199 / 220
アルベールハッピーエンド あなたと生きる道
13 金と銀の天使
しおりを挟む
妊娠中の性交注意(詳細なし)
出産の内容あり
***
アルベールが里には帰りたくないと言ったことと、ヴィクトリアもマグノリアに魔法を教わりたかったこともあって、山の中で思いを通わせ合った後、二人はロータスたちの家に身を寄せることにした。
既にヴィクトリアを受け入れていた一家は、アルベールのことも受け入れてくれた。ヴィクトリアの妊娠が確定し、悪阻で苦しむようになったヴィクトリアを、アルベールは幼い頃のように、真綿で包むように大切にしてくれた。
アルベールは積年の思いが成就し、ヴィクトリアと番になれたことで情緒が安定したらしく、攻撃性は鳴りを潜め、まるで人が変わったかのように優しくなった。
アルベールはヴィクトリアの身の回り世話を文字通り全部行いながら、ロータスに師事して医術を学ぶようになった。
アルベールはヴィクトリアと胎の子供と共に、里の外で生きていくことが希望のようだった。ロータスたち一家と同じように、ヴィクトリアの魔法で人間に擬態しつつ、「医師をしながらどこかの僻地で暮らしたい」とアルベールが言ったので、ヴィクトリアもそれを了承した。
ただ、『過去視』で見た時に、かなり幼い頃の話ではあるが、アルベールはロータスに激しく嫉妬していたので、師匠と弟子という関係性になる二人が、ちゃんとやっていけるのか少し心配だった。
しかし蓋を開けてみれば完全に杞憂で、ヴィクトリアが調子の良い時に階下に様子を見に行けば、アルベールとロータスの二人が仲良く談笑している場面を多く見かけた。
「ロイさん? 嫌いじゃないよ」
ある時、アルベールにロータスのことを何気なく聞いてみた所、そんな返事が返ってきた。
「何ていうか、リュージュに似てるよね」
アルベールは番になってから、リュージュの名前はあまり口にしたがらなかったので、ヴィクトリアはアルベールが自分からリュージュの名を出してきたことに驚いた。
「そうね…… 笑い方とか良く似てるかも」
リュージュとは一日だけ付き合ってすぐに別れてしまったが、一応元彼なので、アルベールが嫌な気持ちになるのではないかと、リュージュの話題は意識的に避けていた。
けれど今、リュージュに関することを発言するヴィクトリアを見ても、アルベールは愛しいものに向ける視線は変わらないままで、微笑んでいる。
番になって最初の頃に、アルベールは「里に帰りたくないのはリュージュと同じ場所でヴィーと暮らすのが嫌だから」と言っていた。けれどアルベールの心情はその頃からは少し変化しているようで、自分たちの絆は何があっても壊れないと確信しているようだった。
それはヴィクトリアも同じ気持ちだった。始まりこそ寝込みを襲われて番になったが、今はアルベールに何をされてもいいくらい、彼のすべてを愛している。
ヴィクトリアは、予定日よりも一ヶ月ほど早く女児を出産した。
早産ぎみになってしまったのは、たぶん安定期になってからもう大丈夫だろうと始めた、夜の営みのせいかもしれないと思って、ヴィクトリアは後々かなり反省した。
アルベールは色々と考えながら回数や触れ合い方を加減していたようだが、ヴィクトリアの方が蛇が欲しくてねだってしまい、気付いたら予定より早く陣痛が来ていた。
ヴィクトリアの身体はあまり出産に向いていないらしく、本当は帝王切開で産む予定だった。
「俺ならできる」と自信満々なアルベールが執刀して取り上げる予定で、傷痕も治療魔法で何とかする手筈だったが、「今なら下から産めるかも」というマグノリアの一言により、ヴィクトリアは自然分娩で出産した。
始めての出産はすごく痛かったけど、アルベールがずっとそばに付いて励ましてくれたし、三人で幸せになるのだと思えば乗り越えることができた。
「ヴィー、お疲れ様。ほら、俺たちの天使だよ。小さくてすごく可愛いね」
アルベールは柔らかく微笑みながら、腕にとても小さな赤ん坊を抱えていた。アルベールは布に包まれたその赤子を、寝台にいるヴィクトリアの横に寝かせてくれた。
「本当に天使だわ……」
ヴィクトリアは幸せ全開で感嘆しながら我が子を見つめた。小さくてとっても愛らしい宝物のようなその子は、つぶらな瞳でヴィクトリアを見ていた。その目はアルベールに似た金色で、髪の毛はヴィクトリアに似た銀髪だった。
「顔はヴィーの赤ちゃんの頃にそっくりだよ。きっとすごい美人になる。変な虫が付かないように気をつけないと」
二人は女児に、「天使」の意味を持つ「アンジェ」という名前を付けた。
出産の内容あり
***
アルベールが里には帰りたくないと言ったことと、ヴィクトリアもマグノリアに魔法を教わりたかったこともあって、山の中で思いを通わせ合った後、二人はロータスたちの家に身を寄せることにした。
既にヴィクトリアを受け入れていた一家は、アルベールのことも受け入れてくれた。ヴィクトリアの妊娠が確定し、悪阻で苦しむようになったヴィクトリアを、アルベールは幼い頃のように、真綿で包むように大切にしてくれた。
アルベールは積年の思いが成就し、ヴィクトリアと番になれたことで情緒が安定したらしく、攻撃性は鳴りを潜め、まるで人が変わったかのように優しくなった。
アルベールはヴィクトリアの身の回り世話を文字通り全部行いながら、ロータスに師事して医術を学ぶようになった。
