単に逃げられそうだった。

ー今だ!!ー

思い切り地面を蹴り飛ばすと
全速力で走り出した

ーここでッ!逃げなきゃに二度と
チャンスはないッ!!ー

そして、俺の必死のダッシュが功を成し大蛇の崩れかけた陣形を突破した。

「よっしゃぁ!」

走りながら小声でそう叫ぶと
大蛇と距離を取るべく一層スピードを
上げて走った。

しかし…現実はそう甘くないらしい。

木々を避けながら走っている俺の耳に
嫌な音が聞こえ始めた。
後ろからバキバキッて木の折れる音が
俺の後を追う様に聞こえてくる

「嘘だろぉ!?」

まさか、もう激臭から解放されたというのだろうか…?!

振り向いてはいけないとわかっては
いても俺はこんな時でさえ
好奇心を抑えきれなかった。

一瞬、本当に一瞬だけ後ろを振り返って
見たんだ。
想像通り、あの大蛇が木を物ともせず
にこちらに突っ込んでくるのが見えた。

マズイ!あのスピードじゃ
追いつかれるまで10秒もかからない…!

その時また頭に映像が浮かんだ。
物凄いスピードで進んでいる大蛇に
同じくらいのサイズの鷲が爪で
攻撃する瞬間…

その時、背後で物凄い音がした
一気に木が折れる音、先程の蛇が
進んでくる音とは比べものにならない程
の木が炸裂する音が…

ーな、何が起こったんだ!?ー

バッと振り返ると映像で見た通りに
大蛇に巨大な鷲が襲いかかっていた。

鷲が先制したのにもかかわらず大蛇は
怯みもせず反撃をしている

今度こそ!今しかないっ!

俺は蛇の威嚇の声と鷲の鳴き声が響く中
木々を躱しながら全速力で
走って逃げ出した。




走り疲れて足が棒の様になっても俺は
歩いていた、

少しでも遠くへ…

もうあの木の折れる音や威嚇の声
鷲の鳴き声さえも聞こえない
聞こえるのは自分の地面を踏みしめて
歩く音だけ。

辺りは日も沈み
完全に暗闇に包まれていた。
意識も朦朧とする中…
下を向きながらいつ倒れてもおかしくない様な足取りで進んでいく…

ふと、いつしか足元が長い蔓や枝が伸び
ている植物ではなく短い草になって
いる事に気がついた。

あれ…?俺は森の中じゃ…?

ぼやける視線をあげると、どこまでも
続く様な広い野原と雲一つない
満天の星空が広がっていた。
あまりの綺麗さに少しぼうっと
見とれているとどこか遠くから
音が聴こえてくる…

さっきまで聞こえていたあんな
物騒な音ではなく
そう、まるで人で賑わっているガヤガヤとした音…

俺は音の聞こえる方向へ視線を向けた
すると…少し遠くに灯りが見える
ボヤける視界の中しっかり何なのか確認
しようと目をこすってみる、
少しだけマシになった視界でよく見てみると
そこには大きな塀で囲まれてはいるが
街らしき建物が見えた、

やった…これで…もう…

俺の意識はそこで途絶えた


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