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リュージュバッドエンド 輪廻の輪は正しく巡らない
4 特別な日
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ヴィクトリアが目を覚ました時、部屋のカーテンの隙間の向こうに光はなく、暗闇が見えるばかりで、既に夜になっていた。
(もう夜なのね…… 昼夜逆転の生活になってしまったわ……)
ヴィクトリアは昨夜も一晩中リュージュと交わり愛されて、いつの間にか気絶するように眠りに落ちていた。寝た時の記憶はなかった。
ヴィクトリアは気怠い身体を起こして寝台から出た。昨日と同様に身体はリュージュの手で綺麗にされていたが、蓄積した疲れを取りたくなったヴィクトリアは、湯船に浸かってゆっくりしようと浴室へ向かった。
リュージュは出掛けているのか、家の中には誰もいなかった。時計を見れば、陽が落ちて夜になったばかりの時間帯だった。
居間を通りかかる際、「ぶち込むだけですぐ出来る」というリュージュの得意料理である肉煮込みの美味しい匂いが漂ってきて、ほぼ丸一日食事をしていなかったヴィクトリアのお腹がぐうっと鳴った。
匂いにつられて台所と続きになっている広めの居間に入ると、テーブルの上に肉料理の入った鍋と、そのそばに何かが書かれた紙があるのを見つけた。
「……りんじ、しゅうかい、行く。休め。食え」
ヴィクトリアは、少し乱雑ではあるが、出会った頃のミミズが這ったような字体からは、かなり整ってきたリュージュの書き置きを眺めた。
可愛かった昔のリュージュを思い出してほっこりしつつ、単語だけを並べたようなその文面を声に出して読んでみた。
書き置きからリュージュがヴィクトリアに伝えたかったことは、「里の臨時集会に行ってくるが、自分が参加しておくから、ヴィクトリアは身体を休めてご飯を食べておけ」ということのようだ。
(臨時集会……)
それは滅多にはないが、里の住人全員を対象に招集をかけて開かれる大きな集会だとヴィクトリアは気付いた。
里のほとんどの者たちが呼ばれるその大規模な集まりが行われるのは、里にとって重大な何かが起った時だけだ。
そこで、ヴィクトリアは半分寝ぼけていた頭をハッと鮮明にさせ、近くにあった窓に視線をやった。
窓に掛かったカーテンの隙間からは、やはり闇が見えるばかりで、今は完全に夜だった。
本日はシドの処刑が執り行われる日だ。
処刑予定時刻は昼で、もうとっくにその時間は過ぎている。
ヴィクトリアはある一つのことを半ば確信しながら、愕然として呟いた。
「シド…… 死んだの……?」
リュージュの書き置きには先に夕食を食べておけとあったが、とても食事をするような気分にはなれなかった。
何をどうしたらいいのかとしばらくその場をオロオロしていたヴィクトリアだったが、とりあえず心を落ち着かせるために入浴しようと、浴室に向かった。
浴室には、リュージュがヴィクトリア以外にサーシャとも淫らなことをしていた残り香があるわけだが、嗅覚が敏感な獣人は訓練によって周囲の匂いを嗅がなくすることもできる。
ヴィクトリアの場合は、あまりにも匂いが強すぎる場合は難しいが、もう半分消えかけているこのくらいのリュージュの元彼女との匂いならば、完全遮断することもできそうだった。
身体を洗って浴槽に浸かったヴィクトリアは、目を閉じて頭の中で色々なことを考えた。
五感の一つである嗅覚を閉じているせいか、より深く思考に没頭してしまい、身体に疲労が溜まっていたヴィクトリアは、うっかりそのまま寝てしまった。
「ヴィクトリア…… おい、ヴィクトリア……」
肩を抱かれる感覚と共に名を呼ばれて、ヴィクトリアはハッと目を覚ました。
「ふえっ……?」
覚醒直後のヴィクトリアは驚き、幼子のような声を出してしまった。
ヴィクトリアの目の前では、濡れないように服の袖口ををまくったリュージュが、腕でヴィクトリアの肩を支えながら苦笑している。
「可愛い声を出すなよ。襲いたくなるだろ」
「……」
「こんな所で寝てると溺れるぞ」
「…………リュージュに溺れたい」
「ん?」
ヴィクトリアはリュージュに手を伸ばして濡れた身体のまま抱きついた。
「……襲ってもいいよ」
ヴィクトリアがリュージュを誘うようなことを言ったのは寝ぼけているからではなかった。
ヴィクトリアが起きた時には遮断していたはずの嗅覚が元に戻っていて、そのせいでリュージュとサーシャの仲良し場面の残り香を嗅いでしまい、嫉妬心が起こったからだった。
(私はリュージュの唯一でいたい。
リュージュの番は私一人だけでいいし、私の番も、リュージュしかいらない)
「……わかった。今日もたくさん抱いてやるから…………
