171 / 220
レインハッピーエンド 愛憎を超えて
9 獣人の性 ✤
しおりを挟む
「汚れちゃったね、シーツ替えとくよ」
行為が終わってから気付いたが、二回目にも関わらずシーツには鮮血が付いていた。前回は一突きされただけで終わったので、残骸のようなものが体内に残っていて、おそらく今回完全に破られて無くなったのだろうと何となく思った。
月のものの周期からは完全に外れているので、月経の血ではないと思う。
その周期からするとたぶん今は妊娠しそうな時期だが、今回も前回も妊娠はしていないはずだ。なぜならば、二回とも行為前にヴィクトリアが自身に避妊魔法をかけていたからだ。
昔読んだ魔法書はかなり初歩的なものだったらしく、避妊魔法についてなんて載っていなかったけれど、この家に来た時にノエルから渡された魔法書をパラパラと捲っていたら、たまたまそれについて書かれた頁が目についた。
速読が身に付いているヴィクトリアは、そのうち必要になるのかなぐらいの何となくの思いで、短い時間で頭の中にその魔法機序を叩き込んでいた。
その後流れでレインと身体を重ねることになり、念のためその魔法を使っておいた。
人間のレインが相手でも獣人のヴィクトリアが産んだ子は必ず獣人になる。子供については、どうしたいのか二人でちゃんと話し合ってからの方がいいと思った。
ヴィクトリアとしては、レインが子供が獣人でもいいなら生んでみたい気持ちもあるけれど、現状では「いつか」という但し書きが付いていて、今はとにかく初恋が実って番になれたレインとの時間を大切にしていきたいと思っていた。
ヴィクトリアは恥ずかしいその痕跡を魔法でどうにかしようとしたが、すごく上機嫌な様子のレインが、剥がしたシーツをまるで宝物のように抱えたまま、自分が洗濯してシーツ交換すると言って聞かないので、ヴィクトリアは汚れ物の件についてはレインに任せることにして、先に浴室に向かった。
身体を流してからお風呂に入って一息ついていると、レインが入ってきた。
「ごめんね、おまたせ」
レインはもちろん全裸で、綺麗な筋肉の付き方だなとヴィクトリアはうっとりしながら見つめてしまう。
「もう洗い終わっちゃったか。俺が洗おうと思ったのに」
「……じゃあまた今度お願いするわ」
ヴィクトリアは、ニコリと微笑む。
するとレインも満面の笑みを返してくれた。レインは現れた時からずっと変わらない上機嫌な――ヴィクトリアの表情操作には気付かない――様子で、自分の身体を洗い始めた。
男性とお風呂に入るのはこれで二度目だ。ヴィクトリアはレインの言葉から――――リュージュのことを思い出していた。
リュージュのことが頭をよぎる度に、彼を選ばずに傷付けてきた罪悪感と、あんな風に深く自分の脚を刺してしまって大丈夫だっただろうかと、心配する気持ちが蘇ってくる。
リュージュは今でも変わらず大切な存在だ。ただ、心配する気持ちはあるのに、自分の心の中のどこを探してみても、あの頃感じた胸を掻きむしるようなリュージュへの強い恋慕の情は消えている。
シドから逃げるために里を出るまでリュージュを愛していたのは本当だった。けれど今ヴィクトリアが自分のすべてを捧げてもいいと思える唯一はレインだけで、愛しているのもレインだけだった。
ヴィクトリアはレインに抱かれて処女ではなくなったのと同時に、リュージュへの恋心も完全に喪失してしまったようだった。
獣人は番を得ると、その相手しか異性として見なくなるし、愛さなくなるというが、ヴィクトリアはそれを身をもって体感していた。
確かに愛していたはずの心まで失くしてしまうなんて、獣人の悲しい性だと思う。
(もしも『番の呪い』にかからなければ…… あるいは、最初に口付けたのがリュージュだったら…………)
そんな風に考えてしまって即、ヴィクトリアはふるふると頭を振って思考を振り払った。
リュージュは「自分の思うように生きろ」と言って、ヴィクトリアの背中を押してくれた。
リュージュはヴィクトリアの幸せを本当に願っていてくれたのだと思う。
(私は自分の決断したこの道で、レインと一緒に生きていきたいと思う)
「どうした? 頭なんか振って?」
レインに声をかけられて、ヴィクトリアは今度こそ心からの笑顔をレインに向ける。
「ううん、何でも――――」
浴槽に入ってきていたレインの手が伸びてきて抱きしめられたと思ったら、口を塞がれていた。
「はぁっ…… ふぅっ……」
レインの舌が口の中深くに入り込んできて舐られるのが気持ち良い。吐息を漏らしていると、ふいにレインの唇が離れて物足りなさを感じてしまう。
「……ヴィクトリア、さっき言ってたやつをしてもらってもいい? 俺のを舐めてくれる?」
レインがヴィクトリアの唇を熱っぽく見つめながら指の腹でしきりになぞっている。身体に押し付けられる硬く熱い雄を感じて鼓動と吐息を早くさせながら、レインのすべてを受け入れる覚悟のヴィクトリアは、一切の抵抗もなくこくりと頷いていた。
行為が終わってから気付いたが、二回目にも関わらずシーツには鮮血が付いていた。前回は一突きされただけで終わったので、残骸のようなものが体内に残っていて、おそらく今回完全に破られて無くなったのだろうと何となく思った。