アルベールはヴィクトリアと胎の子供と共に、里の外で生きていくことが希望のようだった。ロータスたち一家と同じように、ヴィクトリアの魔法で人間に擬態しつつ、「医師をしながらどこかの僻地で暮らしたい」とアルベールが言ったので、ヴィクトリアもそれを了承した。
ただ、『過去視』で見た時に、かなり幼い頃の話ではあるが、アルベールはロータスに激しく嫉妬していたので、師匠と弟子という関係性になる二人が、ちゃんとやっていけるのか少し心配だった。
しかし蓋を開けてみれば完全に杞憂で、ヴィクトリアが調子の良い時に階下に様子を見に行けば、アルベールとロータスの二人が仲良く談笑している場面を多く見かけた。
「ロイさん? 嫌いじゃないよ」
ある時、アルベールにロータスのことを何気なく聞いてみた所、そんな返事が返ってきた。
「何ていうか、リュージュに似てるよね」
アルベールは番になってから、リュージュの名前はあまり口にしたがらなかったので、ヴィクトリアはアルベールが自分からリュージュの名を出してきたことに驚いた。
「そうね…… 笑い方とか良く似てるかも」
リュージュとは一日だけ付き合ってすぐに別れてしまったが、一応元彼なので、アルベールが嫌な気持ちになるのではないかと、リュージュの話題は意識的に避けていた。
けれど今、リュージュに関することを発言するヴィクトリアを見ても、アルベールは愛しいものに向ける視線は変わらないままで、微笑んでいる。
番になって最初の頃に、アルベールは「里に帰りたくないのはリュージュと同じ場所でヴィーと暮らすのが嫌だから」と言っていた。けれどアルベールの心情はその頃からは少し変化しているようで、自分たちの絆は何があっても壊れないと確信しているようだった。
それはヴィクトリアも同じ気持ちだった。始まりこそ寝込みを襲われて番になったが、今はアルベールに何をされてもいいくらい、彼のすべてを愛している。
ヴィクトリアは、予定日よりも一ヶ月ほど早く女児を出産した。
早産ぎみになってしまったのは、たぶん安定期になってからもう大丈夫だろうと始めた、夜の営みのせいかもしれないと思って、ヴィクトリアは後々かなり反省した。
アルベールは色々と考えながら回数や触れ合い方を加減していたようだが、ヴィクトリアの方が蛇が欲しくてねだってしまい、気付いたら予定より早く陣痛が来ていた。
ヴィクトリアの身体はあまり出産に向いていないらしく、本当は帝王切開で産む予定だった。
「俺ならできる」と自信満々なアルベールが執刀して取り上げる予定で、傷痕も治療魔法で何とかする手筈だったが、「今なら下から産めるかも」というマグノリアの一言により、ヴィクトリアは自然分娩で出産した。
始めての出産はすごく痛かったけど、アルベールがずっとそばに付いて励ましてくれたし、三人で幸せになるのだと思えば乗り越えることができた。
「ヴィー、お疲れ様。ほら、俺たちの天使だよ。小さくてすごく可愛いね」
アルベールは柔らかく微笑みながら、腕にとても小さな赤ん坊を抱えていた。アルベールは布に包まれたその赤子を、寝台にいるヴィクトリアの横に寝かせてくれた。
「本当に天使だわ……」
ヴィクトリアは幸せ全開で感嘆しながら我が子を見つめた。小さくてとっても愛らしい宝物のようなその子は、つぶらな瞳でヴィクトリアを見ていた。その目はアルベールに似た金色で、髪の毛はヴィクトリアに似た銀髪だった。
「顔はヴィーの赤ちゃんの頃にそっくりだよ。きっとすごい美人になる。変な虫が付かないように気をつけないと」
二人は女児に、「天使」の意味を持つ「アンジェ」という名前を付けた。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
獣人公爵のエスコート
ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。
将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。
軽いすれ違いです。
書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
執着系狼獣人が子犬のような伴侶をみつけると
真木
恋愛
獣人の里で他の男の狼獣人に怯えていた、子犬のような狼獣人、ロシェ。彼女は海の向こうの狼獣人、ジェイドに奪われるように伴侶にされるが、彼は穏やかそうに見えて殊更執着の強い獣人で……。
オネエなエリート研究者がしつこすぎて困ってます!
まるい丸
恋愛
獣人と人の割合が6対4という世界で暮らしているマリは25歳になり早く結婚せねばと焦っていた。しかし婚活は20連敗中。そんな連敗続きの彼女に1年前から猛アプローチしてくる国立研究所に勤めるエリート研究者がいた。けれどその人は癖アリで……
「マリちゃんあたしがお嫁さんにしてあ・げ・る♡」
「早く結婚したいけどあなたとは嫌です!!」
「照れてないで素直になりなさい♡」
果たして彼女の婚活は成功するのか
※全5話完結
※ムーンライトノベルズでも同タイトルで掲載しています、興味がありましたらそちらもご覧いただけると嬉しいです!
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる