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リュージュハッピーエンド 私の王子様
10 失う力、得る力 ✤✤✤(アルベール視点)
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寝取られ(寝取り)注意
***
『アルにいに』
記憶の中にいる初恋の天使は、あどけない笑顔を向けながら、抱っこをせがむようにこちらに両手を伸ばしていた。
『うるさい、ばかヴィー』
『いたいー』
けれど思い出の中の子供すぎた自分は、ヴィクトリアを見ると落ち着かなくなる気持ちが何なのか理解できず、ただひたすらにイライラして、彼女を抱きしめるのではなくて、無駄にキラキラしていた絹糸のような銀髪を数本引っこ抜いた。
アルベールはヴィクトリアの泣き顔が好きで、泣かせた後に慰めるのも大好きだった。
そうして意地悪ばかりしていたために、ヴィクトリアにどんどん嫌われた。
(ああ、今なら自分がどんなに愚かだったかわかる。
ヴィーが自分から俺に懐いてくれていた奇跡の時間を無駄にして、そして俺はヴィーを失うのか――――)
医療棟の地下にある囚人用の病室――それは囚人以外にも問題のある患者を便宜的に放り込む地下牢のような場所――にて、アルベールは現在雄叫びを上げながら錯乱したように髪の毛を掻き毟り、自分の金髪をぶちぶちと引っこ抜いていた。
『番の呪い』にかかっているアルベールは、ヴィクトリアへの鋭すぎる嗅覚によって、地上階にある治療室の一室で始まったヴィクトリアとリュージュの営みを、今まさに目の前で繰り広げられているかのように知覚していた。
最初、ヴィクトリアが死にかけていることを知った時、閉じ込められているアルベールは何もできず、「後追い死」が頭を掠め、悲嘆に暮れて号泣し、ヴィクトリアを大切にしてこなかったことを心の底から後悔した。
シドから守ってやれなかったし、それどころか傷付けて苦しめてばかりいた。
そして、大事な大事な愛しい番にリュージュがキスをした時は猛烈に腹が立ち、二日前にやはり殺しておけば良かったと地団駄を踏んだ。
リュージュがヴィクトリアに淫らなことをするたびに、アルベールはリュージュへの殺意まみれの罵詈雑言を叫んでいたが、目覚めたヴィクトリアがリュージュに抱かれることを望んでいると気付いた時には、それだけは耐えられないと死にたくなって号泣した。
「やめろ! やめろ! やめろ! ヴィーは俺のものなのに!」
地下室で精神に異常をきたしたように叫び続けるアルベールの元へは誰も来ず、ガシャガシャと鉄格子が揺れる音が激しく響いた。
そして遂に、リュージュの雄が、アルベールだけの聖域だったはずのヴィクトリアの膣内に、ゆっくりと侵入し始めた。
「ああああああアァッーー!」
叫んでも、頭を床に激しく打ち付けても、リュージュは侵入を止めない。
やがて、ヴィクトリアの処女膜が破れて、最愛の女性の膣内が他の男の陰茎で満たされた。
リュージュと繋がり、幸せそうに嬉し涙を流すヴィクトリアの頭の中で、番になったことを示す祝福の音が鳴ったのだろうことに、アルベールは気付いた。
リュージュが動き出して、それまで誰も受け入れたことのないヴィクトリアの狭い膣内が、リュージュの陰茎によって拡張されていく。
ヴィクトリアの膣壁は行き来する肉棒に何度も擦られていて、奥を穿たれるとヴィクトリアの全身が嬉しそうに戦慄いているのが、わかりたくもないのにわかってしまった。
「ああ、あああ……」
アルベールは涙をぼろぼろと溢した。心が壊れて廃人になりかける寸前、アルベールの頭の中で硝子が割れたような音が響いた。
「ヴィー…… ヴィー……」
アルベールの『番の呪い』は解けた。
しかし、それでもヴィクトリアの名を呼ぶアルベールは、急速な自分の嗅覚の変化に気付いていた。