月のものの周期からは完全に外れているので、月経の血ではないと思う。
その周期からするとたぶん今は妊娠しそうな時期だが、今回も前回も妊娠はしていないはずだ。なぜならば、二回とも行為前にヴィクトリアが自身に避妊魔法をかけていたからだ。
昔読んだ魔法書はかなり初歩的なものだったらしく、避妊魔法についてなんて載っていなかったけれど、この家に来た時にノエルから渡された魔法書をパラパラと捲っていたら、たまたまそれについて書かれた頁が目についた。
速読が身に付いているヴィクトリアは、そのうち必要になるのかなぐらいの何となくの思いで、短い時間で頭の中にその魔法機序を叩き込んでいた。
その後流れでレインと身体を重ねることになり、念のためその魔法を使っておいた。
人間のレインが相手でも獣人のヴィクトリアが産んだ子は必ず獣人になる。子供については、どうしたいのか二人でちゃんと話し合ってからの方がいいと思った。
ヴィクトリアとしては、レインが子供が獣人でもいいなら生んでみたい気持ちもあるけれど、現状では「いつか」という但し書きが付いていて、今はとにかく初恋が実って番になれたレインとの時間を大切にしていきたいと思っていた。
ヴィクトリアは恥ずかしいその痕跡を魔法でどうにかしようとしたが、すごく上機嫌な様子のレインが、剥がしたシーツをまるで宝物のように抱えたまま、自分が洗濯してシーツ交換すると言って聞かないので、ヴィクトリアは汚れ物の件についてはレインに任せることにして、先に浴室に向かった。
身体を流してからお風呂に入って一息ついていると、レインが入ってきた。
「ごめんね、おまたせ」
レインはもちろん全裸で、綺麗な筋肉の付き方だなとヴィクトリアはうっとりしながら見つめてしまう。
「もう洗い終わっちゃったか。俺が洗おうと思ったのに」
「……じゃあまた今度お願いするわ」
ヴィクトリアは、ニコリと微笑む。
するとレインも満面の笑みを返してくれた。レインは現れた時からずっと変わらない上機嫌な――ヴィクトリアの表情操作には気付かない――様子で、自分の身体を洗い始めた。
男性とお風呂に入るのはこれで二度目だ。ヴィクトリアはレインの言葉から――――リュージュのことを思い出していた。
リュージュのことが頭をよぎる度に、彼を選ばずに傷付けてきた罪悪感と、あんな風に深く自分の脚を刺してしまって大丈夫だっただろうかと、心配する気持ちが蘇ってくる。
リュージュは今でも変わらず大切な存在だ。ただ、心配する気持ちはあるのに、自分の心の中のどこを探してみても、あの頃感じた胸を掻きむしるようなリュージュへの強い恋慕の情は消えている。
シドから逃げるために里を出るまでリュージュを愛していたのは本当だった。けれど今ヴィクトリアが自分のすべてを捧げてもいいと思える唯一はレインだけで、愛しているのもレインだけだった。
ヴィクトリアはレインに抱かれて処女ではなくなったのと同時に、リュージュへの恋心も完全に喪失してしまったようだった。
獣人は番を得ると、その相手しか異性として見なくなるし、愛さなくなるというが、ヴィクトリアはそれを身をもって体感していた。
確かに愛していたはずの心まで失くしてしまうなんて、獣人の悲しい性だと思う。
(もしも『番の呪い』にかからなければ…… あるいは、最初に口付けたのがリュージュだったら…………)
そんな風に考えてしまって即、ヴィクトリアはふるふると頭を振って思考を振り払った。
リュージュは「自分の思うように生きろ」と言って、ヴィクトリアの背中を押してくれた。
リュージュはヴィクトリアの幸せを本当に願っていてくれたのだと思う。
(私は自分の決断したこの道で、レインと一緒に生きていきたいと思う)
「どうした? 頭なんか振って?」
レインに声をかけられて、ヴィクトリアは今度こそ心からの笑顔をレインに向ける。
「ううん、何でも――――」
浴槽に入ってきていたレインの手が伸びてきて抱きしめられたと思ったら、口を塞がれていた。
「はぁっ…… ふぅっ……」
レインの舌が口の中深くに入り込んできて舐られるのが気持ち良い。吐息を漏らしていると、ふいにレインの唇が離れて物足りなさを感じてしまう。
「……ヴィクトリア、さっき言ってたやつをしてもらってもいい? 俺のを舐めてくれる?」
レインがヴィクトリアの唇を熱っぽく見つめながら指の腹でしきりになぞっている。身体に押し付けられる硬く熱い雄を感じて鼓動と吐息を早くさせながら、レインのすべてを受け入れる覚悟のヴィクトリアは、一切の抵抗もなくこくりと頷いていた。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
ヤンデレ義父に執着されている娘の話
アオ
恋愛
美少女に転生した主人公が義父に執着、溺愛されつつ執着させていることに気が付かない話。
色々拗らせてます。
前世の2人という話はメリバ。
バッドエンド苦手な方は閲覧注意です。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる