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アルベールハッピーエンド あなたと生きる道
3 不気味な扉 1(ヴィクトリア視点→オニキス視点)
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アルベールを抱えて走るヴィクトリアの背中に、炎の刃が迫った。
「!」
ヴィクトリアがハッとして振り返った時には、既に炎が眼前まで来ていた。
それはレインが戦線離脱したことに気付いたアークによる火魔法攻撃だった。
ヴィクトリアは咄嗟に氷魔法で壁を作ったが、灼熱の炎の一部は壁が出来上がる前にそこを通過してしまった。
ヴィクトリアは一瞬肝が冷えたが、炎がヴィクトリアたちの身体を焼くことはなく、解毒剤と治癒魔法の効果で命の危機を脱したアルベールが、逆にヴィクトリアの身体を抱きしめて、間一髪の所で炎を避けさせていた。
ヴィクトリアはすぐに氷の壁を自分たちの周囲に量産して炎を防いだが、氷壁の外側はアークの魔法で火の海になってしまい、ヴィクトリアたちは一歩も動けなくなってしまった。
氷壁が炎で溶けないように補強しつつも、追い詰められたと感じたヴィクトリアは、再び転移魔法の発動を試みたが、やはり魔法は発動しなかった。
魔法使いに覚醒したばかりのヴィクトリアは、『転移魔法封じの魔法』をアークに使われていることに気付けない。
ヴィクトリアは、やり方が間違っているか自分には転移魔法の才能がないと思い込み、転移魔法を使う選択肢を頭の中から消してしまった。
ヴィクトリアは危機感を募らせたが、しかし、炎はいきなり何の前触れもなく、一瞬にして全て消え去った。
ヴィクトリアたちが妙な技で攻撃されていると気付いたオニキスが、それまでの戦いで炎を操っていると見当をつけていたアークの元に高速で移動し、またしても指一本だけの攻撃によってアークを気絶させたため、彼の火魔法は消えた。
同時に、身体能力を高められていた銃騎士たちも、アークが気絶したことで『身体強化の魔法』の効果が切れて、その場に昏倒して動かなくなる。
「ヴィー! 行こう!」
ひとまず命の危機は脱したとホッとしたヴィクトリアは、氷壁を破壊して走り出したアルベールに手を引かれるがまま、彼と共に処刑場広場の外へ出た。
******
オニキスは、ヴィクトリアとアルベールの二人が手を繋いで処刑場広場の向こう側へ行ったことを確認した後に、シドの首を奪取した。
シドの身体も持ち帰ろうと周囲に目を走らせたオニキスは、ふと、シドの娘ナディアの亡骸をただ延々と抱きしめ続けていた白金髪の美しすぎる男が、ここにきて初めて動きを見せたことに気付いた。
彼は泣くのを止め、ナディアを腕に抱えた状態で立ち上がっていた。
オニキスは銃騎士たちと戦いながら、嘆き悲しんでいるその男の様子から、彼にとってナディアは大切な存在なのだろうと察し、彼女の遺体を里へ持ち帰るのはやめにしようと思っていた。
ところが現在、ただ空の一点をじっと見つめているその美貌の男の双眸には、絶望に染まりきっていたはずの色とは真逆の、何かをやり遂げようとする強い意志の光が見えて、それまでの悲嘆に暮れていた様子から一転しすぎていて、違和感を覚えた。
男が何をするつもりなのか、意識の片隅で気になりつつも、オニキスはシドの身体も取り返すために動いていた。しかし突然、対峙していたはずの銃騎士たちも含めて、周囲にどよめきが広がるのを受けたオニキスは、彼らが一様に見ている先に視線を走らせた。
「何だあれは!」
銃騎士たちの驚いたような声が聞こえたが、それはオニキスの心の声でもあった。