誰よりも強く嗅ぎ取れていたヴィクトリアの匂いが、次第に嗅ぎ取れなくなっていく――――
アルベールがいる場所とヴィクトリアがいる場所は階も違い、扉も何枚か隔てているが、それまでアルベールはこの距離なら、問題なくヴィクトリアの匂いを嗅ぐことができていた。
けれど『番の呪い』が解けたために、アルベールはヴィクトリアの匂いを他の者と同程度にしか嗅ぎ取れなくなっていた。
まるで目の前で繰り広げられているかのような、アルベールの心を押し潰す嫌な光景は、彼の頭の中から忽然と消えていた。
ヴィクトリアはリュージュにお姫様抱っこされた状態で移動しつつ、始終リュージュを見つめながら、幸せそうに微笑んでいる。
本日はヴィクトリアの退院の日で、医療棟を出た彼女は、そのままリュージュと暮らす新居に移るのだいう。
先に退院していたアルベールは、ヴィクトリアが医療棟の正面玄関から出て、彼女が子供の頃に暮らしていた生家に辿り着くまでを、彼らの嗅覚で探れない範囲を保ちながら見守っていた。
アルベールの嗅覚はヴィクトリアやリュージュよりも鋭い。
アルベールは、彼が一度も入ったことのないヴィクトリアの生家に、二人が入っていくのを静かに見届けた。
「アル君」
幼い頃もこうやってこの家の周りを見張っていたなと、アルベールが懐かしく思い出していると、見知った男に声をかけられた。
近付いてきているのはわかっていたが、振り返ると、金髪に白髪交じりの髪と、紫色の瞳を持つ男が立っていた。
アルベールの父親であるアギナルドだ。
医師でもあるアギナルドは過去に犯した罪のため医療棟の長にはなれなかったが、医師としては優秀で職歴も長く、医療棟の重鎮のような立場にいる。
ヴィクトリアを襲ったアルベールを地下の囚人用の病室に入れる話が出た時に、アギナルドならばそれを阻止することもできたが、アギナルドは反対しなかった。
アギナルドがやって来たのは、大方、退院したヴィクトリアに対してアルベールがまた何かするのではないかと警戒したのだろうが、アルベールの『番の呪い』は既に解けている。
アルベールはもう番を得たヴィクトリアを襲うつもりはなく、ただ単に様子を見に来ただけである。
アルベールは、リュージュになら、妹分のヴィクトリアを任せてもいいかという心境に変わっていた。
ヴィクトリアはアルベールではなくて、リュージュがずっと好きだったのだ。
アルベールはヴィクトリアの長年の思いを知っている。
ヴィクトリアとリュージュが番になったのは必然であり、落ち着くべき所に落ち着いたのかもしれないと思った。
アルベールの中にあったヴィクトリアへの恋心はもう消えてしまったが、幼馴染として昔を一緒に過ごした妹分を心配する気持ちはあって、こうして様子を見に来ていた。
(まあ、ろくな兄貴分ではなかったわけだが)
アルベールがやや感傷に浸りつつ、好きでも嫌いでもなくて正直どうでもいい父親と相対していると、アギナルドは何を思ったのか、アルベールに向かってバッと両腕を広げた。
「さあ! パパの胸でたんとお泣き!」
「……」
半眼になっているアルベールは、「どっか行けキモ親父」と言いたい所を、ぐっと抑えた。
「そんなことよりも、父さん、俺に医術を教えてよ」
「おや? 医者にはなりたくないと言っていた君が、一体どういう風の吹き回しだい?」
アギナルドはアルベールの発言が意外だったようだが、感心したような表情になり息子を見つめてくる。
「新しく族長になったオニキスが殺しを好まないからだよ。この先に俺がこの里で有用な存在になるためには、真逆のことをやった方が良いと思ったんだ」
本当はもう一つ、医術を身に着けておけば、体調を崩すことが増えたヴィクトリアを、もしもの時に助けられることもあるのでは、という理由もあった。