でもその前に話がある」
リュージュはそう言うと、すっかり濡れてしまった自分の衣服には構わず、ヴィクトリアを抱え上げて浴室から出た。
(もう夜なのね…… 昼夜逆転の生活になってしまったわ……)
ヴィクトリアは昨夜も一晩中リュージュと交わり愛されて、いつの間にか気絶するように眠りに落ちていた。寝た時の記憶はなかった。
ヴィクトリアは気怠い身体を起こして寝台から出た。昨日と同様に身体はリュージュの手で綺麗にされていたが、蓄積した疲れを取りたくなったヴィクトリアは、湯船に浸かってゆっくりしようと浴室へ向かった。
リュージュは出掛けているのか、家の中には誰もいなかった。時計を見れば、陽が落ちて夜になったばかりの時間帯だった。
居間を通りかかる際、「ぶち込むだけですぐ出来る」というリュージュの得意料理である肉煮込みの美味しい匂いが漂ってきて、ほぼ丸一日食事をしていなかったヴィクトリアのお腹がぐうっと鳴った。
匂いにつられて台所と続きになっている広めの居間に入ると、テーブルの上に肉料理の入った鍋と、そのそばに何かが書かれた紙があるのを見つけた。
「……りんじ、しゅうかい、行く。休め。食え」
ヴィクトリアは、少し乱雑ではあるが、出会った頃のミミズが這ったような字体からは、かなり整ってきたリュージュの書き置きを眺めた。
可愛かった昔のリュージュを思い出してほっこりしつつ、単語だけを並べたようなその文面を声に出して読んでみた。
書き置きからリュージュがヴィクトリアに伝えたかったことは、「里の臨時集会に行ってくるが、自分が参加しておくから、ヴィクトリアは身体を休めてご飯を食べておけ」ということのようだ。
(臨時集会……)
それは滅多にはないが、里の住人全員を対象に招集をかけて開かれる大きな集会だとヴィクトリアは気付いた。
里のほとんどの者たちが呼ばれるその大規模な集まりが行われるのは、里にとって重大な何かが起った時だけだ。
そこで、ヴィクトリアは半分寝ぼけていた頭をハッと鮮明にさせ、近くにあった窓に視線をやった。
窓に掛かったカーテンの隙間からは、やはり闇が見えるばかりで、今は完全に夜だった。
本日はシドの処刑が執り行われる日だ。
処刑予定時刻は昼で、もうとっくにその時間は過ぎている。
ヴィクトリアはある一つのことを半ば確信しながら、愕然として呟いた。
「シド…… 死んだの……?」
リュージュの書き置きには先に夕食を食べておけとあったが、とても食事をするような気分にはなれなかった。
何をどうしたらいいのかとしばらくその場をオロオロしていたヴィクトリアだったが、とりあえず心を落ち着かせるために入浴しようと、浴室に向かった。
浴室には、リュージュがヴィクトリア以外にサーシャとも淫らなことをしていた残り香があるわけだが、嗅覚が敏感な獣人は訓練によって周囲の匂いを嗅がなくすることもできる。
ヴィクトリアの場合は、あまりにも匂いが強すぎる場合は難しいが、もう半分消えかけているこのくらいのリュージュの元彼女との匂いならば、完全遮断することもできそうだった。
身体を洗って浴槽に浸かったヴィクトリアは、目を閉じて頭の中で色々なことを考えた。
五感の一つである嗅覚を閉じているせいか、より深く思考に没頭してしまい、身体に疲労が溜まっていたヴィクトリアは、うっかりそのまま寝てしまった。
「ヴィクトリア…… おい、ヴィクトリア……」
肩を抱かれる感覚と共に名を呼ばれて、ヴィクトリアはハッと目を覚ました。
「ふえっ……?」
覚醒直後のヴィクトリアは驚き、幼子のような声を出してしまった。
ヴィクトリアの目の前では、濡れないように服の袖口ををまくったリュージュが、腕でヴィクトリアの肩を支えながら苦笑している。
「可愛い声を出すなよ。襲いたくなるだろ」
「……」
「こんな所で寝てると溺れるぞ」
「…………リュージュに溺れたい」
「ん?」
ヴィクトリアはリュージュに手を伸ばして濡れた身体のまま抱きついた。
「……襲ってもいいよ」
ヴィクトリアがリュージュを誘うようなことを言ったのは寝ぼけているからではなかった。
ヴィクトリアが起きた時には遮断していたはずの嗅覚が元に戻っていて、そのせいでリュージュとサーシャの仲良し場面の残り香を嗅いでしまい、嫉妬心が起こったからだった。
(私はリュージュの唯一でいたい。
リュージュの番は私一人だけでいいし、私の番も、リュージュしかいらない)
「……わかった。今日もたくさん抱いてやるから…………
でもその前に話がある」
リュージュはそう言うと、すっかり濡れてしまった自分の衣服には構わず、ヴィクトリアを抱え上げて浴室から出た。
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