空の上、ちょうどナディアを抱える男が見つめているあたりに、一目で人外だとわかる縦長の虹彩を持った大きな目玉と、無数の骸骨が取り付けられた、不気味すぎる巨大な扉が出現していた。
「!」
ヴィクトリアがハッとして振り返った時には、既に炎が眼前まで来ていた。
それはレインが戦線離脱したことに気付いたアークによる火魔法攻撃だった。
ヴィクトリアは咄嗟に氷魔法で壁を作ったが、灼熱の炎の一部は壁が出来上がる前にそこを通過してしまった。
ヴィクトリアは一瞬肝が冷えたが、炎がヴィクトリアたちの身体を焼くことはなく、解毒剤と治癒魔法の効果で命の危機を脱したアルベールが、逆にヴィクトリアの身体を抱きしめて、間一髪の所で炎を避けさせていた。
ヴィクトリアはすぐに氷の壁を自分たちの周囲に量産して炎を防いだが、氷壁の外側はアークの魔法で火の海になってしまい、ヴィクトリアたちは一歩も動けなくなってしまった。
氷壁が炎で溶けないように補強しつつも、追い詰められたと感じたヴィクトリアは、再び転移魔法の発動を試みたが、やはり魔法は発動しなかった。
魔法使いに覚醒したばかりのヴィクトリアは、『転移魔法封じの魔法』をアークに使われていることに気付けない。
ヴィクトリアは、やり方が間違っているか自分には転移魔法の才能がないと思い込み、転移魔法を使う選択肢を頭の中から消してしまった。
ヴィクトリアは危機感を募らせたが、しかし、炎はいきなり何の前触れもなく、一瞬にして全て消え去った。
ヴィクトリアたちが妙な技で攻撃されていると気付いたオニキスが、それまでの戦いで炎を操っていると見当をつけていたアークの元に高速で移動し、またしても指一本だけの攻撃によってアークを気絶させたため、彼の火魔法は消えた。
同時に、身体能力を高められていた銃騎士たちも、アークが気絶したことで『身体強化の魔法』の効果が切れて、その場に昏倒して動かなくなる。
「ヴィー! 行こう!」
ひとまず命の危機は脱したとホッとしたヴィクトリアは、氷壁を破壊して走り出したアルベールに手を引かれるがまま、彼と共に処刑場広場の外へ出た。
******
オニキスは、ヴィクトリアとアルベールの二人が手を繋いで処刑場広場の向こう側へ行ったことを確認した後に、シドの首を奪取した。
シドの身体も持ち帰ろうと周囲に目を走らせたオニキスは、ふと、シドの娘ナディアの亡骸をただ延々と抱きしめ続けていた白金髪の美しすぎる男が、ここにきて初めて動きを見せたことに気付いた。
彼は泣くのを止め、ナディアを腕に抱えた状態で立ち上がっていた。
オニキスは銃騎士たちと戦いながら、嘆き悲しんでいるその男の様子から、彼にとってナディアは大切な存在なのだろうと察し、彼女の遺体を里へ持ち帰るのはやめにしようと思っていた。
ところが現在、ただ空の一点をじっと見つめているその美貌の男の双眸には、絶望に染まりきっていたはずの色とは真逆の、何かをやり遂げようとする強い意志の光が見えて、それまでの悲嘆に暮れていた様子から一転しすぎていて、違和感を覚えた。
男が何をするつもりなのか、意識の片隅で気になりつつも、オニキスはシドの身体も取り返すために動いていた。しかし突然、対峙していたはずの銃騎士たちも含めて、周囲にどよめきが広がるのを受けたオニキスは、彼らが一様に見ている先に視線を走らせた。
「何だあれは!」
銃騎士たちの驚いたような声が聞こえたが、それはオニキスの心の声でもあった。
空の上、ちょうどナディアを抱える男が見つめているあたりに、一目で人外だとわかる縦長の虹彩を持った大きな目玉と、無数の骸骨が取り付けられた、不気味すぎる巨大な扉が出現していた。
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