けれど、それをこの父親に言ったら誂われそうだったので、アルベールは自分の心の中だけの秘密として留めておくことにした。
***
『アルにいに』
記憶の中にいる初恋の天使は、あどけない笑顔を向けながら、抱っこをせがむようにこちらに両手を伸ばしていた。
『うるさい、ばかヴィー』
『いたいー』
けれど思い出の中の子供すぎた自分は、ヴィクトリアを見ると落ち着かなくなる気持ちが何なのか理解できず、ただひたすらにイライラして、彼女を抱きしめるのではなくて、無駄にキラキラしていた絹糸のような銀髪を数本引っこ抜いた。
アルベールはヴィクトリアの泣き顔が好きで、泣かせた後に慰めるのも大好きだった。
そうして意地悪ばかりしていたために、ヴィクトリアにどんどん嫌われた。
(ああ、今なら自分がどんなに愚かだったかわかる。
ヴィーが自分から俺に懐いてくれていた奇跡の時間を無駄にして、そして俺はヴィーを失うのか――――)
医療棟の地下にある囚人用の病室――それは囚人以外にも問題のある患者を便宜的に放り込む地下牢のような場所――にて、アルベールは現在雄叫びを上げながら錯乱したように髪の毛を掻き毟り、自分の金髪をぶちぶちと引っこ抜いていた。
『番の呪い』にかかっているアルベールは、ヴィクトリアへの鋭すぎる嗅覚によって、地上階にある治療室の一室で始まったヴィクトリアとリュージュの営みを、今まさに目の前で繰り広げられているかのように知覚していた。
最初、ヴィクトリアが死にかけていることを知った時、閉じ込められているアルベールは何もできず、「後追い死」が頭を掠め、悲嘆に暮れて号泣し、ヴィクトリアを大切にしてこなかったことを心の底から後悔した。
シドから守ってやれなかったし、それどころか傷付けて苦しめてばかりいた。
そして、大事な大事な愛しい番にリュージュがキスをした時は猛烈に腹が立ち、二日前にやはり殺しておけば良かったと地団駄を踏んだ。
リュージュがヴィクトリアに淫らなことをするたびに、アルベールはリュージュへの殺意まみれの罵詈雑言を叫んでいたが、目覚めたヴィクトリアがリュージュに抱かれることを望んでいると気付いた時には、それだけは耐えられないと死にたくなって号泣した。
「やめろ! やめろ! やめろ! ヴィーは俺のものなのに!」
地下室で精神に異常をきたしたように叫び続けるアルベールの元へは誰も来ず、ガシャガシャと鉄格子が揺れる音が激しく響いた。
そして遂に、リュージュの雄が、アルベールだけの聖域だったはずのヴィクトリアの膣内に、ゆっくりと侵入し始めた。
「ああああああアァッーー!」
叫んでも、頭を床に激しく打ち付けても、リュージュは侵入を止めない。
やがて、ヴィクトリアの処女膜が破れて、最愛の女性の膣内が他の男の陰茎で満たされた。
リュージュと繋がり、幸せそうに嬉し涙を流すヴィクトリアの頭の中で、番になったことを示す祝福の音が鳴ったのだろうことに、アルベールは気付いた。
リュージュが動き出して、それまで誰も受け入れたことのないヴィクトリアの狭い膣内が、リュージュの陰茎によって拡張されていく。
ヴィクトリアの膣壁は行き来する肉棒に何度も擦られていて、奥を穿たれるとヴィクトリアの全身が嬉しそうに戦慄いているのが、わかりたくもないのにわかってしまった。
「ああ、あああ……」
アルベールは涙をぼろぼろと溢した。心が壊れて廃人になりかける寸前、アルベールの頭の中で硝子が割れたような音が響いた。
「ヴィー…… ヴィー……」
アルベールの『番の呪い』は解けた。
しかし、それでもヴィクトリアの名を呼ぶアルベールは、急速な自分の嗅覚の変化に気付いていた。
誰よりも強く嗅ぎ取れていたヴィクトリアの匂いが、次第に嗅ぎ取れなくなっていく――――
アルベールがいる場所とヴィクトリアがいる場所は階も違い、扉も何枚か隔てているが、それまでアルベールはこの距離なら、問題なくヴィクトリアの匂いを嗅ぐことができていた。
けれど『番の呪い』が解けたために、アルベールはヴィクトリアの匂いを他の者と同程度にしか嗅ぎ取れなくなっていた。
まるで目の前で繰り広げられているかのような、アルベールの心を押し潰す嫌な光景は、彼の頭の中から忽然と消えていた。
ヴィクトリアはリュージュにお姫様抱っこされた状態で移動しつつ、始終リュージュを見つめながら、幸せそうに微笑んでいる。
本日はヴィクトリアの退院の日で、医療棟を出た彼女は、そのままリュージュと暮らす新居に移るのだいう。
先に退院していたアルベールは、ヴィクトリアが医療棟の正面玄関から出て、彼女が子供の頃に暮らしていた生家に辿り着くまでを、彼らの嗅覚で探れない範囲を保ちながら見守っていた。
アルベールの嗅覚はヴィクトリアやリュージュよりも鋭い。
アルベールは、彼が一度も入ったことのないヴィクトリアの生家に、二人が入っていくのを静かに見届けた。
「アル君」
幼い頃もこうやってこの家の周りを見張っていたなと、アルベールが懐かしく思い出していると、見知った男に声をかけられた。
近付いてきているのはわかっていたが、振り返ると、金髪に白髪交じりの髪と、紫色の瞳を持つ男が立っていた。
アルベールの父親であるアギナルドだ。
医師でもあるアギナルドは過去に犯した罪のため医療棟の長にはなれなかったが、医師としては優秀で職歴も長く、医療棟の重鎮のような立場にいる。
ヴィクトリアを襲ったアルベールを地下の囚人用の病室に入れる話が出た時に、アギナルドならばそれを阻止することもできたが、アギナルドは反対しなかった。
アギナルドがやって来たのは、大方、退院したヴィクトリアに対してアルベールがまた何かするのではないかと警戒したのだろうが、アルベールの『番の呪い』は既に解けている。
アルベールはもう番を得たヴィクトリアを襲うつもりはなく、ただ単に様子を見に来ただけである。
アルベールは、リュージュになら、妹分のヴィクトリアを任せてもいいかという心境に変わっていた。
ヴィクトリアはアルベールではなくて、リュージュがずっと好きだったのだ。
アルベールはヴィクトリアの長年の思いを知っている。
ヴィクトリアとリュージュが番になったのは必然であり、落ち着くべき所に落ち着いたのかもしれないと思った。
アルベールの中にあったヴィクトリアへの恋心はもう消えてしまったが、幼馴染として昔を一緒に過ごした妹分を心配する気持ちはあって、こうして様子を見に来ていた。
(まあ、ろくな兄貴分ではなかったわけだが)
アルベールがやや感傷に浸りつつ、好きでも嫌いでもなくて正直どうでもいい父親と相対していると、アギナルドは何を思ったのか、アルベールに向かってバッと両腕を広げた。
「さあ! パパの胸でたんとお泣き!」
「……」
半眼になっているアルベールは、「どっか行けキモ親父」と言いたい所を、ぐっと抑えた。
「そんなことよりも、父さん、俺に医術を教えてよ」
「おや? 医者にはなりたくないと言っていた君が、一体どういう風の吹き回しだい?」
アギナルドはアルベールの発言が意外だったようだが、感心したような表情になり息子を見つめてくる。
「新しく族長になったオニキスが殺しを好まないからだよ。この先に俺がこの里で有用な存在になるためには、真逆のことをやった方が良いと思ったんだ」
本当はもう一つ、医術を身に着けておけば、体調を崩すことが増えたヴィクトリアを、もしもの時に助けられることもあるのでは、という理由もあった。
けれど、それをこの父親に言ったら誂われそうだったので、アルベールは自分の心の中だけの秘密として留めておくことにした。
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